「2カ月が一瞬で無に」自家用車を“ヘリコプター”に改造したインド男性、あっというまに没収される

  • 文:青葉やまと

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Agus Laksono-Shutterstock ※画像はイメージです

ヘリコプターは高価すぎて手が出ないが、車を改造すれば似たルックスになるかもしれない。インドに住むある男性は、そう考えたようだ。手作業で自動車を改造したものの、完成間近で警察が発見。交通規則違反であえなく没収されてしまった。

インド北部のウッタル・プラデーシュ州に住むイシュワール・ディーン氏は、中古車を入手。アート作品を制作してきた腕前を生かし、2カ月以上をかけて入念な改造を行った。

アイデアは良かった。ヘリの象徴でもあるメインローター(主翼)を屋根に溶接すると、それだけでもヘリの風格が。コンパクトなサイズ感の中古車本体が幸いし、スタイルとしては一気にヘリに似た雰囲気を醸し出す。英インディペンデント紙は、スズキの現地法人「マルチ・スズキ」が販売するワゴンRがベースだと伝えている。

加えてボディ後部にテールローターを溶接すると、地上で待機中のヘリコプターに近いルックスが誕生した。もちろんこのヘリは飛ばないが、ディーン氏は結婚式などイベントのパフォーマンスを念頭に制作したという。ヘリの俗称にちなんで「チョッパーカー」と名付け、完成を心待ちにしていた。

あとは塗装を待つだけだったが…

基本的な形状は完成し、あとは塗装を仕上げるだけの状態だ。現状ではあからさまに中古車にその他のパーツを後付けした状態であり、あまりに見栄えがしない。中古車がホワイトの塗装色なのに対し、ローター付近は錆びた金属板がむき出しになっている。

後付け部分の見た目を取り繕うためにも、塗装は2カ月の作業の最終工程として欠かせないステップだった。ところがディーン氏を悲劇が襲う。当然と言うべきか、公道を走る要件を満たしていなかったのだ。

塗装のため工房へとチョッパーカーを走らせていたディーン氏は、交通警察に制止された。自動車規則違反として2000ルピー(約3600円)の科料が科されたほか、チョッパーカーは没収。改造部分を解体して取り外さない限り、車両は返却できないという。

インド通信社のANIによるとディーン氏は、すでにこのプロジェクトに25万ルピー(約46万円)をつぎ込んでいた。氏は、「家族が小遣いを稼げるようにと、結婚式シーズンに予約用に車を改造したんです」と説明。

式場を盛り上げるために制作したものであり、常時公道を走らせるつもりはなかったと強調した。インドでは11月から2月頃までに結婚式が集中するが、その間の副収入を見込んでいたようだ。

同じ北部のビハール州やプラタプガル州など、近隣州でも同じような車が走っていることから、ディーン氏は改造に問題はないと考えたという。

警察「安全上の懸念があった」

「制作のため昼夜問わず働きました」と訴えるディーン氏だったが、法令違反の事実は覆らない。多くの野次馬や警官たちが囲むなか、チョッパーカーは没収となった。警察は、車両は自動車法に定める適切な許可を得ず改造されたものであり、安全上の懸念から没収に至ったと発表している。

無念のディーン氏だが、安全への配慮は欠けていたと言わざるを得ない。半完成の最も醜い状態で作品は没収となり、解体を命じられる結果となった。飛ばないばかりか走ることもなかったチョッパーカーに、ディーン氏はすっかり肩を落としている。

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【動画】チョッパーカーの様子。塗装して完成のはずだったが……。

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 【動画】野次馬が囲むなか、チョッパーカーは没収の憂き目に。