トロワリビエール蒸留所／トロワリビエール ブラン

「僕のエナジードリンクなんです」。そう言ってラム酒「トロワリビエール ブラン」を氷が入ったパイントグラスに勢いよく注ぐ齊藤輝彦さん。2008年の開業以来、東京の自然派ワインブームを牽引してきたアヒルストアの店主だ。炭酸水を加えると、シュワシュワと弾ける音に呼応してかすかに甘い香りが立ちのぼり、こっくりした優しい甘みと爽快さが口の中に広がる。

「営業中は、この酒をちょっぴり入れてアルコール度数1.5％くらいまで炭酸水で割ったものを、水分補給としてちびちび飲みながら仕事をしています。もちろん仕事じゃない時はもっと濃くしますよ（笑）」

意外や意外。普段の自腹酒（じばらざけ）は、ナチュラルワインを推すと思いきや、プライベートでこよなく愛するのは、度数が高い蒸留酒だった。

「僕にとってワインは仕事ですし、ちゃんと向かい合って飲むものであり、誰かとともに嗜む酒です。以前はワインばかり飲んでいましたが、年齢的にも身体に負担がかかるケースも増えたので、いまはこのラムがちょうどいい。こういうゆる～く酔える優しい酒がいいんです」

店でも自宅でも、常に齊藤さんのそばには「トロワリビエール ブラン」があるが、この酒のおともに挙がったのがカセットテープで聴く音楽。ワインの醸造家兼インポーターとして世界的に活躍するフランソワ・デュマから譲り受けた、ギャズ・メイオールのカセットテープコレクションの数々である。ジャズやドゥ・ワップなどのルーツ・ミュージックが中心で、酒を飲む気分をさらに盛り上げてくれる。

「どこかゆるい雰囲気がある音なんですよ。この酒とゆるいもの同士、めちゃくちゃ最高。これがあればいつだってごきげんになれます」

齊藤さんはそう笑いながら、グラスに入った酒を再びぐっと飲み干した。

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ブリティッシュ・ブルースの父、ジョン・メイオールの長男でDJのギャズ・メイオールが趣味でつくったカセットテープコレクション。アヒルストアでも流れている。