古典から近現代へ進化を続ける、フィンランドの織物アート「リュイユ」とは

  • 文:猪飼尚司(デザインジャーナリスト)
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ウフラ=ベアタ・シンベリ=アールストロムの作品『採れたての作物』(1972年)。 photo: katja Hagelstan

フランスのゴブランや日本の紬など、世界の国々にはそれぞれ独自の織物文化が存在する。北欧のフィンランドに15世紀以前から伝わり、 近代以降に独自の進化を遂げた「リュイユ」を紹介する展覧会が、京都国立近代美術館で始まった。

元は毛足の長い織物で、寝具としても活用されていたリュイユだが、時代や暮らしの変化とともに、サイズや仕様が少しずつ変化。1900年パリ万博への出展を機に、より芸術的アプローチによるバリエーション豊かな作品づくりが始まる。

50年代に入ると、イタリアの国際美術展、ミラノ・トリエンナーレで受賞を重ねるなど国際的な評価が高まり、さらに多様で先鋭的な表現に進化していく。

こうした近代のリュイユに特徴として見られるのが、複雑な色彩構成による絵画的なアプローチだ。一般的な伝統織物の多くは、左右対称の幾何学パターンやリピート模様を基本にしていることが多いが、近現代のリュイユは画家が描いた水彩画などをもとに抽象的なモチーフを展開。ほんの3、4色しか使っていないように見える作品も、実際には色調が微細に異なる70色以上の織り糸を掛け合わせ、陰影や奥行きを醸し出す豊かな表現に仕上げている。

伝統の織物をさらに発展させるために尽力したのが、1879年設立のフィンランド手工芸友の会だ。工業化の波にのまれ消えていく、昔ながらのていねいな技術や模様を守るために、友の会では積極的に気鋭のアーティストやデザイナーと協力。時代と見合ったリュイユの存在を模索し続けてきた。

本展では、トゥオマス・ソパネン・コレクションから、近現代の流れを示すリュイユ作品47点を厳選。フィンランドデザインを新しい視点から眺める企画展として注目を集めている。

『リュイユ―フィンランドのテキスタイル:トゥオマス・ソパネン・コレクション』

開催期間:1/28~ 4/16
会場:京都国立近代美術館
開館時間:10時~18時(2/3、2/10、4/14を除く金曜は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般¥430
www.momak.go.jp

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※この記事はPen 2023年3月号より再編集した記事です。