オーデマ ピゲが約四半世紀ぶりの新コレクションとして2019年に発表した「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」は、中空のラグと八角形のミドルケースが視覚を刺激する独創的なスタイルが特長となっている。最先端の工業技術を駆使したスーパーコンテンポラリーとも表現できるケースフォルムに対して、伝統的でオーソドックスなダイヤルを組み合わせることでラグジュアリーな魅力を醸成してきたが、2022年は新作「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スターホイール」が登場。3枚のディスクで時・分を表示するユニークな複雑機構の採用によって、ケースだけでなくダイヤルデザインまでアバンギャルドで統一されたといえるかもしれない。
この新作は、ダイヤル上部に120度の扇形に開いた60分目盛りを配置。3枚の時間表示ディスクが回転・自転しながら、三角マークで分を指し示す仕組みだ。3枚のディスクを載せているセントラルローターは3時間で1回転。ディスクのほうも自転しながら60分目盛りの左端に向けて移動。00に到達すると次の時間と分表示を開始する。下写真では10時22分。そして唯一の針表示である秒針が38秒を指している。

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「さまよう」時間表示がコンテンポラリーに変身
針を使わないで時間を表示する仕組み自体は新しいものではなく、起源は17世紀まで遡り、ヴァガボンドアワーまたはワンダリングアワーと呼ばれてきた。どちらも「さまよう、放浪する」という意味。18世紀には著名人の特別なステイタスを象徴する複雑機構として懐中時計に搭載されていたが、20世紀初頭には姿を消してしまった。そんなヴァガボンドアワーをオーデマ ピゲの時計師が1989年に再発見。1991年から2003年までに、およそ30モデルが製作されている。当時のモデルはスケルトンまたは時間表示ディスクが透明なサファイアクリスタル製であり、その中央に見える大きな星形の歯車から「スターホイール」とネーミングされたようだ。このメカニズムを強調するためか、秒針もなかった。
このことから分かるように、新作の「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スターホイール」は、伝説的な複雑機構を懐古的に復活させたのではなく、あたかも新開発の機構のように感じさせる現代的なアレンジが施されている。3枚の時間表示ディスクは緩やかな曲面で造形されたアルミニウム製。ブラックPVD加工の上にオパーリンを被せてマイクロビーズで仕上げたベースに、シャープな細身の数字はホワイトのトランスファー印刷。そのほかの目盛りもすべてブラックベースにホワイトで統一されているので、小さな数字も読み取りやすい。

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宇宙を想わせる、煌めくダイヤル
そして、このモデルのハイライトともいえるのがダイヤルベースに使用されているブルーアヴェンチュリンだ。宇宙の星々の煌めきを想わせる中で、3枚の時間ディスクが惑星のように回転・自転する。ケースは18KWGで、八角形のミドルケースとリューズはブラックセラミック製。ストラップはテキスタイル調のブラックラバー加工なので、複数の素材感を楽しめるのも見逃せない魅力といえるだろう。
90年代の「スターホイール」はクオーツショック後のスイス時計復興期だったことから、機械式特有のメカと、アラベスク模様などのギヨーシェ彫りによってクラシカルを強調していたと思われる。それに対して今回の新作はユニークなケース構造に呼応するかのように、モダンな感覚でデザインされている。モデル名の「CODE 11.59」とは、新しい1日が始まる1分前の期待と緊張感を意味しているが、まさに古典に敬意を表しながらも、新時代に向けた革新的な息吹を感じさせるコンプリケーションといえるだろう。

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動画で見る「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ スターホイール」
問い合わせ先 / オーデマ ピゲ ジャパン TEL:03-6830-0000
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