
お金持ちになる人や成功者で、「私は運が良かっただけです」と話される方は多い。バレーボール元日本代表の川合俊一さんの講演で聴いた話を少しご紹介しよう。川合さんの体感的には「運の量は決まっている」のだという。投機のことを「ゼロサムゲーム」というのと同じ原理のようだ。ゼロは数字の「0」でサムは合計のこと。市場に参加している人の利益と損失の合計がゼロになるということをゼロサムゲームという。それと同じように、今この世界に存在している人の「運の量」が決まっているのだというのだ。
川合さんは「運」を取り合いしているようなイメージを持っていらした。ラッキーな人がいればアンラッキーな人もいるという。だから運をリセットしてしまうような言葉は、絶対に言わないのだそうだ。つまり「あー、オレ運が悪いな」とは絶対に言わない。言った瞬間から、運が逃げていくのだという。
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運をつかんで上手くいく人は?
そして「運」は均等に来てくれるが、捕まえに行かない人が多いともいう。なぜ捕まえに行かないのかというと、捕まえようとした時に実力を持っていないからだ。「運」を使いこなせないのだ。一流といわれるスポーツ選手は、努力するのは当たり前だから、実力があって「運」をつかめば上手くいくという。
仕事で上手くいく人も同じようなケースが多い。同じ仕事をするにしても、努力した人や仕事を円滑に進めるように知恵を絞った人は、他の人よりも有利な条件で取引できるケースがある。これも大きな取引の話がきた時に受け入れられる実力が伴っているから、チャンスを手にできるのだ。びっくりするくらい仕事がうまくいくことがあるという事は、努力した経験のある人からよく聞く話だ。
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運のつかみ方その1→面倒でも努力を惜しまない

努力もしない・運もつかめない人ほど「世の中には上手い話などない」と怒ってしまう。筆者も営業の仕事をやっていた頃に遭遇したことがある。当時は、会社の電話を誰よりも早く取ることを頑張っていた。なぜか営業部に新卒社員はほぼ配属されず、筆者より後に入社した方は、ほとんどが年上だった。
何年も筆者が最年少だったので、電話は一番最初に取らなければいけない風潮だった。いわゆる雑用を何年も引き受けてきたのだが、そのおかげで「上手い話」も実はゲットしていた。「予算が余ったから年度内に広告を出したい」という問い合わせ電話が何回かあったのだ。誰よりもたくさん電話を取っていたからめぐりあえた「運」だった。「運」というのは、努力の延長線上にあるのだと感じた。
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運のつかみ方その2→ポジティブに考える
どうして「運」を受け入れない人がいるのか、ということについて考察してみよう。筆者の例では、誰よりも早く社内の電話を取っていたので「運」も舞い込んだ。つまり努力したことでチャンスをつかめた。それは努力に対してポジティブな考えを持っていたからだ。筆者は「誰よりも早く電話を取る」ことはむしろラッキーだと考えていた。
たまには、怒っている顧客の電話を受けることもあるが、怒っている顧客は、既に売上があがっている顧客だから、ほとんどは自分の担当ではない。なので、電話を早く取ったからといって損な役回りになることは、ほとんどなかったのだ。
逆に「上手い話」も中にはあるので電話に早く出られるのはラッキーだと考えていた。ところが中途採用で筆者より年上で営業部に配属になった方達は、電話を早く取ることはなかった。
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後知恵バイアスでは大きな損をする

また、運の悪い人ほど、チャンスに巡り合った人に対して強くたしなめたりする。実際に筆者がチャンスの電話を取った時は「俺が元いた会社では、そういう不公平が無いように電話を取る順番が決まっていたんだよね」なんて言われた。筆者としては順番制度にして電話を取っていただいても良かったのだが、結局電話を筆者よりも先に取る方はいなかった。そうたしなめる方ほど嫌なことがあると「やっぱり俺って、ついてない」などという。
行動心理学では「やっぱりついてない」と考えることを「後知恵バイアス」という。自分に起きた嫌なできごとは「事前に知っていた」と、片付けることで自分にストレスがかからないようにしているのだ。「あの試験は、落ちると思っていたんだよね」なんていうのも後知恵バイアスだ。
これって、とてももったいない考え方なのだ。「やっぱり俺って、ついてない」という思いが根底にあると言い訳にはなるが、状況の改善にはならないからだ。ついてないと感じているのならば事前に対策を講じていれば良いだけだ。
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そんなに「上手い話」はない?
以前、顧客に言われてビックリしたことがある。iDeCoの制度を成人したご子息に紹介したら、「そんなに上手い話はない」と言われたのだそうだ。同じ話を他の兄弟に話したところすぐにiDeCoをはじめたようだが、兄弟でも受け取り方が違うと感じたそうだ。
その話を聴いて思い出したのだが、筆者の発行しているメルマガでiDeCoの制度を紹介したら「国が提案するものは、全て搾取のためだと思っていた」という感想が届いたことがあった。iDeCoは、簡単に言えば、自分のお金で年金の上乗せができる制度だ。年金なので、掛金には税控除がある。厚生年金でも、国民年金でも税控除があるのと同様に税控除ができる。自分の老後資金を運用することで税金が控除できるのだから「上手い話」なのだ。
ちなみに会社員の方の上限は月額2万3000円、年間27万6000円の掛金でiDeCoの税金の還付金を計算してみた。所得税率5%~20%の方で試算してみると下記のようになる。かなりの節税効果がわかるだろう。
税率5%の方は、年間4万1,400円、30年で124万2,000円
税率10%の方は、年間5万5,200円、30年で165万6000円
税率20%の方は、年間8万2,800円、30年で248万4000円
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感謝することや諦めないことも大事
30年間で年収によっては、約250万円の税金が戻ってくるのは「チャンス」といえなくもない。社会保険の制度を学ぶ努力をしていれば「チャンス」だと、スッと受け入れられるのだ。iDeCoの制度を「そんな上手い話しはない」と片付けてしまう前に年金制度をよく理解していることで「チャンス」を受け取れる。
冒頭で話したバレーボール元日本代表の川合さんは「感謝」して、常にポジティブでいることで、さらに運を引き寄せるとも話していた。仕事をしてお金がもらえることは、感謝の対価だ。働くとは、「傍」の人を「楽」にすること。仕事をしっかりして、楽になる方を増やし感謝の対価のお金をいただけることにまた、感謝をする。そういう考えが大事ということだ。そして「諦めない」ことが大事とも、話されていた。川合さんよりも上手なバレーボーラーはいたのだという。どんなに上手でもキツイ練習やケガで諦めてしまった方を多く見てきたのだ。それでもご自身は、キツイ練習をあきらめずに毎日頑張ることで、運をつかみ日本代表になったのだ。
【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/