南沙良で“完全復活”。名作CM「JR SKISKI」32年の歴史を振り返る

  • 文:泊貴洋

Share:

327568624_906221627171278_379889692616799554_n.jpg
YouTube「JR東日本公式チャンネル」より

目の前に広がる雪景色を眺める南紗良。思い出されるのは、数年前のマスク着用での卒業式。「『落ち着いたら、みんなでどっか行こう』って言ってから、だいぶ経ったね」と心の声がこだましたとき、突然、雪のかたまりが頭にぶつかる。犯人は高校時代の仲間たち。雪合戦やスキーを楽しむ姿に、「冬を取り戻すんだ。」というコピーが重なる…。冬の風物詩となっている「JR SKISKI」のCMが、“完全復活”した。

---fadeinPager---

平成元年、バブル期からスタート

JR SKISKIは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が1991年に始めたツアーキャンペーン。映画『私をスキーに連れてって』(87年)が巻き起こしたスキーブームを受け、スノーレジャーのさらなる需要喚起と新幹線の利用促進を目的にスタートした。

当初のメインターゲットは、10代後半から20代前半の若者。第1弾では「ZOO」を起用してスキー場で歌い踊るCMを展開し、楽曲の『Choo Choo TRAIN』とともに大ヒットした。その後、95年に江角マキコと竹野内豊、96年に青山恭子と田辺誠一を起用。音楽は小室哲哉と組み、globeの『DEPARTURS』『Can’t Stop Fallin’ Love』を相次いでヒットさせた。

現在の布石になったのが、98年の吉川ひなのの起用だ。当時10代の吉川をヒロインにゲレンデでの恋愛模様を描くと、吉川がブレイク。GLAYによるCMソング『Winter,again』は日本レコード大賞を受賞した。

---fadeinPager---

2010年代から「女優の登竜門」として定着

2000年代はスキーブームが徐々に落ち着き規模を縮小。12年、震災後の東北・東日本エリアを元気付けようとスタートしたのが「ヒロインシリーズ」だ。 

最初のヒロインに抜てきされたのは、女優業を始めたばかりだった本田翼。ゲレンデでの恋の予感を描いたストーリーや、GReeeeNによる『雪の音』などが本田の輝きを増幅させて大ヒットした。以降、川口春奈×SEKAI NO OWARI『スノーマジックファンタジー』、広瀬すず×back number『ヒロイン』、桜井日奈子×[Alexandros]『SNOW SOUND』など女優のブレイクと楽曲ヒットを生み続け、人気シリーズとなった。

20年以降は、コロナ禍で大々的にツアーを訴求できなくなり、スキー経験者の繋ぎ留めに注力。過去のコピーを振り返るポスターを掲出したり、本田を再起用したCMを流したりした。そして行動制限のない冬を迎えた今、改めて若者のエントリー層を狙ったのが、「冬を取り戻すんだ。」篇だ。原点回帰と言えるが、昨今は恋愛より仲間と楽しみたいという若者が多いという分析から、男女4人ではしゃぐ姿が描かれている。

---fadeinPager---

名コピーやポスターも手掛けるクリエイターは?

スクリーンショット 2023-02-19 12.20.37.png
YouTube「JR東日本公式チャンネル」より

ヒロインシリーズを制作してきたのは、ジェイアール東日本企画のクリエイティブディレクター・山口広輝氏。コピーライターとして「青春は、純白だ。」「ぜんぶ雪のせいだ。」「この雪は消えない。」といった名コピーも手掛けてきた。山口氏と二人三脚で歩いてきたアートディレクターは、同社の武山範洋氏。武山氏はCM映像のクオリティを高める一方、インパクト大の駅貼りポスターでもシリーズのファンを増やしてきた。2人はJR関連の広告を手掛けながら、doda、Osaka Metroなど外部の広告でも活躍する。 

新たなヒロインに選んだ南沙良は、21年のTBS日曜劇場『ドラゴン桜』、22年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などで脚光を浴びた20歳。楽曲は、WurtSの『メルト』。WurtSは、21年、TikTokに投稿した『分かってないよ』をきっかけに躍進したアーティストだ。

---fadeinPager---

コロナ禍の受験生に寄り添って企画

今年目を引いたのは、スマートフォンで撮影された縦型映像。縦型での展開は、18年の松本穂香起用時以来となる。当時はウェブ展開のみでZ世代にターゲットを絞っていたが、今回は幅広い層に広めようと、テレビにも出稿した。

SNSの声を見ると、「南沙良が可愛すぎる」といったコメントや、「コロナ直撃世代に向けた言葉がいい」などコピーに対する声が多い。縦型映像については「WurtsだからCMも縦になってるのまじセンスある」と好意的な意見がある一方、「長年、横画面に慣れていますから縦動画は見づらい」という声も。世代感でのギャップが感じられる。 

12年目に入ったヒロインシリーズだが、実は男性俳優も豪華。過去には窪田正孝、村上虹郎、北村匠海、宮沢氷魚らが出演していた。CMをDVDに、楽曲をCDに収めた『JR SKISKI 30thAnniversary COLLECTION』(エイベックス)で振り返ってみるのも楽しいだろう。

---fadeinPager---

JR SKISKI「冬を取り戻すんだ。」篇(30秒)

---fadeinPager---

JR SKISKI チャレンジ動画「#スノーエンジェル」篇(15秒)

---fadeinPager---

メイキング映像(2分37秒)

関連記事