【東京クルマ日記〜いっそこのままクルマれたい〜】第178回“「飾りじゃないのよ。4ドアは」でオーラ全開、黄金期のリアル・イタリアンホットハッチを堪能”

  • 写真&文:青木雄介

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デザインはジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザイン。黄色はジアラの専用色で、220台しか生産されなかった。

イタリア・トリノを本拠地とする古豪のメーカー、ランチア。世界ラリー選手権(WRC)と縁が深く、1992年にデルタHFインテグラーレでマニュファクチャラーズタイトル6連覇という偉業を成し遂げ、いまだその記録は破られていない。

この時代はグループAと呼ばれる車両で戦われ、トヨタやマツダ、三菱、スバルといった日本メーカーも多く参加。この時代こそ黄金期とする、ラリーファンも多い。特徴はそれまでのグループBより改造範囲が狭くなり、ホモロゲーションモデルが数多く発売されたこと。

ランチアが連覇した後は三菱、スバルが参戦し、ランサーエボリューション、インプレッサなどがWRカーとして熾烈なバトルを繰り広げ、数々の名ホモロゲーションモデルを輩出した。

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アルカンターラで仕上げられた品のいいコクピット。ステアリングも特別なものが用意された。

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さて目の前にあるのはデルタHFインテグラーレ・エヴォルツィオーネⅡの限定モデル「ジアラ」。ランチアがWRCを撤退した直後のモデルであり、参戦車両のエヴォルツィオーネⅠとの違いは少ない。エンジンをかけると驚くほど静かで、シフトアップするとウエストゲートバルブが気炎をはく。

アクセルは非常にレスポンスがよくて、しっかり上まで回してナンボのエンジン。メーターのリミットは9000回転で、3000回転付近でターボがハミングしはじめ「もっと回せ」とアピールする。それでもクルマは期待していたような武闘派ではなく、大人のホットハッチ。ヒップホップでいえばバトルDJよろしくゴリゴリのターンテーブリストではなく、1990年代の匂いを充満させたメロウな職人プロデューサー、ハイテックがフロアに現れたって感じですよ(笑)。期待とは裏腹。でもいい。いやめちゃくちゃいいんだ……

ボディの剛性も十分だし、なにより足回りがいいのね。「飾りじゃないのよ。4ドアは」って具合に(笑)、乗り心地が素晴らしく、足回りブッシュをすべて換装したばかりのような弾力があってメンテナンスのよさが際立っている。うん。感覚は90年代メイドのホットハッチそのものなのね。

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ギャレット製ターボを搭載し、燃料噴射はシーケンシャル式に変更された。

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オリジナルのよさは、この足回りの絶妙な快適さを真ん中にしつつも愉しく回せるターボのコンパクトという、いかにもイタリアのスポーツカーマニアが好みそうなホットハッチだったはず。当時交換された90年代的なアルミの削りだしのシフトノブを握りしめながら思い直す。

「我こそはWRCの歴史において、グループA規則を愛する者。タイトル6連覇の偉業にかけて、デルタHFインテグラーレWRカーの再興を望むものなり」ってね(笑)。それは冗談だけど、アフターパーツはすべて我々が青春を過ごした時代の産物ですよ。

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トランクルームはラリーカーらしく、スペアタイヤが格納できる。

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自分のクルマもがっちり90年代のカスタムをほどこしているし、クルマ以外でもたとえば同年代は90年代を「“リアル”ヒップホップの時代」といってはばからない。この時代を体験した者にとって、それは細胞レベルに刻み込まれた真実なのね。

そんな時代を生きてこそ「これでよし」っていう強い肯定感を、この黄色いデルタに抱いた。うん。やっぱり最高です。

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可変式スポイラーを装着し、専用ホイールは16インチに拡大された。

ランチア・デルタ HF インテグラーレ・エヴォルツィオーネII ジアラ

サイズ(全長×全幅×全高):3900×1770×1360㎜
エンジン:直列4気筒ターボ
総排気量:1,995㏄
最高出力:215ps/5750rpm
最大トルク:314Nm/2500rpm
駆動方式:4WD(フロントエンジン4輪駆動)
車両価格:¥12,500,000
問い合わせ先/コーギーズ
TEL:03-3993-3760
https://corgys.com

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※この記事はPen 2023年8月号より再編集した記事です。