8つのコンセプトから選ぶ、都会のコンドミニアム「ノット ア ホテル フクオカ」【今月の建築ARCHITECTURE FILE #21】

  • 文:佐藤季代
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公園に影を落とさないようセットバックするなど環境にも配慮。外壁のコンクリート仕上げを工夫し、自然物のように見せた。

「世界中にあなたの家を」をコンセプトに、別荘所有の新しい在り方を提案する「ノット ア ホテル」。オーナーとして年間10泊から所有権を購入でき、利用しない期間をホテルとして貸し出し、収益化できるシステムだ。これまで谷尻誠・吉田愛率いるサポーズデザインオフィスや大堀伸のジェネラルデザイン、藤本壮介といった著名建築家が設計に携わり、那須や北軽井沢、青島など国内の自然豊かなリゾート地を中心に展開してきた。

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1階の「ドマ」は外から直接アクセスでき、唯一ペットとの宿泊が可能。同じフロアには利用者のみが使えるバーラウンジもある。

2023年11月には、5拠点目となる初の都市型コンドミニアムが福岡市中心部の薬院エリアに完成。放送作家の小山薫堂が全体監修を担当し、福岡を拠点とするアクソノメトリックとNKS2アーキテクツが設計を手掛けている。

5階建ての建物が立つのは、目の前に公園が広がる閑静な住宅街。戸建て住宅も多い周辺の景観に溶け込むように、小さな箱をランダムに積み上げたような特徴的な外観を導き出した。85インチモニターと高音質システムによるホームシアターが設置された「サウンド」、セミオープンエアのジェットバスを備えた「リトリート」など異なるコンセプトを持つ8戸の居室は、すべて100㎡以上とゆとりのある空間。室内の延長のように、公園の緑と一体となった多様な屋外テラスが設けられ、プライバシーを確保しながら開放感をつくり出している。

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バング&オルフセンのサウンドシステムを導入した「サウンド」。木と石を基調としたインテリアは、A.N.D.代表の小坂竜が監修。

 

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最上階と屋上の2フロアに広がる「ペントハウス」。屋外キッチンを配したルーフトップテラスではBBQや専用サウナが楽しめる。

オーナーでない一般客は通常のホテルのように宿泊サイトから予約が可能。日々進化する福岡の街とともに、暮らすような気分で滞在を楽しみたい。

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居室と連続するように、用途や広さの違うテラスを配置。地元に自生する植栽を中心に選定するなど、景観との調和を意識している。

ノット ア ホテル フクオカ

住所:福岡県福岡市中央区大宮2-3-34 
TEL:なし
料金:一室11万円前後(シーズンにより異なる) ※一室4名の宿泊まで。分譲としては全戸売約済みだが、オーナーが不在時にホテルとして宿泊可能
https://notahotel.com/shop/fukuoka
【設計者】アクソノメトリック/NKS2アーキテクツ
メイン設計を担当したアクソノメトリック代表の佐々木慧は、1987年長崎県生まれ。藤本壮介建築設計事務所を経て21年にアクソノメトリック設立。大阪・関西万博 EXPO2025 イベントステージも設計。

※この記事はPen 2024年7月号より再編集した記事です。