自転車で7200キロ走破のカップル、7カ国にまたがる「地上絵」を完成させる

  • 文:青葉やまと

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イギリス人とイタリア人のカップルが、ヨーロッパに巨大なアートを完成させた。自転車で欧州7カ国を駆け、GPSで記録したその軌跡によって自転車の絵柄を浮かび上がらせた。

アートを完成させたのは、男性のダニエル・レイノー=カークホープさんと女性のアリアナ・カシラギさんのカップルだ。サイクリングの素晴らしさと環境保護の大切さを広めたいと考え、二人とも物理学の研究職を辞して壮大な企画にチャレンジしたという。

カークホープさんが特別に自作したというキャリー付きの自転車に乗って、イタリアンウォータードッグの愛犬・ゾーラが旅路を共にした。特製のカーゴスペースを気に入り、飛び乗ったり乗ったりを繰り返し、ときには自転車の脇を並走することもあったという。

完成したGPSアートは、幅が1000キロ弱という想像を絶する規模となった。前輪をフランス全域に置き、ベルギーなどを車体のフレームで横切りながら、後輪はドイツにまで達している。

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「どんな旅路でも可能なのだと、証明すること」

自転車情報サイトの「サイクリング・トリップ」は、二人の挑戦をこう表現している。

「アイデアはシンプルだった。世界最大の自転車を、西ヨーロッパ全域をカンバスとした途方もないGPSアートで描くこと。どんな旅路でも、どれだけ長くとも、自転車でできるのだと証明すること」

しかし、その道のりは決して平坦ではなかったようだ。実際に要した期間は4ヶ月ほどだが、挑戦は挫折と復帰の繰り返しだった。2019年夏にカシラギさんが膝を痛め中断を余儀なくされたほか、2020年3月のゴールを目指した計画はパンデミックに阻まれた。身も凍る寒さで断念したこともあったという。

応援してくれる周囲への申し訳なさを感じ、終わりの見えない旅路に塞ぎ込むこともあったようだ。今年8月に見事ゴールしたいま、二人は安堵の表情を浮かべている。カシラギさんは英ガーディアンに対し、「成し遂げられないため人々を失望させているように感じましたし、人生に行き詰まりを覚えました。ですので(ゴールしたいま)、私たちはとても幸せです」と笑みを浮かべる。

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「ちょっとニッチな」大記録

ガーディアン紙は、二人が「ちょっとニッチな」3つの記録を打ち立てたと報じている。

全7237キロを費やした地上絵は、これまでギネス記録として認定されていた徒歩による7163キロの作品を74キロ上回った。ちなみに旧記録は、日本人男性が自動車で日本列島を巡り、プロポーズのメッセージ「MARRY ME」を刻んだものだった。

また、自動車ではなく自転車を使ったGPSアートとしては、4106キロがこれまでの最大だった。こちらに対しては76%上回る大幅な記録更新となっている。

そしてもちろん、手段を問わず描かれた自転車のイラストとして、世界最大のスケールとなった。

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次回は自由な旅を!

比類なき成果を達成した二人だが、7000キロ以上の道をGPSの指示通りに走るツアーはときに苦痛でもあったようだ。美しい河川やサイクリング・ロードに出会っても、泣く泣くそちらへ進むのを諦めたことが何度もあったことだろう。

インスタグラムを通じて二人は、次は気の向くままにサイクリングを楽しみたいと語っている。

「さて、私たちへ家へ帰って休み、そして次のサイクリングの旅へと出かけることにします。次はお絵描きはなしで。ひたすら私たちの望む方へとペダルを踏むのです!」

7200キロを走破してなお、サイクリングを再開したいという二人。尽きないその情熱に驚くばかりだ。

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【画像】自転車で7200キロ走破のカップル、7カ国にまたがる「地上絵」を完成させる

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これまでギネス記録として認定されていた徒歩による7163キロの作品。

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