過去、人口10万人あたりのスナック数が全国で最も多かったという宮崎県。なかでも県内最大の繁華街・ニシタチは日本一のスナック街とも言われるほど。そんなニシタチのスナックに魅せられた、地域プロデューサー田代くるみの話題のプロジェクトについて話を訊いた。
6月28日発売のPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」から一部を抜粋して紹介する。
日本特有のカルチャーであり、どんな小さな町にも存在するスナック。コロナ禍で苦境に立たされている夜の街を活性化すべく、宮崎でユニークなプロジェクトを展開しているのが田代くるみだ。
田代の故郷である宮崎県は、過去に人口10万人当たりのスナック数が国内最多を記録し、なかでも県内最大の繁華街である通称ニシタチは、日本屈指のスナック街として知られる場所。現在も数百店のスナックがあり、しかもひとつとして同じ店がないと言われるニシタチのスナックに魅せられた田代は、客のニーズに合わせた店を紹介するスナック「スナック入り口」を開店し、自らママを務めている。
「スナックの大半は店内の様子も見えなければ、料金体系もわからない。そのうえ、スナックはママやマスターの人生が詰まった“コスモ”のような場所なので、そこがミスマッチだとお客さんも店の人も不本意な時間を過ごすことになる。それならば、ライターである私がママたちに取材をして、店を紹介するウェブメディアを開設し、ニシタチの入り口になる店をつくろうと考えました」
「スナック入り口」では、このウェブメディア「スナックアドバイザー」を活用して、店内やママの写真を見せながら楽しみ方を提案したり、ハッシュタグで自分好みの店を検索したりもでき、精度の高いマッチングが可能に。そのため、「2軒目も紹介してほしい」と戻って来る人も多いという。
既に「うちの街にもこんなスナックが欲しい!」とフランチャイズ化を望む声も。客を紹介したスナックからも感謝され、いい循環が生まれているようだ。田代が「スナック」というカルチャーを“発見”し、新しい視点でプレゼンテーションしたことで、スナックを再評価する機運が生まれている。
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スナック「スナック入り口」、ウェブサイト「スナックアドバイザー」
「スナック入り口」は、観光庁の採択事業の一環として開業した、ニシタチのスナックを紹介するスナック。「スナックアドバイザー」は、スナックを紹介するウェブメディアだ。
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OTHER PROJECTS
クラフトビール「ビール南蛮」
“コロナ禍の街中に活気を”と「スナック入り口」と居酒屋「粋仙」、ビール醸造所「ビーエムビーブルワリー」の3店で共同開発し、2021年に発売。宮崎のソウルフードであるチキン南蛮を表現した商品で、クラフトビールをキーに街がつながることを目指すプロジェクトとして展開。
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田代くるみのFAVORITE THINGS
「外山滋比古著『思考の整理学』」
1983年に刊行され、累計発行部数約263万部を記録している思考法入門書。アイデアを軽やかに離陸させ、思考をのびのびと飛行させる方法を明快に提示している。「大学入学時に同じ大学の先輩からいただいた一冊。いまでも頭を整理したい時に読み返します」
※この記事はPen 2022年8月号「“仕掛け人"を探せ!」特集より再編集した記事です。