1.HARRY WINSTON(ハリー・ウィンストン)
プロジェクト Z16
特殊合金のザリウムを用いた「プロジェクト Z」シリーズの第16作目。センターから伸びるポインターデイトに加え、シンメトリーに配した曜日と月のカレンダー機構をオープンワークの3Dダイヤルで透かした、シリーズ初のトリプルカレンダー機構を搭載。秒針は30秒のレトログラードで魅せる。
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2.TAG HEUER(タグ・ホイヤー)
タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ
「モナコ」は初代のモデルがそもそも青ダイヤル仕様を採っていた、生粋の“ブルーのスポーツウォッチ”だ。そのオリジナルのよさを活かしつつ、初めて取り入れた複雑なオープンワークダイヤルのデザインでスパイスを効かせた。ケースとサブシダリーダイヤルのスクエアなフォルムが、レトロな趣と独特の存在感をいっそう際立たせる。
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3.NORQAIN(ノルケイン)
インディペンデンス スケルトン
COSC認定のクロノメータームーブメントを搭載、しかも駆動する機構の重要部分をオープンワークで表側から透かしてみせるという、いかにも通好みな趣向を凝らした。オーシャンブルーカラーを用いた新作は、ダイヤモンドカットによるスケルトン仕様の時分針もラッカー仕上げのブルーで統一した。ミニッツトラックからフリンジに至るダイヤル外周のブルーが、クールな表情を引き立てる。
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時計の心臓部の鼓動を顕にするスケルトンダイヤルが人気を博して久しい。一つひとつの歯車が噛み合わさり駆動するメカニズムは、人々を惹きつけ魅了する。
この仕掛けは1990年代にトゥールビヨンで注目を集め、やがて複雑機構ではない時計にも広がる。高速で1秒間に数往復するホイールは、腕時計の新しいビジュアルとして定着。文字盤側からでないとわからない喜びが次々と発掘されていった。さらには“魅せる”ことを意識したムーブメントも設計されるようになる。
そんな目を惹くスケルトンウォッチだが、その存在感ゆえに“これみよがし”な印象を与えてしまうこともある。嫌味がなく、それでいて個性を主張する腕時計を求める人にお薦めしたいのが、ブルーを効かせたオープンワークダイヤルのスポーツウォッチである。
完全に肉抜きせずに機構のダイナミズムを見せるオープンワークが手元に確かな“違い”を生み出しつつ、ブルーが爽やかさを、スポーティな外装が逞しさを添えてくれる。この三位一体の魅力を引き出した先駆者には、ハリー・ウィンストンの「プロジェクト Z」が挙げられる。独自合金のザリウムを用いたユニークな連作は、大胆なブリッジを交錯させるオープンワークを特徴とし、オリジナルな作風を確立してきた。一方でタグ・ホイヤーの「モナコ」のように、定番モデルにオープンワークを施せば新たな景色が拓けることも証明された。世界的ジュエラーが牽引してきたスタイルが、いま花開こうとしている。
並木浩一
1961年、神奈川県生まれ。時計ジャーナリスト。雑誌編集長など歴任し、2012年より桐蔭横浜大学の教授に。新著に『ロレックスが買えない。』。
※この記事はPen 2024年1月号より再編集した記事です。