親から子へ、貧困は「遺伝」してしまうのか?

  • 文:川畑明美
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子どもの大学進学は、試験の成績だけでなく「親の経済力」が影響する。お金持ちの家の子は、質の高い教育を施すことができるが貧乏人にはそれができないからだ。TheAYS-istock

悲しいことだが貧困は遺伝してしまう。文部科学省による調査でも、学校の成績は世帯年収に比例することが判明しているのだ。ただし日本国内だけではなく、欧米の方がむしろ顕著かもしれない。アメリカは、良くも悪くも格差社会だ。日本と違って高校までが義務教育のアメリカでは、基本的には居住している学区の高校に通う。その学区が所得の高い人が多いエリアにあれば教育の質が高く、悪いエリアにある学校は質が低くなってしまうのだ。


なぜそうなってしまうのかというと、学校の財源の大部分をその学区の住民の納めた税金が占めているからだ。富裕層の集まる学区であれば、潤沢な財源を使い質の高い教育ができる。親の住んでいるところで学校の質が変わってしまうのだ。アメリカほどではないが、日本でも少なからず学区の格差はある。住んでいる地域で将来の教育が決まってしまい、教育のレベルが低いと将来稼げるお金も少なくなってしまう。あたかも貧困が遺伝したように。


また、アメリカの有名大学のほとんどは私立だが、その学費はとても高額だ。ハーバード大学では、1年間の授業料だけで51,143ドル。1ドル138円で計算すると約690万円だ。為替が円高になったとしても4年間で2000万円以上は確実だ。保護者の収入が多ければ多いほど、子どもの大学進学率が高くなる。悲しいことだが親の貧困は遺伝してしまうのだ。

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受動的に仕事をしている人は貧困に

学区の他にも、貧乏が遺伝する要因はある。主体的に働いているのか、受動的に働いているのかの違いだ。受動的ということは、いわゆる「指示待ち人間」だということだ。指示があれば、それを完璧にこなすのかもしれないが、上司から何か言われないと動かない人間のことだ。自分の考えや判断をもとにして行動していないのだ。それでは時間労働として搾取されてしまう人生になってしまう。


仕事は主体的にするものだ。企業の歯車として働くのではなく、自分が属する企業のサービスやモノを使っていただきモノやサービスを通じてお客様が豊かになってもらうために働くと結果が変わる。自分で行動ができない人は収入の上限が決まってしまうのだ。受動的に働いて得る仕事の賃金は、国が決めた最低賃金が伸びなければ収入も増えない。


副業が解禁になりつつあるが、受動的に働く人は、副業してもいたずらに労働時間が増えるだけで裕福にはなれない。自ら仕事をつくり出せる人になる必要がある。日本の学校教育では、自ら仕事をつくり出すのに向いていない。だから親が教えるしかない。自ら仕事をつくり出せる「考え方」を教えられない場合は、残念ながら貧困が遺伝してしまうのだ。

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資本家の目線で投資をすることで貧困から脱却

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株式投資で株を保有すると株主になる。株主になるのは、お金を出すだけだから簡単だ。しかし、その株から収益を上げるには投資家の目線がが必要になる。istock

投資は、明確な目安や基準というものがない。例えば円安というのは、昨日と比較して円安というものだ。少し前までは120円といえば、かなり円安に感じていたが、現在はその基準が140円だ。目安や基準は変化してしまうのだ。ゆえに受動的な考えでは、上手くいかない。主体的に考えて行動できる人がお金を増やせるのだ。


投資とは、自分が働くのではなく投資先の企業に働いてもらうことで、そこから得られた収益の一部を分配してもらうことを指す。例えば、株を購入することで株主となる。株を保有していることで、その企業が得た利益の一部のお金が株の保有分だけ分配されるのだ。利益を上げ続ける企業の株を購入できれば自分では働かずに、お金が入ってくる。そういう株を選んで保有するということは、資本家に近いことができるのだ。資本家とは、他人の才能と時間を使う立場にいる人のこと。


資本家は、お金を出して人を働かせるだけではない。自分で課題を見つけ変革する力が必要となる。利益を享受できる株を保有するには、その企業が属する産業構造を理解して、その中でトップでいられる企業なのか目利きする必要がある。その企業がどういう会社で、どのような売上構成を持っていて尚かつ業績や株価は、どう推移しているのか、同業他社と比較して利益率はどうなっているのか。そういうことについて把握しておく必要があるのだ。

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親から投資だけはしない方が良いといわれる理由

「人前でお金の話をするのは、はしたない(タブー)」子どもの頃、そういう教育(しつけ)を受けてはいないだろうか。例えば、親戚のおじさんが着けている腕時計を指して「コレ、いくら? 」なんて聞いたら親が「お金の話をするんじゃぁ、ありません」と、たしなめることは、よくあることだ。そうして育ってきたら、お金の話を家族でもしなくなる。


さらに家庭で「お金の話」をする時は、ネガティブな内容だったりする。投資で失敗した話を親から聞かされた方は多いと思う。筆者も次のように、よく言われる。「親から投資だけはしない方が良いと言われました。本当に投資して大丈夫なんですか?」これは、親の思いやりだと考えて欲しい。


投資で失敗し、子ども達が路頭に迷うのは、親として見たくないものだ。しかもそれが詐欺的なものだから、お金は返ってこない。詐欺ではなくても投資は全般的に不確実なものだから、それに頼るのだったら労働してお金を得ることをする方を勧めるのだ。そういう思いやりから「投資はダメ」といってしまうのだ。

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お金の話が人生で一番大事

筆者は、「お金の話が人生で一番大事」だと思っている。なぜかというと、お金がなくては生きていけないからだ。日本に生まれて普通に勉強をして、普通に進学をして、普通の会社で働いて普通の生活をしていれば、それほどお金に困ることは、いままでなかった。


ところが社会は変わってきている。先日、お客様との面談で次のような話を聞いた。NYに転勤になったご主人と一緒に赴任して現地のボランティアの英会話を受けていた時のことだ。お金の運用の話になり、自分は預金しかしていないといったら、ボランティアのアメリカ人がとても心配してくれて「投資しないとダメだよ」と教えてくれたのだそうだ。ボランティアの方は、政府系の機関にお勤めのとてもお堅い方なのに「投資は必要」と言われたのが、印象的だったと話してくれた。これからの日本でも投資は必要になってくる。なぜなら「年功序列」が崩れてきているからだ。


高度成長期は、会社が従業員の生活を保証することで企業戦士(バブルの頃はよく言われた)として朝から晩まで働いていたのだ。そして、年齢が上がれば給料も上がっていった。この年功序列がなくなってしまっている。年齢が上がれば子どもの教育費も大きくなっていくのに、給料が横這いならば、貯金をしていても足りなくなってしまう。人が生きていく上で、お金は大事なものだ。人生が狂わないような、収支の考え方やお金の計画はとても大事なことだ。


そして英会話ボランティアのアメリカ人が言うように投資も大切だ。日本でもアメリカと比較したらゆっくりだが、物価は確実に上がっている。物価の上昇と同じように値上がりする資産を保有していないと、あなたの資産は目減りしてしまう。正しい投資とは、「明るい未来への仕送り」なのだ。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/

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