『ストレンジャー・シングス』の魅力を伝えるのは、なぜ“難しい”のかを考察

  • 文:中川真知子

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「ストレンジャー・シングス 4」場面写真1.jpg
Courtesy of Netflix

「面白い」

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』をシーズン1からシーズン4のボリューム1まで4日でまとめ観した直後の感想だ。

なんで面白いと思ったのかを言葉にしようとしても、出てこなかった。

80年代が舞台だからノスタルジックを感じる? 出演者全員の演技力がピカイチ? スティーブン・キング作品を彷彿させるアメリカの片田舎ホラーが懐かしい? 『遊星からの物体X』さながらのプラクティカル・エフェクトっぽい演出がいい? 子役の成長を感じられて微笑ましい?

製作者のこだわりはズラズラと並べられるし、40代以降が熱狂するポイントも理解できる。だが、どれもこれも説明的になってしまう。人にお薦めしようにも「じゃあ観てみよう」につながらなさそうだ。

だが、今回はどうにかして本作の魅力を伝えたい。というのも、7月1日にはシーズン4の後編が配信され、世界中がシーズン5のフィナーレに向けてこれまで以上に盛り上がっていく。この高揚感を一緒に味わってほしい。

だから、今回の記事では面白くてビンジ視聴に値することは大前提のもと、なぜ面白さを言語化しにくいのかを書いていくことにしよう。

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ターゲットがニッチだと思われやすい

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』を簡潔に説明するならば、80年代の片田舎を舞台にしたSFホラーファンタジーだ。

もう少し付け加えるなら、80年代の片田舎を舞台に、オタクの少年たちと謎の超能力少女が力を合わせて悪の科学者たちと戦うSFホラーファンタジー、といったところだろうか。ここに、いかに時代考察が完璧で、当時のミュージックカルチャーや映画の要素が詰め込められているか、イースターエッグが何個見つかるか……などの説明が加わる。

80年代を生きてこなかった人や、80年代のミュージックカルチャーに興味がない人、SFやホラー、超能力に興味がない人は、この時点で観る気を無くすと思う。凄さはわかっても、ピンとこなさそうだ。実際、筆者がそうだった。

筆者は81年生まれで当時の空気感は知っているし、何より映画にどっぷり浸かって生きてきたので、当時のカルチャーは理解しているつもりだ。だが、アメリカで育ったわけではないから、「80年代が! イースターエッグが!ここで使われたこの音楽が当時の●●文化を反映していて!」と言われても、「ふむふむ」程度にしか思えなかった。むしろ、最大の売りポイントがハードルを高くした。

だが、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の面白さやこだわりを話そうとすると、80年代というキーワードは外せないだろう。この作品を本当に見てほしくて、どうやって魅力を伝えようと考えれば考えるほど、ファンの間口を狭めてしまいかねない。だから多くの人に見てもらいたいと思えば思うほど、情報を伏せなければならず「面白いからとにかく観て」としか言えなくなってしまうのだ。

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「シーズン1の中盤まで観ればハマる」とは?

本シリーズが面白いというのは、多くの人の共通認識だ。だが、楽しいと感じられるまでにラグが生じているようだ。実際、ファンの中には「シーズン1の中盤まで観ればハマる」と言う人もいるし、その数は少なくない。

それはなぜか? 

まずひとつに、本作が、制作総指揮のマット・ダファーとロス・ダファーの兄弟が、80年代の空気感を現代に甦らせようと遊び心とリスペクト満載で徹底的にこだわって世界観を構築した作品だからだろう。

結果的に何が起こったかというと、シーズン1の前半は、ストーリーの主線が、ギークな少年の失踪事件と謎の超能力少女の出現に留まってしまい、4話くらいまで大きな進展がない。その代わり、80年代に生まれた、普遍的に面白いとされる映画のエッセンスや「ダサ可愛い」文化を、原型を止めるレベルでこれでもかと言うほどぶっ込んでくる。エピソード1に登場する『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は、アメリカでは大ヒットした超有名ゲームだが、日本での一般知名度は低い。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』は物語の要でもある。

当時を知る人は、畳み掛けるようにやってくる80年代あるあるに気分が高揚するだろう。一方で、当時を知らない人たちは、ストーリーが全く進まないもどかしさを感じることになる。

怒涛の80年代サービスがひと段落して、年代問わずハマる展開になるのは4話から。行方不明になった子どもが、大きな事件の渦に巻き込まれているらしいことが決定的になったときだ。この瞬間、全てのファンがストーリーの続きを知りたくて前のめりになり、楽しさの足並みが揃う。ここを「中盤まで観れば楽しくなる」以外の言葉で魅力を伝えようとすると、延々と80年代の説明になってしまう。それはまるで、先日のウェザーニュースのツイートの面白さとくだらなさを外国人に丁寧に説明するに等しい。

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ウェザーニュースより

この写真を見て、多くの日本人がニヤついたことだろう。その様子を、外国人が横で見ていて「何が面白いの?」と質問してきたと想像してほしい。

おそらく単語の意味や「『布団』と『ふっとん』で、同じ言葉が2回続くから〜」と韻を踏むこと、駄洒落を説明しようとするはずだ。その説明を聞き終えた外国人は、笑うだろうか。

どの小学生も一度は経験したような突発的な「駄洒落大会」における、「かえるはかえる」や「ねこはねころんだ」の流れを汲んだ禁じ手ポジションの「ふとんはふっとんだ」といった背景まで理解しているから日本人は敏感に反応できる『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の80年代ノスタルジアは、まさにこれだ。説明しようとすればするほど、聞いている側は「へー」にはなるが、「面白い!」には繋がりにくい。

それをわかっている人や、実際に内容にピンとこなくともハマった人は、「自分を信じて途中まで観て」ということになる。

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「●●が出ているから観て」とも言えない


では、特定のキャストの名前を出すことで人に試聴を促すことはできるのだろうか。

正直言って、NOだと筆者は思っている。キャスティングは群像劇を前提としているし、何よりリアリティ第一で行われたからだ。

ウィノナ・ライダー主演『リアリティー・バイツ』トレイラー

シーズン1の配信開始前後に「ウィノナ・ライダーが復活!」という触れ込みがあったが、久しぶりに彼女の姿を拝みたくて見始めた人は、1話で挫折してしまったのではないだろうか。

というのも、シーズン1におけるウィノナは、行方不明になった息子の身を案じて睡眠時間すら確保できずに、頬はこけていかにも不健康。幻聴と幻覚で、パッチリと大きな目はギラギラと光り病的だ。なりふり構わず行方不明の息子を探す母親に徹しているウィノナは、90年代の天真爛漫な「ウィノナ・ライダー」とはかけ離れている。

ウィノナ・ライダー以外で知名度があるのは、ジム・ホッパー署長役のデヴィッド・ハーパーだが、高い演技力で定評があるもののスターではない。

子どもたちは可愛らしいが、シーズン1のときには集客できるほど有名ではなかった。

BACKSTAGEが、シーズン5への出演を希望する人向けにキャスティングディレクターのインタビューを掲載した記事を出したが、そこにははっきりと「出演を希望する有名俳優もいますが我々が大切にしているのはリアリティです」と書いてある。

つまり、知名度があるかどうかは関係なく、オリジナルキャストたちと時間をかけて築いた世界観に違和感なく入れる人のみが求められているのだ。そして、キャスティングはオーディションが始まるより前に始まっているという。

そのため、「●●が出ているから観てみてよ」という映画宣伝における基本の触れ込みができない。徹底した世界観と結末が知りたくてたまらなくなる中毒性のあるストーリー、それが同シリーズの魅力だ。

NETFLIX屈指のキラーコンテンツが終わりを迎えようとしている。ボリューム2とシーズン5の配信後には世界中が『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の話題で持ちきりになるはずだ。私たちは、お祭り騒ぎを周りから見るか、それとも一緒に盛り上がるかの分岐点に立っている。筆者はひとりでも多くの人と共に楽しみたい。

『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のシーズン4ボリューム2は7月1日配信。シーズン5で終焉を迎える。

ついにホーキンスの謎が明かされる。このウェーブに乗らないのはもったいない。

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