「至高のアート!」ビル4階分の高さ、クルーズ船のデッキ貫く巨大球体オブジェが出現 3000点のピースが連動

  • 文:青葉やまと

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ニューヨークのデザイナー集団「ブレックファスト」が、世界最大の動く球体アートオブジェ『ザ・パール』を制作した。

直径は約16mと、異例のサイズ感だ。客船会社ロイヤル・カリビアンの新しいクルーズ船「アイコン・オブ・ザ・シーズ」内に設置され、船内ロビーの天井を超える威容を誇る。高さは約13.7mあり、ビルおよそ4階分に相当する。

球体表面は菱形のパネルを組み合わせ、白い無機質なシェル状となっている。だが、作品の本質は内側にある。約3000枚の正方形のタイルがそれぞれ独立して動き、繊細に角度を変えることで、 全体として海原のようなうねりを生み出す。

あるときは穏やかに広がる波紋のように、またあるときは天へ向けて昇る光の筋のようにと、無数の表情を演出する。

自然界の法則を取り入れたタイル配置

制作はニューヨークのデザイナー集団「ブレックファスト」が担当し、4年間を費やした。作品は海をモチーフにしており、海の穏やかさや力強さを表現したという。

航行中、ザ・パールはカリブ海の潮流や風のデータを取り込み、コンピューターを介してタイルに有機的なゆらめきを与える。各タイルはひまわりの種の配置と同様、自然界に多く見られる法則「フィボナッチ数列」に沿って配置されている。

球体内部には奥へと貫通する階段が設けられており、作品中央で無数のタイルに囲まれながらの鑑賞体験が可能だ。ザ・パールは、新造船「アイコン・オブ・ザ・シーズ」の中心部、左舷側デッキの第5から第8層を貫く形で設置されている。船内の主要通路「ロイヤル・プロムナード」から、「パール・カフェ」への移動中、乗客は自然とこの階段を通る設計だ。

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美しさだけではない実用的な役割

長い船旅に彩りを添えるザ・パールだが、クルーズ船内部において実用上の役割も担っている。クルーズ情報誌の『クルーズ・ハイブ』は、「船の左舷側を支える耐力上部構造として機能する」と解説している。

同誌はまた、「船体内部のパブリック・スペースに風通しの良い開放感をもたらすべく、広々とした空間と光の感覚を加えている」との設計意図を紹介。タイルが反射する光とおだやかな躍動を通じ、船内の閉鎖的雰囲気を軽減する意味合いがあるようだ。

こうした機能面のほか、アートとしての評判も上々だ。イタリア発祥のインダストリアルデザイン誌『デザインブーム』は、「世界最大のキネティック(動く)・アート作品」であり、「アートとテクノロジーの前例のない融合」を実現したと評価。ありふれた作品に留まらず、海のリズムと心に触れる没入型の体験を提供するとも述べている。

ブレックファストの制作チーム自身も、「スタジオにとって画期的な成果であり、現代アートの世界に大きな足跡を残した」と自負。同スタジオのマイルストーン的存在になったと胸を張る。

「壮大!」ソーシャルメディアでも好評

ブレックファストが公式YouTubeを通じて作品動画を公開すると、コメント欄には視聴者から感嘆の声が寄せられた。

「今まで見た中で最も美しいアート作品のひとつだ!惚れ惚れする!素晴らしい作品だ」

「これは美しい!」

「壮大(ハート)」

「またひとつブレックファストの傑作が誕生した!」

ブレックファストはこれまでにも、海辺に設置され海面の上下に従って姿を変えるオブジェ「シー・レベル・ライトハウス」など、海と風をモチーフにした大型のキネティック・アートなどを精力的に制作している。海原のリズムをいつまで見ても飽きないのと同じように、いずれも繊細な波状の動きをずっと眺めていられるような作品だ。

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約3000枚のタイルが連動する『ザ・パール』。

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『シー・レベル・ライトハウス』は、らせん状のオブジェを光が駆け上がる。