もの派から触れる絵画に進化した、アーティストの全貌を知る回顧展『吉田克朗展―ものに、風景に、世界に触れる』【Penが選んだ今月のデザイン】

  • 文:猪飼尚司(デザインジャーナリスト)
Share:

 

01_B_吉田克朗1989年(撮影:馬場直樹)-350dpi.jpg
1943年埼玉県に生まれ、99年食道がんのため55歳で逝去した吉田克朗。神奈川県立近代美術館ではコレクション展『斎藤義重という起点̶世界と交差する美術家たち』同時開催。本展は7月13日~9月23日の日程で、埼玉県立近代美術館へと巡回する。吉田克朗 1989年(撮影:馬場直樹) © The Estate of Katsuro Yoshida / Courtesy of Yumiko Chiba Associates

1960年代から70年代にかけて、日本の現代美術界を席巻した「もの派」。関根伸夫、菅木志雄、小清水漸など、もの派の主要作家たちは、いずれも多摩美術大学で斎藤義重の薫陶を受けているが、吉田克朗ももれなくそのメンバーのひとりとして活動をスタートした作家だ。

自然物、人工物問わず、ものに特別な加工を施さずに可能な限りそのままの状態でインスタレーションや彫刻にすることで、あえて空間との関係性やものの存在を際立たせるのがもの派。吉田も70年代初頭までは、確実にもの派としての表現を探求。折りたたんでから広げた紙の隅に石を置いた「Cut-off (PaperWeight)」や、大きな角材に荒縄を巻きつけて天井から吊るし、重石でバランスを保った「Cut-off(Hang)」など、物質性の高い立体作品を連続的に発表していた。

しかし吉田は、1970年代に入ってすぐに、写真や絵画に転写などの実験的な手法を加えた新しい試みにチャレンジ。その後、風景や人体を抽象化して描いた「かげろう」シリーズに取り組み、80年代後半になると、手や指で粉末にした黒鉛をキャンバスにこすりつけるようにして描く「触」シリーズを手掛け、注目を集めるようになる。

このように書くと吉田は時代ごとに次々と新しい異なる表現に挑戦したアーティストのように思えるかもしれないが、彼が一貫して求めたのは、物質や物体に自身がどのように介在し、作品となっていくのかという過程だったのではないだろうか。

日本初の回顧展である本展では、初期の立体作品から、油彩、版画、ドローイング、作品のプランやコンセプトを記したノートに至るまで、時代ごとに5つの章にまとめて約170点を展示。20世紀後半の美術界を勢いよく駆け抜けた吉田克朗の活動の全貌とその創作の軌跡をたどる。

『吉田克朗展―ものに、風景に、世界に触れる』

開催期間:~6/30
会場:神奈川県立近代美術館 葉山 
TEL:046-875-2800
開館時間:9時30分~17時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般¥1,200
www.moma.pref.kanagawa.jp/exhibition/2024-yoshida-katsuro

※この記事はPen 2024年7月号より再編集した記事です。