イタリアの老舗ブランド、セラピアン×アズチェナのコラボチェアが誕生。両者に共通するクリエイティブへの姿勢とは【インタビュー】

  • 写真:溝口 拓
  • 文:小暮昌弘(LOST & FOUND)

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イタリアを代表する2つの老舗ブランド、アズチェナとセラピアンがコラボレーションを果たし、スペシャルなチェアを発表した。

セラピアンはイタリア・ミラノで1928年に創業された歴史あるラグジュアリーブランド。イタリアメイドにこだわり、手仕事によるクラフツマンシップにのっとり多くの独創的なレザーグッズを生み出してきた。一方、イタリアの有名建築家ルイジ・カッチャ・ドミニオーニ、イグナツィオ・ガルデッラ、コラード・コラーディ・デラックアが1947年に設立したのがアズチェナ。彼らが設計した建造物に採用してきた数々のコレクションがB&B Italiaによって再現され、世界中で高い評価を受けている。

今回、セラピアンの3代目であり、ビスポーク部門などの責任者を務めるジョバンニ・ノダリ・セラピアンが来日。プロジェクトの詳細、作品に対する特別な思いを訊いた。

時を同じくして生まれた、2つのプロダクツを再構築

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セラピアンとアズチェナというイタリアを代表する2つの老舗ブランド同士がコラボレーションした作品のベースになったのが、「カティリナ チェア」と呼ばれるアズチェナを代表する椅子だ。この椅子はカッチャ・ドミニオーニが1953年にミラノで開催された第11回トリエンナーレで発表したもので、繊細な馬蹄形のフレームを特徴とする名品だ。「家庭用のキングチェア」として考案されたこの椅子は、座る人に威厳さえ与えてくれる。

「アズチェナはイタリアではとても知名度があり、イタリア人にとっては馴染みが深いブランドでもあります。私の家ではドアノブや部屋のスイッチも全部アズチェナのものです。今回のコラボレーションのプロジェクトはB&B Italiaの友人とのディナーで始まりました。そこでの会話でセラピアンのアイコンとも言える手法、モザイコが生まれた年がアズチェナ創設と同じ年であることを知ったのです。53年にカティリナ チェアがつくられた時も、わずか1kmも離れていないところで私の曽祖父がモザイコをつくっていたのです。時を同じくして生まれたプロダクツを現代において再解釈してみてはどうかと話し合い、そこから今回のプロジェクトがスタートしました」

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セラピアンとアズチェナ、両者の共通点

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「モザイコ」とはセラピアンの創業者ステファノ・セラピアンが1947年に生み出した同メゾンを象徴するデザイン。やわらかなナッパレザーを使ってモザイクのような複雑な編み込み加工をすることから「モザイコ(MOSAICO)」と名付けられた。今回の「カティリナ チェア」ではクッションの側面に職人が手作業で編み込んだ「モザイコ」が施され、両社のデザインが一体化し、名椅子に新たな息吹を与えることに成功している。しかしイタリアの老舗同士とはいえ、レザーアイテムとインテリアという異業種のコラボレーションは順調に進んだのだろうか。

「これは最近のセラピアンが重視しているビスポークサービスにつながるところでもあります。私たちのビスポークサービスは既存のモデルをカスタムすることもできますが、ゼロからデザインを始めることがよくあります。しかも、いつも製作している鞄に限らず、家具、クルマの内装などいろいろなものを手がけます。私たちにはその知識と経験があるのです。カティリナ チェアは、美しさはもちろんですが、機能を大事にするということを体現した名品です。今回はその椅子にモザイコを施したわけですが、実はそれほど難しいことではありませんでした。たぶんそれは2つのブランドが同じ言語で話ができたからではないでしょうか。イタリア語という意味ではありませんよ(笑)。クリエイティビティの言語が共通していたのです。初めてお互いの職人同士が話し合うミーティングがあったのですが、話がとてもスムーズに進みました。まるで日々、机を並べて働いてきたかのように話が弾んで、一緒に椅子を仕上げることができました」

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ジョバンニによれば、セラピアンは創業以来「手でつくる」ことを信条としてきたという。工場にある機械といえば、革をカットする機械と縫製の機械だけ。しかもこれらはサンプルの製作にしか使われず、市場に出まわる製品はすべて職人が手作業でつくっていく。「実はアズチェナもセラピアンと同じようなアプローチを取るブランドです」と語る。熟練の職人たちが一点一点、椅子、ソファ、テーブルといったプロダクツをつくり上げている。お互い、それぞれで積み重ねたノウハウと経験値が今回の作品に活かされているというわけだ。

「もうひとつ、セラピアンとアズチェナの両者が共通しているのはクラフト、手工芸的なモノづくりに対する考え方ではないでしょうか。デザインというものはクラフトから生まれると私たちは考えています。単なるファッションとは違うのです。ファッションはデザインありきで、クラフトを変えていくというアプローチを取ることが多いと思います。(それが)ファッションとラグジュアリーの大きな違いではないでしょうか。いかにクラフトを重視するか。クラフトあってのプロダクツ、クラフトあってのデザイン。そういった考え方を(2つのブランドが)共通してもっていたから、この椅子が生まれたと考えています」

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ラグジュアリーブランドの飽くなき挑戦

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「モザイコ」を編めるようになるのには最低でも3年はかかるという。革は生きているようなもの。その素材を熟知しなければ「モザイコ」をまっすぐに編むことさえできない。ミラノのアトリエには「マスター・アルチザン」と呼ばれる革職人がいて職人の育成に努めているが、彼女を含めても4人しか「モザイコ」を編むことはできない。当然生産量も限られ、わずかな人にしか「モザイコ」を手渡すことはできない。「それこそが本当の意味でのラグジュアリーではないか」とジョバンニは思いを語る。

「今回のプロジェクトでいちばん難しかったことがあります。それはカティリナ チェアをつくったカッチャ・ドミニオーニ、モザイコを考案した私の曽祖父のステファノ、彼らが再解釈を加えたこの椅子を見てはたして気に入ってくれるだろうか? あるいは称賛してくれるだろうか? 私は常にそれを考えながらプロジェクトを進めました。私にとっては、それがいちばんのチャレンジでした」

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両者のブランドを支えてきた先達をリスペクトして完成した、スペシャルな「カティリナ チェア」。さまざまなつくり手の思いが込められた逸品ではないだろうか。

アズチェナ×セラピアン コラボレーション展示イベント

開催期間:〜2022年12月20日(火)
※会期後もB&B Italia Tokyoにてオーダー可能です。
場所:B&B Italia Tokyo
東京都港区北青山2-5-8 青山OM-SQUARE 1F
営業時間:11時〜18時
定休日:水(祝日を除く)

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