高級スポーツウォッチが世界を席巻する21世紀の時計業界。「ウォッチズ&ワンダース2024」でも、関係者の間で注目の的となった。時計ジャーナリストの並木浩一が、魅惑の新作をピックアップして解説する。
タグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド クロノグラフ」

タグ・ホイヤーから新作の「モナコ スプリットセコンド クロノグラフ」がレッドとブルーの2カラーが発表された。モナココレクションの55周年を機に登場した高度なスプリットセコンドはデザインを一新。構造を見直し、グレード5チタンなどの軽量素材を駆使して、わずか85gという軽さを実現した。
ケースバックだけでなくダイヤルもサファイア製で、ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエとのコラボで誕生した100%チタン製ムーブメントの勇姿を堪能できる。初代モナコのオリジナルカラーをリスペクトするブルーは、ローターのグラデーション塗装のほか、ライトブルーから濃いロイヤルブルーへと変化していくダイヤルアーチにも生かされた。複雑なカラーグラデーションは、 処理段階ごとに異なる電圧を加える繊細なアルマイト処理によって実現したものだ。
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パネライ「サブマーシブル クアランタクアトロ ルナ・ロッサ Ti-Ceramitech」

2024年は世界最高峰のヨットレース「アメリカズカップ」本戦の年。参戦する「ルナ・ロッサ プラダ ピレリチーム」の公式スポンサーであるパネライから新作「サブマーシブル クアランタクアトロ ルナ・ロッサ Ti-Ceramitech」が登場した。印象的なブルーの新素材「 Ti-Ceramitech」は、もともとヨットレース環境で高性能製品に使用されていたマテリアルからインスパイアされ、スイス・ヌーシャテルにあるパネライのマニュファクチュール内にある「ラボラトリオ ディ イデー(アイデアの工房)」が7年かけて製造したもの。
チタン合金の表面を電解プラズマ酸化処理して緻密なセラミック層に変化させ、使用元素と電解質組成の組み合わせにより、独特なブルーに仕上げた(製造プロセスは特許申請中)。美しさだけでなく、セラミックの10倍の破壊靱性、スチールより44%軽量で、高圧と高温に耐える。「Luna Rossa」の文字を入れたバイマテリアルストラップもよく映える。
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チューダー「ブラックベイ 58 GMT」

チューダーのブラックベイコレクションに新作「ブラックベイ 58 GMT」が登場した。直径39㎜サイズのケースにバーガンディ、ブラック、ゴールドプレートの3色使い回転ベゼルを合わせたスタイルに、待望のGMT機能が加わった。搭載されたマニュファクチュールキャリバー「MT5450-U」は、モジュールを追加した改良型ではなく、まっさらな新設計のムーブメントである。しかも「マスター クロノメーター」の認定を取得。
つまりはムーブメントがCOSC認定を受けたクロノメーターであるのに加え、スイスの政府機関であるMETAS(スイス連邦計量・認定局)により精度、耐磁性、 防水性、 パワーリザーブ等の認証を受けた、スイスメイドの最高基準を満たしているということだ。スノーフレーク型の時針、ロリポップスタイルの秒針など、マニア心をくすぐるディテールの一方、約65時間のパワーリザーブを誇り、ユーザーを満足させるアップデート感も満載である。
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ゼニス「デファイ スカイライン クロノグラフ」

ゼニスから登場した「デファイ スカイライン クロノグラフ」は、高振動自動巻きクロノグラフキャリバー「エル・プリメロ」を要するマニュファクチュールの真骨頂ともいえる新作だ。八角形を基調とした幾何学的で複雑なファセットカットの42mmケースは、初期「デファイ」のケースと多面のベゼルをモダンにアップデートした斬新なデザイン。
文字盤上には4 つの点を結んだ星のエングレービングを散りばめ、星空を描く。性能面では毎秒10振動のハイビートである「エル・プリメロ」の能力を最大限に活かす、10秒で1回転するクロノグラフ針を装備し、1/10 秒単位のスケールが刻まれたフランジリングに、正確無比な計測記録を残す。ケースにはクイックストラップチェンジ機構が組み込まれ、工具を使わずボタンを押すだけで、3 連のスチールブレスレットを付属のラバーストラップに交換できる。
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ロレックス「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」

「オイスター パーペチュアル GMTマスター Ⅱ」に登場した新作には、ワールドワイドなニュースバリューがある。24時間回転ベゼルのセラミック製セラクロムインサートのカラーは、昨年発表のグレーとブラック。今年は同じカラーリングのベゼルが、オイスタースチールモデルに搭載されて登場した。
GMTの24時間針とともに、ブラックラッカーダイアル上の「GMT-Master Ⅱ」の文字に採用されたグリーンカラーは既に話題に。耐蝕性・耐久性・研磨性に優れたオイスタースチール製のオイスターブレスレットまたはジュビリーブレスレットのどちらが好みかも、意見の応酬があるだろう。1955年に発売された初代の「GMTマスター」は1982年に「GMTマスター Ⅱ」を生み、既に42年。それだけの時を経てもなお、この時計はGMTウォッチの中心にいる。
世界的な腕時計ブームを加速するスポーツウォッチの新作は、「ウォッチズ&ワンダース」でも大きな話題を呼ぶ。定評あるブランドが意欲的な新作を発表した今年もまた、スポーツウォッチが流行を牽引していく予感がある。