孤高に戦い続けた芸術家・岡本太郎の人生を振り返る、没後、最大規模の回顧展が開催

  • 文:河内タカ(アートライター)
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岡本太郎の芸術家人生を振り返る、没後、最大規模の回顧展が開催

1_岡本太郎「森の掟」(通常)1950年 川崎市岡本太郎美術館蔵 Ⓒ岡本太郎記念現代芸術振興財団.jpg
岡本太郎『森の掟』1950年、川崎市岡本太郎美術館蔵。緑色の森の中で、ジッパーのようなものが付いた赤い怪物が暴れている。本作からは対立する要素をひとつの画面に共存させるという、岡本が提唱してきた「対極主義」が見て取れる。Ⓒ岡本太郎記念現代芸術振興財団

岡本太郎(1911-96)のことは、ぼくのような昭和世代だとテレビコマーシャルによってその強烈な個性を知ったはずだ。眼光鋭く視聴者に向かって「芸術は爆発だ!」とか「グラスの底に顔があってもいいじゃないか!」といったキャッチーな台詞は多くの人の心にいまも残っているはずで、戦後の日本美術界において「芸術家」ということを広く一般的に意識させた張本人が岡本太郎だった。

そんなエキセントリックな岡本の作品は、どれも情熱がほとばしる力強さがあるが、普段の岡本は意外にも茶目っ気があり、知的な語り口調で、繊細で真っすぐであったそうだ。破天荒で変わり者の“岡本太郎”というキャラクターを演じるために、あえて自分を焚きつけるような言動をとっていたのではないか、といまは思えて仕方ない。

芸術一家に生まれ、既存概念にとらわれることがなく育った岡本は、19歳の時にパリに渡り、1930年代を通して現地の前衛芸術に影響を受けながら、画家としてのアイデンティティを確立していく。そして帰国後、抽象と具象、愛と憎、美と醜など、相反する要素が生みだす軋轢のエネルギーを共存させた「対極主義」を芸術理念としながら、「芸術は大衆のものである」と自由や権利を阻害する者たちや権威的パワーに果敢に立ち向かったのだった。

岡本の没後最大規模となる『展覧会 岡本太郎』は、孤高に戦い続けた芸術家・岡本の人生を振り返る回顧展となる。幅約11mに及ぶ『明日の神話』の下絵をはじめ、主要な代表作や重要作はもちろんのこと、約40年の時を経て初めて里帰りする初期の名作『露店』、運命的な縄文土器との出合いなど、知られざる岡本芸術の奥深さに触れることができる。総括的かつ重厚な展覧会となるのでお見逃しなく。

『展覧会 岡本太郎』

開催期間:10/18~12/28
会場:東京都美術館
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時30分(金曜日は20時まで) ※入室は閉室の30分前まで
休館日:月曜日
料金:一般 ¥1,900 ※日時指定予約が必要
※23年1/14~3/14まで愛知県美術館に巡回予定。
https://taro2022.jp

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※この記事はPen 2022年11月号より再編集した記事です。