サウナ首都タンペレにある、世界初のアートサウナへ

    Share:

    前回は、フィンランドのサウナ首都タンペレで、夕暮れにフィンランド人たちが作曲家とくさしけんごさんの音楽を聞きながらサウナに入る、という日本人のサウナ好きとしてはなんとも感慨深い光景を見られたというお話でした。

    IMG_3094 2.jpg

    フィンランドでは6月の2週目の土曜日が「フィンランドサウナの日」に制定されています。それに合わせて、今回フィンランドでも一番公衆サウナの多い街タンペレへと行ってきたわけですが、タンペレの新しいサウナにも2つ行ってきました。


    ひとつは、世界初のアートサウナ。

    IMG_2739.jpg
     


    このサウナ、美術館の中にあるんです。2022年にオープンしたセルラキウス美術館というのですが、セルラキウス一族が集めた美術品を公開していて、アート作品とそれを彩るデザイン、建築が融合した美術館です。ここにサウナもあります。いい場所ならサウナを作る。やっぱりフィンランドですね。


    IMG_2777.jpg


    美術館にあるサウナというだけあって、やはり美しい。外観はシンプルですが、中は教会のような厳かさがあります。

    IMG_2756.jpg

     


    そして美術館の中にあっても、サウナはやっぱり湖の一番近くに置かれるものなんですね。出たらすぐに湖までダッシュできるようになっています。


    IMG_2737.jpg


    こちらのサウナ、基本はプライベートで貸切の予約制ですが、火水は一般開放日。予約だけすればひとりでも入ることができます。

     

    IMG_2744.jpg


    そしてもうひとつは、Pereensaari Sauna。タンペレの中心部から車で15分くらいのところにあり、湖きわっきわのところに立っています。

    IMG_2837.jpg

    実はこのサウナ、日本のサウナ界のゴッドファーザーことウェルビー代表の米田さんが「こんなに書かないでよ!いい本すぎて嫉妬する」とボソッと言っていた「The Secrets of Finnish Sauna Design」というサウナ設計の秘密すべてが書かれた(書かれすぎた?)本を執筆したLassi A. Liikkanenさんのデザインです。

    IMG_2812.jpg

    男女一緒に入るサウナなので、水着着用です。湖きわっきわに建っていること、そしてサウナは階段を登った高い位置にあることから、窓から一面に湖が見えるので、湖の中にあるサウナのような錯覚に陥ります。

    IMG_2822.jpg

    IMG_2852.jpg


    フィンランドでいくつかサウナに行っていますが、結構こういう風にお客さん同士が向き合うスタイルのサウナ室が多いような気がしています。日本は顔と顔を合わさないように横並びのステージっぽくなっていてみんな同じ方角を見るスタイルになってることの方が多いですよね。

    IMG_2908.jpg


    ここも向き合うスタイルですが、いい感じで離れているので、知らない人同士言葉を交わしたり、ちょっと会話に入ったりができるけれど、スーッとその会話から去ることもできるいい距離感。それが計算されているのかはわからないですが……。


    そして湖。めちゃくちゃ気持ちいい!!いいサウナに入って、すぐ湖に飛び込めるのはやっぱりフィンランドに来た醍醐味。初夏の湖は本当に気持ちがいいです。湖に入っていると、またサウナに入りたくなってしまい、エンドレスにサウナ・湖を続けてしまう!

    IMG_2881.jpg


    またこのPereensaari Saunaで特筆すべきことがあります。


    水風呂!

    IMG_2829.jpg


    フィンランドで初めて見ました、水風呂!フィンランド人って水風呂に特に入らないんですよね。夏に湖がそこにあれば入るけど、普段はさっと外気浴して終わりとか、シャワーして終わりとか。たぶん、日本人みたいにあの恍惚感を求めてサウナに入っているのではなくて、サウナに入って熱いからちょっと外出るわっていうくらいなんじゃないかなと、思っています(わたし見解)。


    なのに、水風呂がちゃんとありまして、しかもその温度4度。誰も入ってませんでした(笑)

    「サウナ、水風呂、外気浴」と水風呂はなくてはならない大事な存在である日本のサウナ。フィンランド人のサウナと、わたしたち日本人のサウナって同じ「サウナ」なのに違っていて、日本だからできること、フィンランドだからこそ気持ちがいいことがそれぞれあるんだなと思いました。

    サウナ首都のタンペレのサウナのお祭りも、とってもフィンランドぽかったです。というのも、「お祭り」っていうくらいだから街をあげて垂れ幕があったり、スタンプラリー的なのがあるものだと思い込んで行ったら、それぞれのサウナがそれぞれのことをやっていた、という形で、それもまたフィンランドならではだなって感じました。(日本だった連携してやりますよね〜)


    5年ぶりのフィンランドは、相変わらずとてもフィンランドらしく変わらないままでした。新しいサウナができたと言っても、奇をてらったものでもなく、最新のテクノロジーがあるわけでもなく、やっぱり湖の横にあるサウナで、来ている人たちも友達や家族で来てワイワイ話していたり、知らない同士が言葉を交わしたり、一人でじっくり入っていたり、それぞれがそれぞれの楽しみ方で同じ空間にいて、それでもって誰も同調を求めていないのがフィンランドでした。

    IMG_3177.jpg


    今度は5年もあけずに、フィンランドへまた行きたいと思っています。

    岩田リョウコ

    文筆家、イラストレーター

    コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
    Instagram / Twitter / Official Site

    岩田リョウコ

    文筆家、イラストレーター

    コロラド大学大学院東アジア言語文明学科卒。2009年から外務省専門調査員として在シアトル総領事館勤務。在米中に出版した『COFFEE GIVES ME SUPERPOWERS』がベストセラーとなり世界5ヵ国で翻訳出版されている。サウナ愛好家でもあり、フィンランド政府観光局サウナアンバサダーに任命されている。著書に『週末フィンランド』、『エンジョイ!クラフトビール』、『コーヒーがないと生きていけない!』、『HAVE A GOOD SAUNA!』がある。
    Instagram / Twitter / Official Site