大竹伸朗が半世紀を超えて燃やし続ける、創作のエネルギーの源泉とは?

  • 文:住吉智恵(アートプロデューサー)

Share:

半世紀を超えて燃やし続ける、創作のエネルギーの源泉とは?

1_《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》.jpg
大竹伸朗『 モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像』2012年 Commissioned by dOCUMENTA(13) photo: Yamamoto Masahito

2006年に東京都現代美術館で開催された大竹伸朗の『全景1955-2006』展は、文字通りその全活動歴を初めて知った若年層をも虜にし、閉幕が近づくほど煽られる異様な熱気を帯びた展覧会だった。16年ぶりとなる大規模な本展では、震災とパンデミックを経て、さらに旺盛に蓄積されてきた大竹の軌跡を、時系列でなく7つのテーマ(「自/他」「記憶」「時間」「移行」「夢/網膜」「層」「音」)のもとに展開する。

とはいえ、大竹はコンセプチュアルな構造、ましてやアートマーケットや美術史のコンテクストを視野に入れた戦略をもとに制作する作家ではない。この雑多で玉石混交の世界に転がった「既にそこにあるもの」、作家の関心を強く惹きつける「あらゆる素材、あらゆるイメージ、あらゆる方法」(ともに大竹)がインスピレーションの源泉なのだ。半世紀近くにおよぶ創作活動を振り返り、意図せずそこに一貫して流れてきた主題や概念を端的な言葉に置き換えたのがこの7つのキーワードである。

一方、関東での公開を切望されていた大作や本展のための新作が開帳されることにも注目したい。たとえば12年、ドイツ・カッセルで開催される国際展、ドクメンタに出展された小屋の大作が再構成され展示される。トレーラーや舟、ネオンサイン、ギター、映像、巨大なスクラップブックといった「もの」と「音」が凝縮されたインスタレーションは、大竹の世界を圧倒的なボリュームと熱量で象徴する。

また、19年以降取り組む「残景」シリーズ最新作の公開に合わせ、宇和島のスタジオでの制作現場に密着したドキュメンタリー映像が上映される。独特の洞察と情緒とユーモアに富んだコメントから、半世紀以上たやすことなく創作欲という燠火を焚き続ける大竹の思考を追体験する貴重な機会となるはずだ。

『大竹伸朗展』

開催期間:11/1~2023年2/5
会場:東京国立近代美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10時~17時(金、土は20時まで) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(1/2、9は開館)、12/28~1/1、10
料金:一般¥1,500
www.takeninagawa.com/ohtakeshinroten
※23年5/3~7/2まで愛媛県美術館、8/5~9/18(仮)まで富山県美術館に巡回予定

関連記事

※この記事はPen 2022年12月号より再編集した記事です。