なにをやっても続かない人へ、実践に基づく目から鱗の幸福論

  • 文:瀧 晴巳(フリーライター)

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【Penが選んだ、今月の読むべき1冊】
『継続するコツ』

 

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坂口恭平 著 祥伝社 ¥1,760

かつては好きだったけれど、いまはもうやめてしまったことが誰にでもあるはずだ。あんなに好きだったのに、どうしてやめてしまったのか。才能がないから? お金にならないから? 才能がなくたって、お金にならなくたって、別にいいじゃないかと坂口恭平は言う。大事なのはそれをやっている時、楽しいかどうか。目から鱗の直球の言葉に、胸がすく思いがする。1年が一日一日の積み重ねなら、楽しいことを一日一日積み重ねていけば幸福な人生になるはず。『継続するコツ』とは、すなわち坂口恭平流の幸福論なのだ。

頭で考えた理屈じゃない。長年、躁鬱の波と格闘しながら、この人自身が実践してきた体験に基づいているから説得力がある。2004年に路上生活者の住居を写真集にまとめた『0円ハウス』を刊行。18年で40冊以上の本を書き続けてきた。毎日1枚のパステル画も描き続けているし、音楽もつくる。畑も始めて3年になる。儲かるからじゃない。続くのは楽しいから、うまくいかなくてもやめないからだ。どんなことでも続けていると慣れてくる。慣れると、人間は自己批判的になる。自分には才能がないと嘆き、やめたくなってくる。そこをどう乗り越えるか。継続名人は言う。傑作は天才に任せて、駄作をつくり続ければいい。無能だから続けるんだ。成功したいからじゃない。自分の人生を、ひたすらやりたいことで埋めていくために。

坂口恭平は生まれながらのアジテーターであり、生粋の自由人なんだと思う。読んでいると、知らず知らずのうちに縛られていた世間的な価値観から解き放たれ、なんでもできそうな気がしてくる。お金を稼がなくちゃ、成功しなくちゃ幸せじゃない? 本当にそうだろうか。自分にとっての本当の幸せについて、しっかり考えてみたくなる。

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※この記事はPen 2023年3号より再編集した記事です。

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『継続するコツ』

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