マクドナルド・スペインが「黒い空箱」を販売、森林火災の被災者に全額寄付へ

  • 文:能勢奈那
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マクドナルド・スペインは今年8月、国内全土を襲った森林火災の被災者支援のため、チャコールブラックの「空箱」を販売開始した。

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この夏、スペインは炎の海に襲われた。

ヨーロッパでは、気候変動の影響で猛烈な熱波が北上し、40度を超える記録的な猛暑が何日も続いている。これにより森林火災が多発し、スペインではすでに東京23区のおよそ4倍もの面積が焼失。8月には東部バレンシア州で、47,000エーカーをも焼き尽くす今年最も大規模な火災が発生した。

そんな中、マクドナルド・スペインは、この森林火災で多大な被害を受けている農家を支援するため、「実在しないハンバーガー」を3週間の期間限定で販売することを決めた。価格は1ユーロで、利益の全てを苦境に立たされている農家の人々に寄付するという。

「実在しないハンバーガー」とは一体、どんな商品なのだろうか。

森林火災で破壊され、黒焦げとなった土地や作物を連想させるチャコールブラックの箱。その中には、その名のとおり、肝心のハンバーガーが入っていない。空箱なのだ。

これは農作物の損失によって生産できなくなったハンバーガーを表現し、森林火災が及ぼした影響を消費者に実感してもらうことを意図している。

また、同時に作成された93秒のフィルムが、マクドナルド・スペインの公式Youtubeチャンネルに公開された。厳しい状況に追い込まれ、将来を悩む農家が一本の支援の電話を受け、希望の光を見い出す…といった内容だ。被災した農家の人々の状況を伝え、支援の必要性を呼びかけている。

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同キャンペーンは、新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けた農家を支援するために始まった「Big Good」プロジェクトの一環として発表されたもの。マクドナルド・スペインのサプライチェーンに不可欠な農家や牧場主たちに対する、日頃の感謝の想いと強い連帯意識が伝わってくる。

同社CEOルイス・キンティリアーノ氏は、「企業としてサービスを提供する地域社会に寄り添うことは私たちの義務であり、このような困難な状況においてはなおさらのことです」と述べ、社会全体で結束してこの運動に参加するよう呼びかけた。(「TAXI」2022年8月24日掲載)

皮肉にも今回の大規模火災は、農村部によって食生活が支えられていることを改めて人々に知らしめた。被災者は時として社会と切り離された想いになるかもしれない。しかし、同キャンペーンは農村部と都市部の結びつきをさらに強固なものにしているに違いない。

【出典】
https://www.famouscampaigns.com/2022/08/mcdonalds-spain-has-created-the-burger-that-could-not-be-in-support-of-wildfire-torn-farms/
https://www.adweek.com/brand-marketing/mcdonalds-campaign-supports-spanish-farmers-impacted-by-historic-summer-fires/
https://designtaxi.com/news/420074/McDonald-s-Launches-Burger-That-Could-Not-Be-To-Help-Farms-Devastated-By-Fires/
https://www.bbc.com/news/world-europe-62216159