追い求めた新技術を搭載、エンタメ性の高いfinalのヘッドホン

  • イラスト:信濃八太郎
  • 編集:一ノ瀬 伸
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〈ヘッドホン〉
final D7000(ファイナル D7000)

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新たなフラッグシップヘッドホンとして発売されたfinalの「D7000」。本体と各種ケーブルを収納できる専用プロテクトケースが付属している。¥398,000

final(ファイナル)はマニアから絶大な支持を受ける、先進的なイヤホン・ヘッドホン専門メーカー。同社の代名詞たるべく、ハイエンドを目指して開発された最新ヘッドホンがD7000だ。2017年に発売されたフラッグシップのD8000の地平を継ぎ、新技術を贅沢に投入した。

イヤホン・ヘッドホンメーカーで基礎から素材、構造、回路を自社内で研究開発しているところは稀だ。ほとんどは中国のOEM先に丸投げする現実だが、finalは音響理論の基礎の基礎から、新しい視点に基づいて、感動的な音楽体験を追求している。

D7000では、個々さまざまな外耳(ピナ)の形状に合わせた音拡散機構の「ピナ アライン ディフューザー」を搭載。シミュレーションと聴感実験を繰り返し、どのユーザーにも最適な有機的形状にした。また、イヤーパッド内を密閉しリッチな低音再生を目指す「エアフィルムダンピングシステム」など新技術は多数に上る。

音は、先代とまったく方向が異なるのが面白い。D8000が誕生したのは、社名が前身の'S NEXT時代。finalはそのブランド名で、評価もまだ低かった。その時に、全身に先端技術をこれでもかと詰め込み、業界最高水準の音を世に問うという意気込みで開発された。だから、その音から私は緊張感と矜持を色濃く聴く。

一方、D7000からは、リラックスして音楽を臨場感豊かに楽しむというエンターテインメント的精神が聴けた。音の出方が豊潤で、ボーカルの表情が優しく、音楽が生まれる場の雰囲気が上質。解像度は相当高いが主役ではなく、音楽のワクワク感や音の弾みを演出するサポート役を巧みに演じる。心底、安寧に音楽を楽しめる高品位なヘッドホンだ。

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新開発の「ピナ アライン ディフューザー」を搭載。拡散(ディフューズ)による音響調整の考え方をヘッドホンに投入。課題だった耳の形状による個人差もクリアした。

 

麻倉怜士

デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。

問い合わせ先/final
contact@final-inc.com

※この記事はPen 2024年6月号より再編集した記事です。