世界初の再生型蒸留所「東京リバーサイド蒸溜所」が、1周年記念のクラフトジンを限定販売

  • 文:森一起

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元印刷工場だったという天井の高い建物の中に作られた蒸留所。どこかユーモラスなマシンは近未来のSFに出てきそうだ。

新しい波は、また東からやって来た。もはや市民権を得た感があるナチュラルワイン、クラフトビールに続く、アルコール界の新しい刺客、クラフトジンだ。

地下に巨大な焼鳥工場がある力士たちのサンクチュアリ、少し前まで国技館とちゃんこの街だった蔵前は、いつのまにかブルックリンになりつつある。まだコロナがやってくる前、東京イーストサイド清澄白河に大阪から「フジマル醸造所」がやってきて、サードウェーブコーヒーの代名詞「ブルーボトルコーヒー」が日本初出店に選んだのも、また清澄白河だった。

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日本酒造りでは酒造好適米の65%-70%が「日本酒」、残りの30-35%が「酒粕」となり廃棄。LASTはそんな酒粕たちをもう一度輝かせた。

そして、コロナ禍の中、「循環経済を実現する蒸留プラットフォーム」をコンセプトに、廃棄素材を使用したクラフトジンの生産や、再生型蒸留所を運営する「The Ethical Spirits & Co.(エシカル・スピリッツ)」が蔵前に誕生。

廃棄されていく酒粕や、カカオの皮、コロナで余剰になったビールなどを原料に、世界的にも評価が高い数々のジャパニーズクラフトジンを生み出している。

蔵前駅から徒歩3分の「東京リバーサイド蒸溜所 by The Ethical Spirits & Co.」には、オリジナルのクラフトジンを売るショップがあり、その奥には蒸留所が併設されている。

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REVIVE from NINJAは社会環境の変化で廃棄を迫られた日本酒をジンに再生した。
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耕作放棄の課題提起である古木茶、間引きされた摘果すだち、廃棄されることの多い茗荷の茎など、エシカルな素材を多く使用している。

鳥取県で慶応年間から続く酒造「千代むすび」の捨てられていく酒粕をリユースした『LAST』から始まったエシカル・スピリッツのクラフトジン造り。ただの再生ジンではない。

それは、日本酒生産工程の最後に生成される酒粕を再蒸留し、クラフトジンを生産して販売。その利益から酒米を蔵元に還元し、再度そこから日本酒を生産するという世界初の循環型「エシカルジンプロジェクト」だ。

その後もエシカル・スピリッツは、色々な素材にチャレンジしていく。

もともと、ジュニパーベリーの香りを主として、瓶詰めアルコール度数が37.5%以上であることさえ守れば、ジンは限りなく自由度の高い酒だ。ワインのように熟成期間も必要ないから、素材選びと添加するボタニカル選びのセンスで、新しく上質なジンを造り出せる可能性に満ちている。

『REVIVE from NINJA』は、古木茶の甘い香りが漂う日本茶のジン。茗荷、スダチ、煎茶の個性ある香りをカモミール、古木茶の甘い香りが包み込む。印象的なラベルデザインは、「異彩を、放て」をキャッチフレーズに福祉を起点に新たな文化を創るヘラルボニーとのコラボレーションだ。

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コロナ禍で余剰となったバドワイザー約2万ℓをジンに。ウイスキーを思わせるようなウッディな香りと気品のある味わいに仕上がっている。


『REVIVE from BEER』は、コロナ禍の中、大量に廃棄されてしまうビールか造られたクラフトジン。素材であるバドワイザーの製法や背景をリスペクトしながら、バドワイザーを蒸留した原酒に、ブナチップを漬け込み、ビールを添加。その後ジュニパーベリー、ホップ、レモンピールを加え蒸留することで、捨てられかけたビールはジンとして蘇った。

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ヒューガルデンの持つ優しい香りに、本来のコリアンダーシードとオレンジピールの香りを活かしながら伸ばすボタニカルを選出した。

バドワイザーの再生で注目を集めた『REVIVE』シリーズは、その後、ベルギーを代表するホワイトビール”である「Hoegaarden(ヒューガルデン)」と、アメリカンクラフトビールのパイオニアであるシカゴ発のIPAを再生した『REVIVE from Hoegaarden <Root>』/『REVIVE from IPA <Disrupt>』の2種を発表。

コロナ禍で2021年の夏までの段階で、既に廃棄危機となっていた、余剰ビール “約6万L” が 15,000本以上のクラフトジンとして蘇った。

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カカオハスクは、通常のチョコレート作りにおいてカカオをローストする加工工程で分離&廃棄されている皮部分だ。

『CACAO ÉTHIQUE』は、秋田県の地酒 飛良泉の吟醸「粕取り焼酎」を原酒に、「Whosecacao」のスペシャルティカカオを使用。高品質カカオの、製造過程で処分されてしまうカカオハスクを蒸留し、香り高いカカオの風味が楽しめる。

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1周年記念で発売されるStage GINに使用されたボタニカルたち。実際にカウンターに立つバーテンダーやシェフたちの思いが詰まっている。

酒粕からビール、カカオハスクと様々な素材にチャレンジしてきたエシカルスピリッツが、併設される「Stage by The Ethical Spirits & Co.」1周年を記念して発表するのが『Stage GIN』だ。

8月5日(金)・8/6(土)に開催される1周年記念イベントの2日間限定で、『東京リバーサイド蒸溜所』1Fの「エシカル・スピリッツ・オフィシャルストア」で販売。ボトル販売終了後は、2階のBar & Dinig『Stage』のみで味わえる特別なジンになる。

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ショップ横の階段を上がると、エシカル・スピリッツのジンを最高に引き立てるカクテルと料理が楽しめるダイニングバーStageがある。

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もちろん、エシカルスピリッツ全種のジンが楽しめるだけでなく、ジンに寄り添う料理たち(白鳥翔大 共同監修)がたくさん用意されている。

『Stage GIN』は、『Stage』のバーテンダーやシェフが、客たちに日々ジンについて伝えていく中で感じてきたことを集約。1周年を機に、「自分たちらしいジンを作ってみよう」という想いから始まったプロジェクトだ。

『エシカル・スピリッツ』の蒸留責任者山口歩夢氏にもアドバイスを受けながら、良い意味でエシカル・スピリッツらしくない新たなテイストのクラフトジンが生まれた。

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誰もが知っているジントニックや、マティーニにぴったりのドライなジンができたという店長はバーテンダーでもある。

食事に合うジンを、そして、クラシックカクテルに合わせられるジンを。それが、実際の現場で働くバーテンダーやシェフたちの共通した意見だった。今まで、エスカル・スピリッツにはなかったロンドンドライジンスタイルのジンだ。

限りなくドライでキレがいいジンは、ジントニックやマティーニにもぴったりで、食中酒としても色々な料理にそっと寄り添う。

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ドライなジンは季節のフルーツや野菜などとの相性もよく、食中酒としてのジンの可能性を感じさせる。

茨城県のニュートラルスピリッツ、佐賀県の天吹酒造の粕取焼酎をベースにして、ボタニカルには、ジュニパーベリーをはじめ、国産バレンシアオレンジ、レモン、ライムの柑橘の香り、グレインズオブパラダイス、アンゼリカルートなどの深みのあるスパイスたちが使用されている。

和歌山・善兵衛農園のバレンシアオレンジは出荷できないキズもの。見た目はキズがあっても中身は申し分ない。レモンピールとライムピールは、Stage営業時に余剰になった部分を使用。ヤマキイチ商店の、泳ぐほど鮮度の高い『泳ぐホタテ』。その通常廃棄される貝殻も使用している。

メンバー自らデザインしたラベルデザインは、通常廃棄される蒸留過程で生まれる飲用不能のヘッドアルコールを使い、アルコールインクアートに仕上げた。蒸留残渣の一部は蔵前のアップサイクルプロジェクト「蔵前Coffeeプロジェクト」に渡し、堆肥に変わる。

1周年にふさわしいエシカルシステムが構築されている。

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四季折々の料理には、屋上ハーブガーデンのフレッシュなハーブたちも効果的に使用されている。

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なんでもないジントニックのおいしさにハッとさせられるのは、Stage GINの実力の成せる技だ。
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屋上には様々なハーブたちが栽培されたハーブガーデンがある。この中の組み合わせから、また新しいジンのヒントが生み出されていく。

ますます目が離せない街に成長していく東京の東、蔵前、近隣にはスピリッツ専門の立ち飲みスタンドなども誕生して、週末には街歩きを楽しむ人たちも多い。今度の週末だけ発売される特別なクラフトジンを求めて、空色の「エスカル・スピリッツ・オフィシャルストア」を覗いてみるのはいかがだろうか。

当日は屋上ハーブガーデンや、蒸留所の特別見学(19時まで開放予定)も予定されている。

『The Ethical sprits & Co.』

『Stage』1周年イベント開催概要
8月5日(金) 15:00-22:00(LO.21:30)
8月6日(土)12:00-22:00(LO.21:30)
東京リバーサイド蒸溜所 /東京都台東区蔵前3-9-3
料金:入場無料(ドリンク・フード引き換えチケット500円~)

スタンディング形式・予約不要

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森 一起

文筆家

コピーライティングから、ネーミング、作詞まで文章全般に関わる。バブルの大冊ブルータススタイルブック、流行通信などで執筆。並行して自身の音楽活動も行い、ワーナーパイオニアからデビュー。『料理通信』創刊時から続く長寿連載では東京の目利き、食サイトdressingでは食の賢人として連載執筆中。蒼井優の主演映画「ニライカナイからの手紙」主題歌「太陽(てぃだ)ぬ花」(曲/織田哲郎)を手がける。

森 一起

文筆家

コピーライティングから、ネーミング、作詞まで文章全般に関わる。バブルの大冊ブルータススタイルブック、流行通信などで執筆。並行して自身の音楽活動も行い、ワーナーパイオニアからデビュー。『料理通信』創刊時から続く長寿連載では東京の目利き、食サイトdressingでは食の賢人として連載執筆中。蒼井優の主演映画「ニライカナイからの手紙」主題歌「太陽(てぃだ)ぬ花」(曲/織田哲郎)を手がける。