館山駅前に「あったらいいな」と思う場所ができた! 「sPARK tateyama」がプレオープン

  • 写真:ヒロタケンジ 文:馬場未織 

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生まれ変わりつつある館山駅前ビル「sPARK tateyama」

南の国っぽさを象徴するヤシの木が駅前ロータリーにそびえる、JR館山駅東口。
南房総と東京の二拠点生活をするわたしはここでよく「高速バスなのはな号」に乗り降りするのですが、どうも居場所のない駅で。早く着きすぎるとコンビニで時間をつぶす他ないのが難でした。

乗降者数が多くないため、鉄道会社による再開発もされない。「ヒトが減っちゃったしね」という地元の声が聞こえてくるような風情は、地方都市あるあるだと思います。

その館山駅前が、ここのところ生まれ変わろうとしています。
そう、現在進行形です。

まず、駅前で大面積を占めていた駐輪場が消えました。

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1年前までは左のような風景でした。放置自転車も多かったようです。右が現在の様子。

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これを実行した館山市は、地味にすごい。
“つくる”より、今まで当たり前にあったものを“なくす”方が難しいから。
何しろ館山駅を降りたヒトが初めて目にするのが「駐輪場」ではなくなったのです。観光客と生活者がともに使う駅ですから、その判断は難しかったはず。でも最初に着手するポイントとして、これはビンゴ!ではないでしょうか。

次に、ロータリーに面した駅前ビル1階に「sPARK Tateyama(スパークタテヤマ)」という民間パブリックスペースがプレオープンしました。
無料休憩スペースや飲食店、コワーキングスペースなど「駅前にあったらいいな」というものがこれから少しずつ入居するようです。

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先月、ビル入口付近にウッディなスタンドカウンターが出現。ああ、ようやく駅前に居場所ができた。

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人口の多かった昭和中期には映画館でした。その後地域最大のデパートだったことも。直近4年間は、1階にテナントが入っていませんでした。(写真:館山市立博物館提供)


スパークタテヤマに現在入っている2つのテナントは、なかなか素敵なお店です。

漁師と兼業という異色のキャリアを持つ地元出身の店主・海老原直人さんのコーヒーショップ「小右衛門珈琲」。前身である移動式屋台・フーテンコーヒーからのファンが多く、開店後客足が途絶えないそう。

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「移動販売は捨てがたい業態。でもリノベーションした空間に惹かれ、いったんここに腰を据えてチャレンジすることにしました」。館山駅前で彼のコーヒーが飲めるようになり、市民はラッキー。


「MEETS-BUY STORE」では世界のクラフトビールや地元のクラフトジンなど豊富な酒類が販売されています。房州ひじきをリブランディングした「Hijiqui」の取り扱いも。今後は地域の特産品も増やしていきたいそうです。

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かわいいビールを数本ジャケ買い。日本ではここでしか手に入らないものもあるそう。地元産、という小さな括りにこだわらず「僕らが好きなもの」が集められていると、むしろ今の館山の文化が伝わってきます。

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image5.jpgその場で飲める角打も。

スパークタテヤマは現在、11月27日のグランドオープンに向けてテナント出店者募集中とのこと。
運営母体である館山家守舎・代表取締役の本間裕二さんは「ここがUターン、Iターンの若者の起業できる場になっていけば嬉しい」と話します。

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テナント募集中の一角。どんな店が入るだろう。コーヒー、ビールときたら、美味しい食べ物が欲しくなる。

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若者の地方離れ、といった一辺倒な認識はもはや過去のものです。人生も仕事も多様になった今、自分の地元に誇りを持って働ける場ができれば、そこは“帰りたい田舎”になる。たとえば彼女や奥さんを連れて帰省するときにちょっと自慢できる場所があることが、意外と意味を持ったりします。「なんならこっちに引っ越す?」なんて話に発展したりね。

わたしの暮らす都内自宅の最寄駅周辺も再開発が進んでいますが、当然、関わりしろはありません。
ネットニュースで高層ビルの完成予想図を目にした途端に「賃料高そう…大手チェーン店しか入れないな」と直感し、再開発される駅がどこも似ている理由も分かります。

比して館山駅前は、すこしずつすこしずつ変化をしています。その間にいろいろなヒトが巻き込まれていく。そして誰もが“巻き込まれることができる”。これはむしろ、地方の強みですよね。

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image9.jpg館山駅前の未来予想図。(「第2回リノベーションスクール@館山」ユニットAの提案)

実はこれらの動きには、数年間の仕込み期間がありました。
2019年頃から「館山リノベーションまちづくり」という公民連携の動きができ、空き家をリノベーションしてお店をつくる移住者がどんどん現れて、みんなで館山を変えて行ける!という気運が高まっていったのです。その中で「駅前駐輪場をなくして広場になったらもっといい」といった声に行政が応え、ビルオーナーさんも改修を決意した、という流れです。


これから館山駅を訪れる予定がある方。
起業や移住を考えている方。

「スパークタテヤマ」にいる運営関係者たちに声をかけてみてください。巻き込まれる可能性が高いと思います。

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『sPARK Tateyama』

住所:千葉県館山市北条1880-1
営業時間:11時〜19時
TEL:なし
定休日:火曜、水曜
www.tateyamayamorisha.com

運営:株式会社館山家守舎
写真協力:ヒロタケンジ

馬場未織

建築ライター、NPO法人南房総リパブリック理事長、neighbor運営、関東学院大学非常勤講師

1973年東京都生まれ。日本女子大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2007年より「平日東京/週末南房総」という二拠点生活を家族で実践。2012年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市職員らとNPO法人南房総リパブリックを設立。里山学校、空き家・空き公共施設活用事業、食の二地域交流事業、農業ボランティア事業などを手がける。2023年よりケアのプラットフォームneighbor運営。著書に『週末は田舎暮らし」、『建築女子が聞く住まいの金融と税制』など。

Twitter / Official Site

馬場未織

建築ライター、NPO法人南房総リパブリック理事長、neighbor運営、関東学院大学非常勤講師

1973年東京都生まれ。日本女子大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2007年より「平日東京/週末南房総」という二拠点生活を家族で実践。2012年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市職員らとNPO法人南房総リパブリックを設立。里山学校、空き家・空き公共施設活用事業、食の二地域交流事業、農業ボランティア事業などを手がける。2023年よりケアのプラットフォームneighbor運営。著書に『週末は田舎暮らし」、『建築女子が聞く住まいの金融と税制』など。

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