5歳から二拠点で育った子どもも大学生。二代目・二拠点生活者へと成長中

  • 文・写真:馬場未織

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今回は、二拠点生活での子育てについてお話します。

我が家の週末田舎暮らしは15年前、長男が5歳の時に始まりました。
生きものが大好きな男の子を育てながら、せめて週末だけでも自然の中で暮らせたらなあ、この子の喜ぶ顔が見たいなあと思ったのがきっかけです。

「自然の中で子育て」というと、キツキツ勉強しないでのんびり自然を満喫というイメージでしょうけれど、彼の週末田舎暮らしは、実際は大忙しでした。

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目に映るすべてが興味、観察、実験の対象になっていましたから。

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ある夏は、敷地に跋扈する雑草の中に「山菜」と呼び分けられるものが混ざっていることに興味を持ち、図鑑とにらめっこしながらいろいろ食べてみることに熱中していました。

「ドクダミは天ぷら以外だとえぐいな!」
「カラスノエンドウはクセがない」
当然家族も巻き添えです。可食とされる草は軒並み食卓に上がり、怪訝な顔で食べる日々。
あの頃は、食事が実験タイムになっていました。

水場もまた、広大な観察現場でした。
家の隣を流れるちいさな川に通い、捕った生きものを観察するために飼っては放流、を繰り返していました。東京の我が家には多い時で水槽が9台あり、世話もおおごとです。

そのうち「飼ってかわいがるエビと、捕って食うエビがいるのは、おかしい」と言い出して、飼っていたエビを食べたこともあります。
泣きながら素揚げして、食べた途端「うまい」と言っていました。

また、家の近くのハゼノキは「触るとかぶれるからね」と注意していたら、「ホントにかぶれるかやってみる」と腕に樹液をすりつけてたこともありました。
案の定、皮膚が固く腫れてしまって。「ほんとだ、かゆい」と満足そうでした。

でも、これ、学校教育からはみ出る態度でもあるのです。
親が呼び出されて怒られたことも、数限りなく。やれやれ。
興味関心を育てる手法と、和を重んじる手法は、時として相反しますから。

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それでも、やりたいことを全力でやるこどもの姿は、いいものです。


実物を見る。
触って確かめる。
やってみて、思い知る。

そこにある紛れもない「事実」が彼の教科書になってきました。


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二拠点生活は、まったく違う環境で同時に起こっている多様なリアリティを日常で感じ続ける暮らしですから、疑問もたくさん生まれます。

たとえば、二拠点の往復で使う高速道路から見える砂利採取場などは、違和感のある風景です。
「毎週、ここらの山が小さくなっていくぞ」
「ここで掘られた砂利、どこで使ってるんだ?」
目の前の環境破壊だけでなく、そうせざるを得ない理由が都市部の開発にあることも、同時に見えてきます。

シュノーケリングをすると魚の数が10年前よりぐっと減っているのは何でだろう、という話から、海水温の変化について調べたり、付近にできる産廃集積所について調べたこともありました。運ばれてくる産廃はどこからやってくるものか、についても。
自分の「遊び場」に関わる事態ですから他人事ではありません。

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自分が知りたいから知る。だから知ることが面白い。「勉強」は本来、苦役ではないのだと思います。


彼が妹たちに(ごくごくたまに)勉強を教える姿を見ていると、なるほどこうやって脳内で知識をビジュアライズしていたのか、と驚くことがあります。教科書の内容を、手に取るようにありありと説明するからです。

「見たものについて調べる」という作業を繰り返してきたことで、逆に「文字情報から未知ものをイメージする力」も宿っていったのかもしれません。思いもよらない効果です。

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彼は現在、勝手に独自の二拠点生活をしています。
主な目的はサーフィンです。

今朝も、日の出前に家を抜け、房総半島南端のサーフポイントである平砂浦に向かっていました。南房総の家で何泊かしてくるのだと思います。大学の講義がコロナ禍でオンラインになったのも好都合なのでしょう。たまに友達も泊まっていくみたいです。

二代目・二拠点生活者の出現です。

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楽しいんでしょうね。サーフィン。下手だそうです。

以前、ビジターのサーファーは、どうやってローカルと親しくなるの?と彼に尋ねたことがあります。

「サーファーって身体の感覚をフル稼働させて生きてる“野生動物”みたいなもの。自分のテリトリーに知らない生きものがいきなり入ってきたらヤなわけ。だから “失礼します!”って大きな声を出して、自分の存在を知らせるんだよ。
本能を読めば、相手にストレスを与えない方法が分かるでしょ。そしたら生きもの同士で付き合えるしな」

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人間も、生きものでしたね。


自分の身体で確かめた一次情報をベースに考える。
そのクセが、彼をシンプルにしているように見えます。

今後人生で起こるであろう複雑なことについても、隘路に陥らず切り抜けていくんじゃないかと思えるので、親として楽な気持ちでいられてありがたいです。

二拠点生活での子育ての先には、「こどもの力を信頼できる時間」が続いていることに、いま気付き始めています。

5歳から二拠点で育った子どもも大学生。二代目・二拠点生活者へと成長中

  • 文・写真:馬場未織

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馬場未織

建築ライター、NPO法人南房総リパブリック理事長、関東学院大学非常勤講師

1973年東京都生まれ。日本女子大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2007年より「平日東京/週末南房総」という二拠点生活を家族で実践。2012年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市職員らとNPO法人南房総リパブリックを設立。里山学校、空き家・空き公共施設活用事業、食の二地域交流事業、農業ボランティア事業などを手がける。著書に『週末は田舎暮らし」、『建築女子が聞く住まいの金融と税制』など。

Twitter / Official Site

馬場未織

建築ライター、NPO法人南房総リパブリック理事長、関東学院大学非常勤講師

1973年東京都生まれ。日本女子大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2007年より「平日東京/週末南房総」という二拠点生活を家族で実践。2012年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市職員らとNPO法人南房総リパブリックを設立。里山学校、空き家・空き公共施設活用事業、食の二地域交流事業、農業ボランティア事業などを手がける。著書に『週末は田舎暮らし」、『建築女子が聞く住まいの金融と税制』など。

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