世界へ発信する、ドメスティックブランドの新店&リニューアル店に注目!

  • 写真:大町晃平(W)
  • 文:一史

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いまや世界でも広く知られる日本発のファッションブランド。グローバルな人気を博すブランドから新進気鋭まで、新たに誕生、あるいはリニューアルした注目の11店を紹介。

Pen最新号は『東京がおもしろい!』。都市は新陳代謝を繰り返し、常に変化し続ける。世界屈指のメガシティ、東京はなおさらだ。アフターコロナのいま、気がつけばあちこちで新しい動きが起きていた。世界中の人々を惹きつける新旧混じり合うこの都市で、いまどこへ行くべきか? 2020年以降オープンのショップからクリエイターたちのお気に入りまで、東京の“いま”がここにある。

『東京がおもしろい!』
Pen 2024年3月号 ¥880(税込)
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青山、銀座、原宿……東京のファッションタウンに活気が戻ってきた。おもにアジアを中心とするファッション感度の高い訪日客が、欧米とも韓国とも異なる日本スタイルを求めて街を行き交っている。アフターコロナのこの動きに狙いを定めたのか、ここ数年で国内の有力デザイナーズが直営店を広げ、改装による再スタートにも熱心に取り組んでいる。実店舗ならではの“体験”を得られる、モノからコトへの動き。空間づくりでは旬の建築家やデザイナーを起用し東京発の力強いコラボレーションを見せる。日本ファッションの新店を見て回れば、東京カルチャーの現在を感じ取れるだろう。

その一方で、街の洋品店のごとくパーソナルな店のあり方を追うブランドも増えてきた。東京やパリで大規模なショー発表を行いながらの、顧客との対話を重視した店づくり。ひとつの方向に偏らないのが、いまという時代の切り口なのかもしれない。

【青山】 OTSUMO PLAZA

NIGO®×VERDYの東京カルチャー発信拠点

ファッションデザイナーのNIGO®×アーティストのVERDY。彼らが次世代のアーティストのアイデアを体現できる東京のスポットとしてオープンしたコンセプトショップ。ネーミングの由来は、NIGO®が手がけるヒューマンメイドの運営会社であるオツモから。品揃えの中心はVERDYのプロジェクトアイテム。元はプールだった室内をリノベートし、広々とした贅沢な空間づくりが圧巻だ。ショップ限定アイテムはネット購入ができず、ここでしか買えない。VERDYがかつてこの場所に並んで欲しいモノを買ったという、ワクワク感も体験できる場だ。

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元々はこの店が入居するマンションの住民用のプールだった場所。中央部が低くなった独特な空間だ。

東京都港区南青山5-12-24
TEL:03-6427-9625
Instagram:@otsumoplaza

【銀座】 イッセイ ミヤケ ギンザ / 442 

4フロアの大型拠点、銀座で新たな挑戦へ

海外への発信拠点として大きな役割を果たす銀座に、4フロアの集大成的なショップをイッセイ ミヤケがつくりあげた。メンズウエアのアイム メンをはじめ、グッズのバオ バオ イッセイミヤケやグッド グッズ イッセイ ミヤケ、さらに香水、時計、アイウエアなど10ブランドが展開されている。ここを訪ねればワードローブを一気に揃えられるだろう。空間は、三宅一生のもとでデザインを学び、同ブランドの店舗設計を多数手がけてきたデザイナー吉岡徳仁によるもの。大きな特徴は、リサイクルアルミニウムの素材づかい。特殊な製法による継ぎ目のない壁や階段手すりは、建築ファン必見の迫力だ。このクリーンな世界観が、未来を志向する時代とリンクする。

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オム プリッセ イッセイ ミヤケなど、メンズ系のアイテムを中心に展開する地下1階。アイウエアや時計も同フロアにある。

東京都中央区銀座4-4-2
TEL:03-6263-0705
www.isseymiyake.com

【銀座】 オニツカタイガー 銀座 コンセプトストア

新ラインに特化した、最旬アイテムが揃う場所

銀座すずらん通り近くでひと際目を引くイエローのビル。2023年8月にできたこの店は、オニツカタイガーのハイエンドなファッションラインであるイエローコレクションのオンリーショップ。同ラインをディレクションするファッションデザイナーのアンドレア・ポンピリオ自身も構想に携わり、生み出された。奥行きがある構造ながら狭さを感じさせず抜け感さえあるのは、イエローの色彩と巧みに配された鏡の効果だろうか。若々しいスポーティモードなデザインを購入するテンションにフィットする、パワフルな注目店だ。

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イエローコレクションはアパレル、シューズ、小物で構成。

東京都中央区銀座5-6-2
TEL:03-6630-3081
www.onitsukatiger.com

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【表参道】 CFCL OMOTESANDO

ブランドの世界観を伝える、最重要な旗艦店

ニットウエアを専門にするファッションブランド、という独特な立ち位置で世界に発信するCFCL。2021年にデビューした直後から話題をさらい、22年には表参道GYREに初の直営店をオープン。東京、大阪に4店舗まで広がった現在も、旗艦店として重要な役割を担っている。SDGsに根付く服づくりをアイデンティティのひとつとするCFCLは、日本のアパレル企業で初めてB Corp認証を取得。内装も無駄をなくし、モジュラーシステムの什器は組み立て直して別の姿に変えられる。服にも店にも、パリコレなどの世界を舞台にするブランドが成すべき新時代構想が息づいている。 

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表参道エリアを代表するファッション複合ビルGYREに設けられた初の直営店。ミニマルな店舗デザインを手がけたのはMMA Inc.。外壁(写真左端)にはSDGsのB Corp認証マークがつけられている。

東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
TEL:03-6421-0555
www.cfcl.jp

【青山】 マメ クロゴウチ アオヤマ

フルラインアップを揃えた、和が息づく異空間

ファッションデザイナー黒河内真衣子が手がけるマメ クロゴウチが2023年1月に誕生させた待望の旗艦店は、表参道駅近くでありつつも、奥まった住宅地にひっそりと佇む。出身地である長野をはじめ日本に根ざす服づくりをする黒河内らしく、このショップにも随所に日本の技術が採用されている。柳原照弘による内装の壁面や天井を彩るのは、左官職人の都倉達弥の手によるもの。店に入るとガラス越しに和風の坪庭が見え、階段を上がって服のフロアに入る。ここでしか得られない“体験”を味わいに行く価値のある、独特の空気に満ちている。

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店舗デザインのテーマは「受け継がれるものの記憶」。過去から継承され未来へとつながる、日本を軸にした伝統文化から着想されている。服や小物が置かれたスペースはワンフロアで、客は回遊するようにぐるりと壁際のラックを眺めていく。

東京都港区北青山3-8-3
www.mamekurogouchi.com

【青山】 SMALL TRADES

アトリエに隣接した、私的な店スペース

東京メンズモードの最右翼であるシンヤコヅカが、アトリエに併設するかたちで設けたパーソナルな店。シーズンごとの色が濃いスモールトレーズ、シンヤコヅカ流ベーシックのオーディナリーライフ、古着やデッドストックの素材を使ったミントコンディションらの各ラインが一堂に会している。什器にも使われているデンマークのフラマの家具も一部受注販売するという。服をよく知るアトリエスタッフが販売を担うのも独特で、それだけに営業日は金~月の午後に限定。スタッフとの会話を楽しみにする服好きが足繁く通う、隠れ家的な存在だ。

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最寄りの表参道駅から離れたオフィスエリアにある。写真は2023-24年秋冬シーズンのもの。春夏は装いが軽快に変わる予定だ。

東京都港区南青山 4-26-2 morph 南青山 3F
TEL:03-4363-0391
https://shinyakozuka.com

【原宿】 グラウンズ ストア 001

原宿から世界に発信する、話題の厚底シューズ

ボリュームのある独特な形状が目を引く透明なソールで、いまや幅広い年代に愛されるフットウエアブランド、グラウンズ。日本の庶民的な木造一軒家をリノベートして、日常とファンタジーが融け合うような空間をつくりあげた。内装を手がけたのは現在のファッションシーンで大人気のダイケイミルズ。ブランドコンセプトを体感できる空間として、地面や屋根裏などさまざまなレイヤーが透けて見えるようにし、浮遊感を演出。原宿の中心地にあるこのショップの誕生でリアルでのコミュニケーションが加速し、世界レベルで知名度を広げている。

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和建築の天井や床を切り抜き、インダストリアルなグレーチングでカバー。「人間と重力(地球)の関係に変化をもたらす」というブランドのコンセプト通り、宙に浮いたかのような感覚を味わえる。

東京都渋谷区神宮前5-18-14
TEL:03-6427-5121 
https://grounds-fw.jp

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【青山】 コム デ ギャルソン青山店

誕生して34年、初の増床リニューアル

表参道交差点から根津美術館にかけてのみゆき通りは、国内外のブランド直営店が並ぶ青山エリアのファッションシンボル。1989年以来、ここに拠点を構えるコム デ ギャルソンが昨年、1999年以来の大規模なリニューアルを行った。内装デザインは川久保玲によるものだ。ネット販売が隆盛のこの時代に、実店舗での買い物の楽しさを体感してもらいたいと、2階フロアの400㎡が売り場に加わった。メンズ、ウイメンズのラインアップが集うショップに今回、新しくノワール ケイ ニノミヤも参加。さらなる拡充を果たした。

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増床した2階フロア。1階と同様に各ブランドがラックごとに配置。

東京都港区南青山5-2-1
TEL:03-3406-3951
www.comme-des-garcons.com

【青山】 アンリアレイジ フラッグシップショップ

パッチワークに特化した、斬新な試みの実験場

アンリアレイジがアトリエのある本社1階にコンパクトな店を構えたのが2017年。このたび23年に、特殊な品揃えに絞ったコンセプチュアルショップへと進化した。その品とはブランド設立当時から欠かさず制作を続けているパッチワーク。約20年間アンリアレイジと苦楽をともにする国内職人との共同作業で生み出した生地が店内を彩る。ブランド初となるパッチワーク生地のオーダーメイドサービスも展開。テキスタイル、色、サイズなどを選んで注文できる。アンリアレイジのフィルターを通した自分だけの一着が手に入る、魅惑の企画である。

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右の壁は、デザイナー森永邦彦が日々ノートに書き留めた言葉からの抜粋。左の壁は年代順のファッションショーやルックのモデル写真。

東京都港区南青山4-9-3 ANREALAGE BLDG. 1F
TEL:03-6447-1400
www.anrealage.com

【青山】 サカイ アオヤマ

2011年誕生の旗艦店が、満を持してアップデート

コンクリートむき出し……というよりもむしろ建築物を壊す途中のような、アーティスティックな空間。グレーと白で統一された無機質で冷たさもある内装と、さまざまな服を一着にミックスするサカイ流の有機的な服や小物とのコントラストが力強い。「再生と破壊」をテーマに掲げる建築デザイナーの関祐介と、ブランドのクリエイティブ哲学が共鳴して生まれた空間だ。欧米、アジア問わず知名度の高いサカイにして、旗艦店は世界中でここだけ。商業施設で展開するサカイの店では得られにくい、ブランドのエッセンスが詰まった、まさしく行く価値のある店だ。 

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壊された以前の床と整えられた新たな床とが時空を超えたように交差。段ボールを模した白石膏の什器が、彫刻構造の印象をさらに高めている。

東京都港区南青山5-4-44 南青山シティハウスA-1F, 2F
TEL:03-6418-5977
www.sacai.jp

【青山】 オーラリートーキョー

元アトリエの地下空間を、拡張して2フロアに

2018年にパリコレに進出して以来、パリでの新作発表を続けるオーラリー。上質な素材を使いながら奇をてらわないベーシックで、誰もが着やすいリアルクローズだ。2017年にオープンした初の直営店のリラックスした空間は、23年の地下増床リニューアルでも踏襲されている。設計を担当したのはアーキタイプの荒木信雄。床を絨毯敷きにし、底面より一段高くして、日本の座敷の風情を出した空間づくりは今回も健在。大きな鏡も配された室内では、全身をじっくり眺められる。本当に満足のいく買い物ができる、訪れる人々に優しい配慮がなされている。

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上質素材の追求をブランドのアイデンティティとするオーラリーらしい、服の色がはっきりわかる明るい室内。家具はカール・ハンセン&サンやフリッツ・ハンセンのものなどを配置。

東京都港区南青山6-3-2 QCcube 南青山63 1F
TEL:03-6427-6336
https://auralee.jp

 

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