海上基地と宇宙の星とを行き来する“宇宙エレベーター”が実現!?「人や物を列車のように宇宙に送る」

  • 文:美矢川ゆき

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Sergey Nivens-Shutterstock ※画像はイメージです

海上にある地球の港と、宇宙ステーションの間を行き来する「宇宙エレベーター」のコンセプトデザインが、フランス・パリで開催されたジャック・ルジェリ国際コンペティションで入賞した。

BBCによると、受賞したのは英国の建築家ジョーダン・ウィリアム・ヒューズ氏。現在、英国の建築スタジオ、フォスター・アンド・パートナーズでコンセプト・アーティストとして働いている。ヒューズ氏は、「この宇宙エレベーターは、物理学者やエンジニアによる既存の研究を基に設計されており、従来の宇宙旅行に代わるものになります」と語った。

英Daily Mailによると、「アセンシオ」と名付けられたこの宇宙エレベーターは、上空36,000kmの対地同期軌道上に設置した宇宙ステーションと、地球の海上にある浮遊型の港を長いケーブルのような構造物で繋ぐ。ケーブルに沿って、6機のドローン(貨物用3機、人間用の窓と酸素を備えた3機)が移動。垂直軌道を走る列車のように上り下りして、人や物を宇宙に送る。

「私のプロジェクトは、軽量で可動式の宇宙エレベーターを、より現実的に視覚化することが目的です」と、ヒューズ氏はDezeenの取材に答えた。「自分自身が訪れたいと思うような、効率的で持続可能でありながら豪華で贅沢なものをデザインしました」

ヒューズ氏は、宇宙エレベーターは、高価で燃料を大量に必要とするロケットに比べ、はるかに安価で効率的な宇宙への輸送手段だという。「宇宙ステーションを起点に、他の惑星に旅行に行くこともできます」

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実現の課題は「素材の開発」

宇宙エレベーターの実現には、乗り越えなければならない大きな課題がいくつかある。「最も難しいのは、エレベーターのケーブルに適した素材を開発することです」とヒューズ氏は語る。

BBCの取材に対し、ヒューズ氏は宇宙エレベーターのアイデアは以前からあり、SFや現実世界の研究で検討されてきたとした上で、このアイデアが現実になるのは当分先のことだと考えていると述べた。「今後10年以内に建設されるのは難しいでしょう。しかし、いつか建設されることは間違いありません。私のプロジェクトという意味ではなく、宇宙エレベーターです」

英Daily Mailは記事内で、日本の建設会社・大林組が「2050年までに観光客向けの宇宙エレベーター建設を目指して研究中」と、2018年に発表していると述べた。これまでのところで最も有望な提案は、超軽量ケーブルを作るためにカーボン・ナノチューブ(炭素原子で構成された円筒)を使用することだ、とも追記した。

SNS上では、「もしエレベーターが途中で止まったら、いったい誰が助けにきてくれるんだろう…」「宇宙エレベーターといえば、1940年代にアイザック・アシモフが書いたSF小説『ファウンデーション』が最初だね」「2021年にデヴィッド・S・ゴイヤーが映像化した宇宙エレベーターも素晴らしかった」「このアイディアをアーサー・C・クラークが知ったら、1979年に自身が発表したSF小説『楽園の泉』に出てくると言うだろうね」という声が多数上がっている。

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ジョーダン・ウィリアム・ヒューズ氏の「宇宙エレベーター」のコンセプト・デザイン @bbc_cumbria - X

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英国の建築家ジョーダン・ウィリアム・ヒューズ氏の「宇宙エレベーター」のコンセプト・デザイン @dezeen - X

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英国の建築家ジョーダン・ウィリアム・ヒューズ氏の「宇宙エレベーター」のコンセプト・デザイン @mailonline - X

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2021年にテレビ放映された『ファウンデーション』。18秒のところで宇宙エレベーターが登場する @Apple TV - YouTube