役所広司、吉沢亮出演の映画『ファミリア』、在日ブラジル人との交流を描いた家族の物語

  • 文:韓光勲
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©2022「ファミリア」製作委員会

役所広司主演の映画『ファミリア』が昨日6日、公開された。吉沢亮やMIYAVIのほか、演技に初挑戦の在日ブラジル人俳優たちが奮闘している。最新映画の見どころをお伝えしたい。

主人公は陶器職人の神谷誠治(役所広司)。山里に暮らし、ひとりで昔ながらの焼きものづくりをしている。妻を早くに亡くし、息子の学(吉沢亮)はアルジェリアで働いている。学は現地で出会ったナディア(アリまらい果)を連れて一時帰国した。

そんな中、突然、在日ブラジル人、マルコス(サガエルカス)が誠治の家に逃げ込んでくる。マルコスは在日ブラジル人の集住する団地に住んでいたが、半グレ集団に追われ、怪我を負わされていた。誠治らはマルコスをかくまい、怪我の手当てをしてあげる。後日、マルコスの恋人エリカ(ワケドファジレ)がお礼に訪れ、一家をブラジル人たちのパーティに招待する。誠治は戸惑いつつも、家族思いなブラジル人たちと交流を深めるのだった。

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©2022「ファミリア」製作委員会

マルコスは5歳で家族と来日した。家族は「日本で3年働けば家が建つ」という「ジャパニーズ・ドリーム」を信じて来日したが、現実は甘くなかった。父親はリーマン・ショックによる不景気で会社をクビにされ、命を絶った。このエピソードは実話に基づいているというから驚きだ。脚本を担当したいながききよたかが、取材の中で聞いた話を盛り込んだのだという。

榎本海斗(MIYAVI)率いる半グレグループに目を付けられたマルコスは、血みどろの抗争に巻き込まれていく。追いつめられたマルコスを助けるため、誠治はある行動に出る――。

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日本には約20万人のブラジル人が住んでいる(2021年6月末現在)。在日外国人のなかでは5番目に多い数だ。ブラジルには約200万人の日系人がいる。

日系ブラジル人は1980年代後半から日本に出稼ぎに来るようになり、1990年に入管法が改正されると、多くの人が「ジャパニーズ・ドリーム」を求めてやってきた。1990年には5万人台だったが、1995年に17万人台となり、ピークの2007年末には約31万人に。2008年にリーマン・ショックが起こると、非正規雇用の在日ブラジル人は仕事を失った。日本政府は2009年度に帰国支援事業を行ない、1年間で2万人余りのブラジル人を帰国させた。まさに、在日ブラジル人は「雇用の調整弁」となったのである。

現在、在日ブラジル人が最も多く住むのは愛知県で、約5万9500人が暮らしている。続く静岡県では3万8000人が暮らす。

しかし、在日ブラジル人の苦労はどれほど知られているだろうか。本作はそんな観客の「無知」を鋭くつく。

ブラジルの公用語はポルトガル語で、文科省の調査によると、約1万2000人のポルトガル語を母語とする小・中学生が日本語指導が必要な状況だという。つまり、約1万2000人の在日ブラジル人の子どもたちは日本語ができず、苦労していることになるのだ。

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©2022「ファミリア」製作委員会

マルコスの恋人エリカは「日本の小学校に入っても日本語分からない。高校行けないから中卒」と語る。マルコスは「日本人にもなれない、ブラジル人でもない、俺らってなんなんだよ!」と叫ぶ。その悲しい叫びは胸を打つ。

本作は驚くような展開を見せるが、どれも実話が基になっている。本作で描かれる在日ブラジル人の現状は、たしかに日本で起こっていることなのだ。役所広司の演技は「さすが」の一言だが、マルコス役のサガエルカスが素晴らしい。マルコスの姿には、たしかな希望が垣間見えた。当事者役を体当たりで演じた在日ブラジル人たちに拍手を送りたい。

『ファミリア』

監督/成島出
出演/役所広司、吉沢亮、サガエルカス ワケドファジレほか 2023年 日本映画
121分 1月6日より新宿ピカデリーほかにて全国公開中。
https://familiar-movie.jp/
配給:キノフィルムズ

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