いまや街のいたるところに洗練されたカフェが軒を連ねるバンコク。この10年で普及し、成長を遂げたコーヒー文化は創造的で華やかだ。ここではそんなコーヒー文化を牽引した立役者と、いま話題のカフェを紹介したい。
Pen最新号は『バンコク最新案内』。再開発が進み、新たな価値を創造するタイの首都・バンコク。本特集では、各分野の最前線で活躍するキーパーソンに話を訊くとともに、訪れるべき旬のスポットを紹介。驚くべきスピードで進化を続けるバンコクには、「いま」しか見られない姿がたくさんある。
『バンコク最新案内』
Pen 2024年2月号 ¥880(税込)
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凝った内装、厳選された豆、熟練バリスタによる至極の一杯。個性豊かなカフェが多く存在するバンコクだが、こんな光景が定着したのはここ10年のこと。それまでは簡素な屋台で嗜む“カフェボラーン”という濃く苦く甘い、昔ながらのコーヒーが定番だった。
流れを変えたのが「ブレイブロースターズ」のエカメス‘テイ’ウィットバスティによるライトロースト。2013年当時、欧米では既に定着していた浅煎りを提案して激震をもたらし、一気にタイのカフェ文化の夜が白み始めた。
海外のバリスタコンテストに挑戦する者が増えたのも成長の一端だと「ファクトリーコーヒー」のアティップ‘マン’アーチャラートラクールは語る。「各国代表がどんなコンセプトで豆を選び、究極の一杯を淹れるのか。海外文化や豆の味を学んだことは大きい」
文化の成熟に伴い、タイのコーヒー農家でも質の高い豆が生産されるようになったこと、そして海外の稀少な豆も流通するようになったことで、スペシャルティコーヒーの味にこだわる人が増えた。一方でフルーツジュースやソーダなどを加えたフレッシュな味わいのアレンジコーヒーが人気を集めているのも興味深い。年中暑い気候と“映え”を好むタイ人の志向に合わせ、カフェシーンは独自の成長を遂げている。
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ファクトリーコーヒー
世界レベルの実力をもつ、バンコク最人気カフェ
2018年の「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ」でタイ人初の13位、22年の「ワールド・エスプレッソ・チャンピオンシップ」で準優勝と、タイ屈指の技術を誇るバリスタを多く擁する人気カフェ。タイと世界中から厳選した豆を自家焙煎し、世界レベルの確かな技術に基づき抽出。シンプルにフィルターでシングルオリジンの豆の味を楽しむのもいいが、高いバリスタ技術があってこそ成立するミクソロジーカクテルのようなアレンジコーヒーに舌を巻く。
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ブレイブロースターズ
世界の豆を探求する、ライトローストの祖
まだタイで焙煎がビジネスとして確立されていなかった2013年、先陣を切って焙煎業をスタート。当時、濃く苦いダークローストが主流だったタイにおいて、フルーティで酸味の強いライトローストを提供して衝撃を与え、一気にバンコクのカフェシーンの流れを変えた。タイの豆も多く取り扱うが、コーヒーハンターを自負するオーナーのテイは、「常に世界中の稀少な豆を探している。国などの情報は考えず、それぞれの豆の味を純粋に楽しんでほしい」と語る。
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ナナコーヒーロースターズ
こだわりの本格コーヒーを、果実やソーダで爽やかに
ゆっくり滴り落ちるサイフォンを眺めつつ静かに知識を深められる「スローバー」と、純粋にコーヒーを楽しみたい人向けの「スピードバー」。ふたつの空間を設けて個々のニーズに応えているユニークなカフェ。国内外から約70種もの豆を取り揃え、スペシャルティコーヒーを存分に堪能できるほか、南国らしいフルーツやソーダをミックスした、見た目も味も華やかなアレンジコーヒーがここの真骨頂。暑さで火照った身体に一時の清涼感を与えてくれる。
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アヤタナ
第六感を刺激する、アート性に満ちた新店
オーナーのひとり、ポンサパット‘オフ’アーナマナートが「自分を開放する」意味を込めて製作した、手から風船を手放すオブジェ『BE FREE』。この作品を象徴に据え、元銀行だった古い物件を改装。店内の家具はすべてタイやデンマークで見つけたセカンドハンドだ。「ヴィンテージはつくりが丈夫でデザインが繊細。食器も骨董市やSNSで見つけた。新品を求めるのは簡単だが、サステイナブルでないからね」。趣深い店内が第六感(=アヤタナ)に働きかける。
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イム・アン・ヴィル
有名寺院に臨む、印刷所の面影残るカフェ
かつて多くの出版社や印刷所が存在したというフアンナコーン通り。現在はカフェ& レストラン「イム・アン・ヴィル」として生まれ変わった築150年を超える物件も、もとは印刷所だった。古い建築物や文化を後世に残していきたいと願うオーナーの意向のもと、壁や天井などはなるべく手を加えず、元来のヴィンテージの風合いをそのまま活かしている。ペストリーシェフによる本格派のスイーツやコーヒーとともに、寺院を眺めながら当時の面影に想いを馳せたい。
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ウォールフラワーズカフェ
花に彩られた、美しき一杯に癒やされる
昔は漢方問屋街、現在は個性的なバーやカフェが集まるエリアとなったソイナナを代表する存在。築100年のショップハウスを美しく改装したのはオーナーで建築家のナタパット・スリヤカン。洗練されたカフェがほぼ皆無だった十数年前、いまなお高い人気を誇る名店「カーサラパン」をオープンさせバンコクのカフェシーンの礎を築いた人物だ。花屋も経営しており、ドリンク、フードのすべてにチェンマイ産オーガニック食用花が使用されているのが特徴だ。
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ローリングロースターズ
螺旋階段が表象する、未来へのコーヒーの旅
吹き抜け構造による2階席へと続く螺旋階段と、インフィニティを具現化したメタリックなカウンターを配置した店内は、まるでSF小説の宇宙船さながらに近未来的だ。豆の味を堪能できるスローバー、ミクソロジーカクテルのようなアレンジコーヒー、夜はバーへと変わる空間……。「World Rolls, WeRoll」をコンセプトにした同店では、多様なニーズを昇華しながら、地球の回転同様に止まることのない“未来的なコーヒー” の旅へ連れ出してくれる。
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アノニマス
コーヒーの質を際立たせる、無機質な店内
格子状に組まれたスチールの無機質感と日差しや樹木の有機的要素が絶妙に融合した心地のいい空間。「店名やオーナーの背景を消し、焦点が当たるのはコーヒーとサービスだけでいい」という強い意向から店名をアノニマス(=匿名)とした。世界中の農園からトレーサビリティが確保された豆をフェアトレードで取り寄せ、シングルオリジンにこだわり、SCA認定資格を持つバリスタがスペシャルティコーヒーを淹れる。バンコクでは類まれなる硬派なカフェだ。
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パトム・オーガニック・リビング
豊かな緑に覆われた、都会のオアシス
バンコクの隣、ナコンパトム県に農園をもち、タイ全土の有機農家を支援するスックジャイ財団を立ち上げ、伝統的な智慧を活かした製品を展開する「パトム」。バンコクにあるショップ& カフェは、森のように豊かに生い茂る緑の中に溶け込むように建てられたグラスハウスだ。デザインは女性2人組の建築ユニット、ニタプロウが担当。内装にはすべてナコンパトム県で出た古材が使用されている。足を踏み入れれば、ここが都心であることを忘れる癒やしの空間だ。
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