建物全体から循環を試みる、都市のサステイナブル建築【今月の建築ARCHITECTURE FILE #20】

  • 文:佐藤季代
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ヒノキ材の壁を白塗装し、都会的なデザインに仕上げた。屋根を伝って集めた雨水を循環させ、菜園の散水に利用するなど自然資源を活用。 photo: Kai Nakamura

東急不動産が展開する大型複合施設「フォレストゲート代官山」が、2023年10月に東急東横線代官山駅前に誕生した。建築家の隈研吾が設計した「メイン棟」へのアプローチ沿いに立つのが、カフェや花屋、セレクトショップ、イベントスペースなどを併設する「テノハ棟」だ。自然との共生を軸にした環境建築で知られるスープが設計し、施設全体の植栽を手掛けたソルソのグループ会社、RGBが企画・運営を担当。循環をテーマに、都市におけるサーキュラーエコノミーを体感できる場を提案している。

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吹き抜けがあり、陽光が差し込む開放的な「サーティーカフェ」。地球環境をテーマにしたイベントや展示など、多目的な利用を想定している。 photo: Kai Nakamura

 

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屋外テラスとつながる2階のライブラリー。店内の仕上げや階段のほか、家具類などにも、古材やリサイクル材を積極的に取り入れている。 photo: Kai Nakamura

建物形状や外壁、店内の什器は、蜂の巣など自然界にある六角形をモチーフにしている。期間限定の店舗として計画されており、解体・移築、再利用ができる仕組みだ。柱や梁などの木部は、岡山県西粟倉村と連携し、曲げがあり、成長の遅い劣勢木の間伐材を無駄なく活用。内装材にも再生可能な資源を積極的に取り入れている。

こうした建築からのアプローチに加え、ソフト面の循環もさまざまなかたちで実践。雨水を利用した棚田状の屋上菜園や、店内ファームで育てた野菜やハーブを提供するなど“店産店消”を実現。ロスフラワーの販売、ゴミを減らす量り売り専門店の併設といった環境負荷を低減する多様な取り組みを通して、サステイナビリティの重要性を伝えている。

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改札側から敷地内に入ると、木造2階建ての「テノハ棟」が迎える。奥の建物は賃貸住宅やシェアオフィス、商業施設の入る「メイン棟」。 photo: Kai Nakamura

 

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天井などいたるところに六角形のモジュールが採用されている。同じ規格の部材をジョイント金物で接合することで、分解移築が可能に。

フォレストゲート代官山テノハ棟

住所:東京都渋谷区代官山町20-12 
TEL:によって異なる
開店時間:店舗によって異なる
定休日:店舗によって異なる
https://forestgate-daikanyama.jp/tenoha
【設計者】末光弘和+末光陽子 / SUEP.
末光弘和・陽子が共同で主宰する建築ユニット。地球環境と建築をテーマに、風や熱、水などのシミュレーション技術を用い、建築を媒介した資源の循環システムの構築を目指す環境建築デザインを手掛けている。

※この記事はPen 2024年6月号より再編集した記事です。