ここ数年、じわりと人気が増しているのがシンプルなスタイルのドレスウォッチ群。レトロモダンやヴィンテージスタイルの流行もあり、「ウォッチズ&ワンダーズ2024」でもさまざまなトップブランドからクラシック回帰への流れが見て取れた。
パルミジャーニ・フルリエ「トリック プティ・セコンド」
1996年のパルミジャーニ・フルリエ創設当時に誕生したコレクションである「トリック」が、今年の「ウォッチズ&ワンダーズ」で華麗な復活を果たした。スモールセコンド3針の「トリック プティ・セコンド」は、今年の「ウォッチズ&ワンダーズ2024」の中でも筆頭に上がるモデルだ。手巻きムーブメント、ダイヤル、インデックスと時分針までゴールド製で仕上げた。
ケースとバックルの素材はゴールドとプラチナに限定し、プレシャスメタル使いを徹底し、シンプルなスタイルを華麗に昇華する。ローレット加工のベゼルは継承しつつ、デザインは一新。文字盤は1960年代の「ヴィンテージ」スタイルを着想源とし、エッジを下げた形状に。伝統的な技法でグレイン仕上げされ、繊細でマットな質感だ。アリゲーターのヌバック仕上げストラップには、ナポリの一流テイラーが使うような「プント・ア・マーノ(手縫い)」のサルトリアルステッチが施されている。
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パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス 5738/1」
パテック フィリップのロングセラー「ゴールデン・エリプス」に、最新のメタルブレスレットを装着した新作が登場した。チェーンスタイルのローズゴールド製ブレスレットは、全面がポリッシュ仕上げ。363個ものパーツから構成されており、しかもそのうち300個以上のリンクは手作業でひとつずつ組立てられたものだ。
彫金を施したローズゴールドのバックルは、3つの調整ポジションを採ることができる。エボニーブラックの文字盤はソレイユ仕上げで、ローズゴールド製のバトン型植字アワーマーカーと、「シュヴー型」の時分針を合わせている。完璧な造形美は「ゴールデン・エリプス」の真骨頂。製品のネームにもある“黄金分割”からインスピレーションを得たプロポーションに、超薄型自動巻きムーブメント「キャリバー240」を搭載。誰も真似できない古典的名品の見事なアップデートと言えるだろう。
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ショパール「L.U.C カリテ フルリエ ルーセントスティール」
ショパール「L.U.C カリテ フルリエ」の新作は、80%以上のリサイクル素材で生成されたショパール独自の合金「ルーセントスティール」をシリーズでは初採用して登場した。持続可能なその取り組みに加え、リューズとラグのデザインを変更したエレガントなスタイル、シルバートーンのモノクロームを使ったシックなセクターダイヤルは、2005年発表の「L.U.C カリテ フルリエ」オリジナルモデルを思い出させるものだ。
ダイヤルは、中央セクターはサンバーストサテン、チャプターリングはサーキュラーサテン、スモールセコンドカウンターには繊細なスネイルというように、パーツそれぞれに仕上げを変え、巧みなコントラストを作り出している。厚さわずか3.30mmの超薄型ムーブメント「L.U.C 96.09-L」は、クロノメーター認定を得た精度と約65時間ものパワーリザーブを誇る。さらには時計そのものが、「カリテ フルリエ」の厳しいテストを受け、合格の認証を受けた信頼の品だ。「L.U.C」コレクションの全製造工程をスイス・ジュネーブとフルリエの自社内で行う、ショパールの象徴的モデルである。
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グランドセイコー「エボリューション9 コレクション SLGW003」
グランドセイコーが「ウォッチズ&ワンダーズ2024」で発表した3型の新作のうち、「エボリューション9 コレクション」からは、新しい手巻きムーブメントを搭載したモデルが誕生している。そのムーブメント「キャリバー 9SA4」は、先行機「9SA5」」からデュアルインパルス脱進機をはじめ、グランドセイコーフリースプラング、振り角が変化しても精度への影響を抑える巻き上げひげ、ツインバレルなどの優れた技術を継承。毎秒10振動と最大80時間のパワーリザーブを保ちながら、構成部品の約40%を新設計した。
さらに巻き上げ時の心地よい感触や音、手巻機構の部品の動きといった、触覚や聴覚、視覚にも訴える部分が重視されている。視覚的にも物語性が込められており、巻き上げ機構のコハゼとコハゼバネの新形状は、岩手の「グランドセイコースタジオ 雫石」の周辺で姿が見られる鳥、セキレイに着想を得たという。ダイヤルは、同じく岩手・平庭高原の白樺林を思わせる樹皮の美しさを表現した。レギュラーモデルのケース素材は、グランドセイコー独自のブリリアントハードチタンを採用。通常のチタンよりも白くて美しい素材を熟練の研磨師が「ザラツ研磨」を駆使して磨き上げている。
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ロレックス「パーペチュアル 1908」
昨年、突如登場して世界中の話題となったロレックスの最新コレクションの新モデル「パーペチュアル 1908」に、プラチナ950製の新作が登場した。ダイヤルカラーは、ロレックスではプラチナ製モデルにのみ採用されるアイスブルー。ギョーシェ彫り(エンジン・ターニング)でライスグレインモチーフが施され、現行コレクションでは唯一採用されているスモールセコンドは、サンレイ仕上げにより手首の動きに呼応して爽やかなブルーがさまざまな輝きを放つ。
サファイア製ケースバックからのぞくのは完全自社開発・製造ムーブメント「キャリバー 7140」だ。ブリッジは縞模様の間に細かいポリッシュ仕上げの溝が入る「ロレックス コート ド ジュネーブ」モチーフで装飾されている。ストラップの裏側、ライニングのカラーはロレックスのブランドカラーであるグリーンに。二重折り畳み式のプラチナ950製デュアルクラスプは、常に手首の中心に固定される設計が採用されている。
まったく違う個性でありながら、高級腕時計の王道ともいえるクラシックで競演するパルミジャーニ・フルリエ 、パテック フィリップ、ショパール、グランドセイコー、ロレックス。いずれも引けを取らない今年の名品の発売が待たれる。