建築、アート、デザイン、自然環境との調和。2019 年に中軽井沢にオープンした「ししいわハウス№1」は、ラグジュアリー・ホテルを新解釈した新タイプのリトリートとして注目を集めた。プリツカー賞受賞者である世界的な建築家、坂茂によって設計された木造2階建ての建物は、木々の間を縫うような曲線が印象的で、周囲の自然に見事に溶け込んでいる。


館内には、現代アートのコレクションが展示されているが、その中心となっているのが、「具体美術」だ。ししいわハウス創設者であるディレクターのフェイ・ホアンは、吉原治良が提唱した美術家集団「具体」の「いままでにないものをつくる」という精神がししいわハウスのコンセプトに重なるという。吉原をはじめ元永定正、鷲見康夫といった具体の作家をはじめ、ギュンター・フォルグ、ザオ・ウーキー、杉本博司、キム・チャンギョルといった作家の厳選された現代アート作品がパブリックスペースや客室で見ることができる。

そして、2022年夏にオープンした2棟目の「ししいわハウス№2」は、大きなフォレストテラスが印象的な木造2階建のホテルである。No.1同様に坂の設計によるものだが、“自然と一体化”というコンセプトを踏襲しながらも、新しい解釈によってまったく新しい空間が登場した。


1階は12の客室、2階は「ザ・レストラン」とオープンテラス、ザ・ワイン&ウイスキー・バー」「シガー・ルーム」からなる。10客室が3つのクラスターに分かれているが、クラスターごとに独自のリビングルームのある「ししいわハウス№1」と比べると、より開かれたカジュアルな印象である。フェイ・ホアンは、この「ししいわハウス№2」は、若い世代の客層を意識しているという。「展示する作品も、それに合わせて選んでいます」とホワン。


いまはInstagramなどのソーシャルメディアで誰もが写真を投稿することが当たり前になっています。しかしかつてはフィルムで長い時間をかけて写真を撮っていました。デジタル世代の人々にもこの場所で50年代から70年代の写真家たちの仕事に触れてもらえたら嬉しいですね」
ロバート・フランク、アーロン・シスキンド、ルイス・ファウラーなど世界の名だたる写真家のオリジナルプリントをはじめとする貴重なコレクションは、それだけでもここを尋ねる価値があると言えるだろう。「ザ・レストラン」は宿泊者以外でも利用できるので、食事を兼ねて訪れてみるのもいいかもしれない。

また、ししいわハウスプロジェクトは、既存の「№1」「№2」に隣接した場所に、西沢立衛設計による「№3」の建設が始まっている。展示されるアート・コレクションは、建物が出来上がってから決めるというが、こちらの完成にも期待したい。




ししいわハウス
長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-768
TEL:0267-31-6658
Eメール:reservation@shishiiwahouse.com
<ホテル>
一泊 ¥50,600〜(税・サ込み/朝食2名分付)
<ザ・レストラン>
ランチ/12時〜14時(13時30分 L.O. 予約不要)
ディナー/18時〜19時30分、 20時〜21時30の二部制(要予約)
※詳細や予約については下記の公式サイトからお問い合わせください。
ししいわハウス 公式サイト:www.shishiiwahouse.jp