「モデルに生卵やゴミを投げつけ…」斬新すぎるファッション・ショーが話題に 観客もゴミ投げに参加

  • 文:山川真智子

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CatwalkPhotos-Shutterstock

ミラノ・ファッション・ウィークで、イタリアのブランドAVAVAV(アヴァヴァヴ)が、ランウェイを歩くモデルにゴミを投げつける前代未聞の演出を行った。このパフォーマンスは、「ゴミ・ファッションだ」という批判的なオンライン上のコメントを意識して行われており、昨今のファッションとオンライン上の言説との関係に、疑問を投げかけるものだった。

ゴミ・ファッションにはゴミを…ネットの中傷への返答? 

ワシントン・ポスト紙によれば、このショーをプロデュースしたのは、2020年からAVAVAVのクリエイティブ・デザイナーを務めるスウェーデン人デザイナー、ベアテ・カールソンだ。ファッションの堅苦しさをいたずらっぽく茶化し、以前から奇抜な作品をつくってきた。カルチャー誌デイズドによれば、これまでモデルが歩いているうちにバラバラになってしまうコレクションや、未完成で雑な作品を発表するなどしており、独創的なアプローチを取っている。

AVAVAVのコレクションは、どれもネット上で大きな反響を呼んでおり、「もはやファッションではない」「ゴミだ」などのコメントを受けてきた。そんなネット上での荒らしに、カールソンは本物のゴミをモデルに投げつけるという演出で返答。デイズドに対し、「気に入らないパフォーマンスには、腐ったトマトを投げつけていた中世にインスパイアされた」と話している。

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観客もゴミ投げに参加…ショーは粛々と進行

ワシントン・ポスト紙によれば、ゴミを投げつけられることをカールソンが事前にモデルらに伝えると、全員大賛成してくれたという。観客用のベンチの下には、生ごみや紙屑、飲料の容器などが詰まった100個近くの白い缶とラテックス手袋が置かれ、ショーの2時間前には、会場は酸っぱい悪臭に包まれた。

照明が落ちてモデルたちが登場すると、数分もしないうちにあらかじめ用意された人員がゴミを投げ込み始めた。間もなく観客の中にもゴミを投げ込む者が出始め、ショーが進むにつれ、攻撃的な投げつけになったという。モデルたちはたちまち生卵やケチャップ、その他の湿ったものでベトベトになり、ゴミだらけのランウェイを歩いて戻っていった。

フィナーレにはカールソンが登場。観客が盛大な拍手で迎えると、スタッフの一人がカールソンの顔面に特大サイズのパイをぶつけ、歓声が上がったという。

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ソーシャルメディアの弊害 変わるファッションと大衆の関係 

今回のショーに対する反応は様々だった。その大胆さと、問題を提起する試みを称賛する人もいれば、モデルを標的にするのは不適切かつ失礼などの不快感を示す人もいたということだ。

ファッション系サイト、グラツィアは、AVAVAVのショーは、ファッションとオンライン言論の徐々に進化する関係に疑問を投げかけたとする。ファッション・デザイナーは、従来クリエイティブさを示し、トレンドに影響を与えるために、オンライン・プラットフォームを利用してきた。しかしソーシャルメディアの台頭で、ブランドと消費者の間に直接的なコミュニケーションが開かれ、しばしば称賛と批判の両方がもたらされるようになったということだ。

AVAVAVのショーは、ネット上の否定的な意見がもたらす弊害についての対話を呼び起こすと同時に、プラットフォームの力を利用して注目を集めるというもので、現状をうまく切り抜けるための試みと見ることもできるという。このショーが最終的にどのような影響を与えるかはわからないが、一石を投じたことは確かだろう。

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ゴミ投げショーの様子。

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ランウェイの両側には、ソーシャルメディアに投稿された否定的コメントがディスプレイされた。

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モデルを辱めている、リスペクトがないという批判も寄せられた。

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以前に発表した、モデルが歩いている間に服がバラバラになっていくコレクション。