名作古典『平家物語』のアニメ化成功を導いた、プロデューサー・竹内文恵の企画力

  • 文:宮田文久

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単なる古典としてではなく、「そこに生きた人たちの感情の流れ」を受け取ってもらえたと、竹内は言う。現代の私たちと“ともに生きる” アニメーションだ。 ©「平家物語」製作委員会

鎌倉時代の軍記物語『平家物語』がアニメ化され、今年1月よりTV放送や各種配信サービスにて配信を開始(FODでは昨年9月に先行配信)。回を重ねるごとに注目度は上昇し話題に。そんなアニメ化を実現させたプロデューサー・竹内文恵に迫った。

6月28日に発売されるPen8月号「アイデアと行動力で世界を動かす、“仕掛け人”を探せ!」から一部を抜粋して紹介する。

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竹内文恵●プロデューサー。1975年、福井県生まれ。2000年、アスミック・エース入社。ゲーム・アニメ・邦画の宣伝を経て、04年フジテレビ深夜アニメ枠「ノイタミナ」の立ち上げに参加。テレビアニメ『四畳半神話大系』、実写映画『3月のライオン前編・後編』、劇場アニメ『映画すみっコぐらし』シリーズ、『四畳半タイムマシンブルース』などをプロデュース。現在、劇場アニメ『犬王』が公開中。 

私たちは、その物語を知っている。栄華を誇るも壇ノ浦で滅んだ平家の顛末は、「諸行無常」「盛者必衰」の言葉とともに教科書的な“古典”として、記憶の奥にしまわれている。だが、2022年1月から3月にかけて放送されたテレビアニメ『平家物語』は、“いま”を生きる視聴者の心を、大きくゆさぶった。

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原作となった現代語訳『平家物語』(2016年 河出書房新社)は、稀代の語り手として活躍する小説家・古川日出男の手によるもの。「私は、平家が語り物だったという一点に賭けた」と古川が書くように、多くの声と音が響き合う、鎮魂の物語を浮かび上がらせた圧巻の一冊。 photo: Seiichi Saito

各メディアが絶賛し、「普段アニメを観ない人も観てくれた」と、プロデューサー・竹内文恵が話す本作。原作となった古川日出男の現代語訳に惚れこんだ竹内を起点に、他2名のプロデューサーも並走。『映画 聲の形』で知られる監督・山田尚子と脚本・吉田玲子のコンビ、そして高野文子ら、トップクリエイターたちが集った。いまを生きる我々と地続きだと感じられる人々が笑い、涙し、祈る。古典が見事に現代性を獲得した、傑作アニメーションだった。

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右:キャラクター原案を務めたのは、漫画家の高野文子。1979年に『絶対安全剃刀』で商業誌デビューして以降、近年も『ドミトリーともきんす』などで多くのファンをもつレジェンドだが、アニメへの本格的な参加は初。 左:長い髪を後ろで三つ編みにしている平徳子をはじめ、多くのキャラクターに息吹が宿った。  

その背後には、気骨のある“仕掛け人”竹内の姿があった。作家性の強い作品を成立させるべく、海外への配信セールスを算段し、適正規模の予算を組む。スタッフの健全な労働環境を整える一方、企画や現場の熱を届けるべき視聴者に届けるための必要十分な宣伝を打つ。「深夜アニメの主流でないとされる企画は、どうしたら“存在する”ことができるのか」と考えてきた竹内の精神も、本作には確かに息づいている。

朗らかで謙虚な人の胸に宿る、強い信念。作品から作品へと「事業として続けること」を目指し、また走る。「毎回、無我夢中です」

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左:移ろいゆく世界をひたすら見つめる、アニメオリジナルのキャラクター・びわ。右:自らの境遇に抗う平徳子(平清盛の娘)など、もがく人物たちが多視点で描かれる。写真は、徳子が出家をほのめかす場面。 ©「平家物語」製作委員会

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びわの語りがひとつの結び目となる。私たちの日常までつながる“戦いの後”まで映像化したいという竹内の願いは、『平家物語』最後の巻『灌頂巻』の内容を扱った、痛切なるフィナーレとして結実した。 ©「平家物語」製作委員会

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『平家物語』

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©「平家物語」製作委員会

平安末期、栄華を極めようとしている平家一門。亡者が見える目をもつ平重盛は、未来が見える目をもつ琵琶法師の少女・びわと出会う。「お前たちはじき滅びる」。やがて戦いが始まり─800年の時を超えて紡がれる、祈りの物語。

『平家物語』

監督/山田尚子
出演/悠木 碧、櫻井孝宏ほか 2022年 深夜アニメ 全11話
発売/ポニー キャニオン Blu-ray box ¥29,700

全話を収録、特典には作品解説ブックレットやオーディオコメンタリー、びわ(声:悠木 碧)の 琵琶語りCDなど。8月31日発売予定。

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OTHER PROJECTS

劇場アニメーション『犬王』

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© 2021 “INU-OH” Film Partners

古川日出男が『平家物語』現代語訳後に書いたスピンオフ的小説が原作。湯浅政明監督によるミュージカル・アニメーション。脚本・野木亜紀子、キャラクター原案・松本大洋ら、本作もスタッフが豪華だ。

『犬王』

監督/湯浅政明
出演/アヴちゃん(女王蜂)、森山未來ほか 2022年 日本映画
1時間37分 全国の劇場にて公開中

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竹内文恵のFAVORITE THINGS

「カート・ヴォネガットのマグカップ」

『スローターハウス5』『猫のゆりかご』『ガラパゴスの箱舟』などの小説で知られる巨匠カート・ヴォネガットの数々の言葉が描かれたマグカップ。「考えをめぐらせるために、夏でもひたすら温かいお茶を飲んでいます」。一生使えるように、何個も買い込んでいるという。

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