美しい緑と青の小鳥、オスとメスが混ざっていた…アマチュア鳥類学者が100年ぶりの大発見

  • 文:青葉やまと
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sbw18-Shutterstock ※画像はイメージです

コロンビアの農場で、ズグロミツドリ(頭黒蜜鳥)と呼ばれる小鳥の珍しい個体が写真に収められた。身体の片側が緑系のビリジアン、もう一方が青系のアクアブルーという、鮮やかな配色になっている。

休暇でコロンビアの農場を訪れていたアマチュア鳥類学者のジョン・ムリーリョ氏が、偶然に撮影したという。変わった配色に興味を惹かれてシャッターを切ったが、実はズグロミツドリは性別によって羽毛の色が変わる。このことから後に、右と左で異なる2つの性別を併せ持っていたことが判明した。

同じく休暇で訪れていたニュージーランド・オタゴ大学のハミッシュ・スペンサー特別教授らとの共著論文にまとめられ、鳥類学誌『ジャーナル・オブ・フィールド・オーニソロジー』12月号に掲載されている。

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くっきり分かれた2つのカラー、性別の境界はあいまいに

ズグロミツドリで雌雄同体が目撃されたのは1世紀以上ぶりであるため、重要な発見だと受け止められている。カナダのCTVニュースによると、オスとメスの羽毛を持つズグロミツドリが最後に記録されたのは、1914年のことだという。

スズメ目フウキンチョウ科のズグロミツドリは、体長約14cm。メキシコ南部からブラジル、コロンビア、トリニダードなどに生息する。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは絶滅の懸念が少ない「軽度懸念(Least Concern)」に分類されている。

通常のズグロミツドリでは、オスならばアクアブルー、メスならばビリジアンの色となる。今回の個体は、右半分がオスのカラー、左半分がメスのカラーとなり、体の中央でくっきりと色が分かれている。米科学ニュースサイトのエウレカ・アラートによると、今回の個体は写真に加えてビデオでも記録された。

論文を共著したスペンサー教授は、オタゴ大学によるプレスリリースで、「多くのバードウォッチャーは一生のうち、鳥の種類を問わず、両性具有の個体を見ることはないことでしょう」と述べ、幸運な発見だったと振り返る。

給餌場に集う鳥に交じって現れた

鮮やかなビリジアンとアクアブルーが同居する姿はユニークで、まるで2つの別々の鳥が融合したかのようでもある。

発見当時は、農場の空き地に新鮮な果物や砂糖水を用意し、給餌場に集まる鳥を観察していたという。そんななか、他の鳥に混じって繰り返しやってくるめずらしい配色の個体が観察された。

最初に発見されて以降も姿が確認され、2021年10月から2023年6月までのあいだ、断続的に飛来していた。約4~6週間ほど滞在しては、最大で8週間ほど姿を消すというパターンだった。

他のズグロミツドリと別段変わった行動はみられず、食事をし、さえずりといったように、ズグロミツドリとしてごく普通の活動をしていたようだ。もっとも、発見者のムリーリョ氏は、他の鳥が去るのを待ってから餌台に近づくという遠慮がちな性格がみられたとも述べている。

なお、科学技術関連のニュースを報じる米ポピュラーサイエンスは、この個体について求愛行動は観察されず、染色体を調べるための血液や組織サンプルも採取されなかったと報じている。そのため、繁殖能力の有無については確認されていない。

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過去には求愛を成功させた事例も

両性具有はこれまで、ハチやチョウ、クモなどの動物でも観察されている。鳥類でこれまでに発見された個体のなかには、交尾や繁殖が可能だったものもあるという。CTVニュースは、両性具有を持つ鳥として過去に、体の左側に卵巣があり、右側に精巣がある鳥や、その逆の事例などが確認されていると紹介している。こうした個体はオスまたはメスのどちらかに近い行動を取り、求愛、交尾、産卵などの行動も可能だったという。

スペンサー教授によると、雌と雄の両方の特徴を持つ個体は、鳥類の性の決定のメカニズムと性行動を理解するうえで重要だという。教授はまた、長期間の観察の結果、「この鳥が日々の暮らしをうまく生き抜いていることを示している」とも述べ、通常の個体と同じような生活を送ることができていると語った。

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オスとメスが混ざっていた美しい緑と青の小鳥。

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