芸達者で楽しい、カシオの本格派デジタルピアノ

  • イラスト:信濃八太郎
  • 編集:一ノ瀬 伸

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〈電子ピアノ〉
CASIO CELVIANO AP-750(カシオ セルヴィアーノAP-750)

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「CASIO CELVIANO AP-750」は、独自の音響システムでグランドピアノのような自然な臨場感とクラシックの世界観を高いレベルで実現。¥242,000(市場想定価格)

グランドピアノの弾き心地、音色の実現に徹底的にこだわった電子ピアノだ。解説書には弦共鳴、機構音、大屋根の開閉量に伴う音色変化などのグランドピアノ特有のメカニズムを、いかにデジタルを使って実現に努めたかを喧伝。

弾いてみると、感心する。まずタッチ。電子ピアノのキーボードの多くはプラスチッキーだが、本作はスプルース材と樹脂の複合だ。感触がいい。ハンマーの重みから来る指先のリジッドさも感じられる。軽やかに弾くと、そのままのライトなタッチ感だし、強く弾くと重くなり、手応えが増す。離鍵の速さによっても止音や響きのニュアンス感を制御している。

デジタルならではの音芸が、音色のバラエティ。世界の3つのグランドピアノの音色をサンプリングし、独自の「AiR Grand音源」で仕上げた。弾くと、ベルリンに本拠を置くベヒシュタインと共同開発した「ベルリン・グランド」はすっきりとしている。「ウィーン・グランド」はコケティッシュで倍音がきれい。「ハンブルク・グランド」は豊潤で、ジェントルな味わい。私はいつもスタインウエイを弾いているが、その雰囲気は少なからず感じられた。

曲の種類にマッチした音色を奏でる「クラシカルピアノレパートリー音色」も面白い。古典派のピアノソナタ用の「SONATAGRAND」はブリリアントで軽快、ハイコントラストだ。ユニークなのがアップライトピアノの音を摸した「LITTLE PIECE UPRIGHT」。音が内にこもり、抜けない特徴をつかんでいる。子どもの頃にピアノレッスンをしていたが、やめてしまった大人に再度、ピアノに親しんでもらうための戦略的な懐古音色。多彩なピアノ芸が楽しめる本格デジタルピアノである。

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世界的に有名な3つのグランドピアノの音色を搭載。前面パネルには「ビジュアルインフォメーションバー」を備え、打鍵強度やペダルの踏み加減などを確認できる。

麻倉怜士

デジタルメディア評論家。デジタルシーン全般の動向を常に見据える。著書に『高音質保証! 麻倉式PCオーディオ』(アスキー新書)、『パナソニックの3D大戦略』(日経BP社)などがある。

問い合わせ先/カシオ計算機お客様相談室(楽器専用)
TEL:0120-088928

※この記事はPen 2024年5月号より再編集した記事です。