オム プリッセ イッセイ ミヤケ、自分らしさを引き出すタイムレスな日常着

  • 写真:ヘンリー・ルートワイラー
  • 文:原田 環(カワイイファクトリー)

Share:

ジャケット2型、ベスト、Tシャツ、カーディガンなどのトップス8型、パンツ3型の計13型で構成され、シーズンを問わず、ブランドの定番品として展開される「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」の“BASICS(ベーシックス)”シリーズ。プリーツ目に沿って畳まれた細長い状態は、プリーツ加工を長持ちさせる方法のひとつ。

2013年のコレクションからスタートした「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」。誕生10周年を迎えた同ブランドは、いまも普遍的な美しさを追求し続けている。

“現代男性のための新しい日常着”として2013年11月にスタートした「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」が、今年で10周年を迎える。

軽くてシワにならず、洗濯もできる気軽さが世の男性たちはもちろん女性たちにも受け入れられ、あっという間に世界中に広がった。ブランドが始まって以来、一貫して変わらないものづくりの姿勢は、新しい衣服のかたちに向き合いながらも、常にタイムレスであることを大切にしている。  

---fadeinPager---

 身体と心にフィットする、新たな日常着へ

DMA-2.jpg
ベーシックスシリーズのジャケット。どんなアイテムにも合わせやすく、あらゆる場面で着用できる。素材特有の伸縮性や乾きやすさを兼ね備えている。¥60,500/オム プリッセ イッセイ ミヤケ(イッセイ ミヤケ)

「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」発想の元にあったのは、女性の日常着として定着していた「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ」だ。あらかじめ縫製された服のかたちに折り目を付けて、プリーツ加工を施すという画期的な技法により、ドレスやブラウスなどを生産するプロダクトとして1993年にブランド化された。同ブランドは、あくまでも女性服という位置付けだった。だが、生みの親である三宅一生は、ことあるごとに男性のためのプリーツ服もつくりたいと周囲に話していたという。しかし、「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ」の製法や生地をそのまま男性用に転用することはしなかった。なぜなら男性向けの日常着とするには、男性の日々のライフスタイルを考慮し、丈夫でフォーマル感もあり、やや厚みのある生地にするなど、さまざまな工夫や工程が必要だと考えたのだ。

DMA-3.jpg
ベーシックスシリーズのハイネック長袖Tシャツ。首元を折り返し、プリーツをかけることで、着用した際に生まれる立体的なフォルムが特徴だ。¥22,000/オム プリッセ イッセイ ミヤケ(イッセイ ミヤケ)

 三宅から難易度の高い課題を与えられた「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」のデザインチームは、当時を振り返りこう語る。

「最初はプリーツと男性服のイメージが結び付きませんでしたが、一生さんの発想を受けて可能性を感じ、そこからチームでプリーツの工程を見直すことから始めました」

彼らは素材づくりやプリーツ目の幅など、各工程で試行錯誤を繰り返し、プロトタイプの試作を続けた。三宅はこの新しい男性のための日常着を試すため、全身を使ってパフォーマンスを行う青森大学男子新体操部のコスチュームを制作。2013年7月、東京・国立代々木競技場第二体育館において彼らの公演が実現。「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」の初舞台だ。

---fadeinPager---

 知的で、完璧な装いができ、着る人を解放してくれる服

DMA-4.jpg
ベーシックスシリーズの半袖Tシャツ。ブランド発足当時から続けてきたシンプルなかたち。インナーとしてはもちろん、これ一枚でもクール。¥18,700/オム プリッセ イッセイ ミヤケ(イッセイ ミヤケ)

19年1月にはパリのポンピドゥーセンターにおいてプレゼンテーションが行われた。会場を埋め尽くす観客たちの前で、「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」を着た、表現力に優れたパフォーマーたちが躍動した。同ブランドの服はこれを機に、より一層世界中の人々に受け入れられていった。ブランドの愛用者は口々に語る。「実用性と完璧なデザインが融合している」「知的で完璧な装いができる」「着る人を解放してくれる」など。

DMA-5.jpg
ベーシックスシリーズのパンツ。プリーツ加工を部分的に緩めることで生まれた、テーパードが効いたシルエットが特徴。各トップスとマッチ。¥30,800/オム プリッセ イッセイ ミヤケ(イッセイ ミヤケ)

 ブランドの発表当時から変わらないベーシックスの各アイテムは組み合わせが自由なモジュールだ。これに10周年を記念した限定アイテムの13色(10年を記念した10色+定番の3色)を加えれば、着こなしは無限に広がるだろう。

現在は男性のみならず、幅広い層に受け入れられている「オム プリッセ イッセイ ミヤケ」。ブランドの10年とこれからについて、デザインチームはこう語る。

「この10年の間、私たちは普遍的な美しさや新たな日常着を追求し、ものづくりをしてきました。この先も変わらない姿勢で、人々が自由で軽やかでいられるように、着ることでその人らしさを引き出せる衣服を探求し、タイムレスで、ジェンダーレスなプロダクトとしての衣服をつくっていきます」

DMA-6.jpg
ブランド誕生10周年を記念して登場したのが、DECADE(ディケード)、DECADE SWEATER(ディケード セーター)という2シリーズ。ディケードは定番の長袖Tシャツ(上写真)やパンツとジャケットを13色の豊富なバリエーションで展開。ディケード セーターは背面に編み地で表現したブランドロゴをあしらったクルーネックセーター。写真の白い紙は、プリーツ加工を施す際に生地を上下から挟むもの。ディケードの長袖Tシャツ¥20,900/オム プリッセ イッセイ ミヤケ(イッセイ ミヤケ)


●ヘンリー・ルートワイラー 
Henry Leutwyler

写真家。1961年スイス生まれ。85年、フランス・パリに移住し写真家ジル・タピのもとで修業。95年、ニューヨークに拠点を移す。ミシェル・オバマ、ジュリア・ロバーツ、マーティン・スコセッシなどのポートレートを撮影。2010年から出版社シュタイデルを営む、ゲルハルト・シュタイデルとの協業を開始。同社から10冊の作品を出版。なかでもジャニス・ジョプリンのギターやジャック・ルビーの拳銃などを撮影した写真集『Document』(2016)が大きな話題を呼んだ。


HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKE
10 YEARS OF DESIGN AND MAKING

ヘンリー・ルートワイラーが撮り下ろした写真を軸に、オム プリッセ イッセイ ミヤケの衣服や道具を紹介する特別展示。衣服をプロダクトとして捉え、ものづくりの姿勢とその背景を写真家の視点で切り取っている。

会期:~2024年1月28日(日) 
会場:ISSEY MIYAKE GINZA | CUBE
東京都中央区銀座4-4-5
TEL:03-3566-5225 
開場時間:11時~20時 無休


会期:~2024年1月25日(木) 
会場:ISSEY MIYAKE SEMBA | CREATION SPACE 大阪府大阪市中央区南船場4-11-28
TEL:06-6251-8887 
開場時間:11時~20時 無休

●イッセイ ミヤケ TEL:03-5454-1705 www.isseymiyake.com