ケアとジェンダーを考える、現代アートを通して見えるものとは

  • 文:青野尚子(アートライター)

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現代アートを通して、ケアとジェンダーを考える

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本間メイ『Bodies in Overlooked Pain(見過ごされた痛みにある体)』2020年

健康な時は意識しない人も多いだろうけれど、人間は乳幼児、加齢、病気などさまざまな理由から「ケア」を必要とする生きものだ。水戸芸術館で開かれる『ケアリング/マザーフッド』展の「ケアリング」は「ケアをする行為」、「マザーフッド」は「母親である期間や状態」を意味する。ケアを担う人は男女どちらでもいいはずなのに、なぜか母性が期待されることへの疑問がこの題名の背景にある。

参加作家は若手からベテランまで幅広い。マーサ・ロスラーやミエレル・レーダーマン・ユケレスらは1960~70年代の第2波フェミニズムを受けて、「ケア」に関する行為を家庭内に押し込めてしまうことへの異議を唱えた。彼女たちの作品から半世紀が経っているけれど、この問題は少なくとも日本では解決されていない。21世紀に入ってケアの問題はより複雑になる。韓国出身のホン・ヨンインの作品は家庭や工場で、無償または低賃金で働く人々に目を向けたもの。88年フィリピン生まれのマリア・ファーラは「目に見えない静かな存在」として扱われてしまう移民労働者に光を当てる。「ケアする人」は社会の正当な構成員とは見なされず、不可視の存在となることが多い。ケア自体も同様に、公的な役割とは考えられていないのだ。

ケアの個人的な側面に着目した作家もいる。2005年から活動を始めたAHA!(Archive for HumanActivities/人類の営みのためのアーカイブ)は「かおりさん」の「育児日記」を通して個々人の記録と記憶を語り直す『わたしは思い出す』を巡回展示する。石内都は亡き母の遺品を撮った『mother’s』などを出品する。

会期中には書籍『わたしは思い出す』の読書会なども開催される。ジェンダーやケアの問題に注目が集まるいま、多くの人に感想を聞いてみたい展覧会だ。

『ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―』

開催期間:~5/7
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
TEL:029-227-8111
開館時間:10時~18時 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般¥900
www.arttowermito.or.jp

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※この記事はPen 2023年4月号より再編集した記事です。