CFCL高橋悠介インタビュー|現実の社会の中で、 いま求められる 服づくりを目指す。【創造の挑戦者たち#66】

  • 写真:野村佐紀子
  • 文:高橋一史
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Yusuke Takahashi●1985年、東京生まれ。2010年、三宅デザイン事務所入社。13年、イッセイミヤケメンのデザイナーに就任。20年、独立しCFCL設立。21年、日ファッション大賞 新人賞・資生堂奨励賞受賞、FASHION PRIZE OF TOKYO受賞。22年、パリ・ファッションウィーク秋冬に参加。同年、東京・ファッションウィークに参加。

最新のビジネス用語を交えて淀みなく話す高橋悠介のブランド説明を聞いていると、空想世界に生きるファッションクリエイターのイメージは消え去る。市場を冷静に分析するその姿勢は、あたかもベンチャーキャピタルの投資家のようだ。ファッションデザインの現場で働く彼は間違いなくデザイナーだが、自身が2020年に立ち上げたアパレル会社のオーナーであり、創作活動のすべてを担うディレクターでもある。主たる肩書は、「クリエイティブ・ディレクター」。社会全般に目を向けて道を切り開く人にふさわしい呼び名だろう。彼は、自身のCFCLのあり方をどう考えているのか。

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消えた例を多く見て、より“ニッチ”を目指した

「学生の頃からブランドをやりたいと思っていましたが、ビジネスとして成立せず消えた例を数多く見てきました。本来、ライフスタイルの中心にあるファッションはとてもポテンシャルがある産業です。そこで、よりニッチなアプローチを目指しました。新しく立ち上げるブランドとして、現在選択すべきことを盛り込んだつもり。いまは服の過剰生産が社会問題となり、本当に必要とされるファッションしか成立しません。自分の美意識だけで勝負するのは難しいからこそ、社会に求められるものを提供することにしました」

CFCLはニットに特化したコレクションを展開する。3Dコンピューター・ニッティングで編み、人の手いらずで服が完成する「ホールガーメント」の技術を活かしたアイテムが主軸製品。廃棄される材料も少ないニットを主軸とするブランドにしたことに、高橋が考える社会性がある。

「コロナ禍で始めたブランドですから、服づくりと同時進行で時代感のあるコンセプトを固めていきました。ニットは男女問わず着られるダイバーシティ・インクルージョン。ストレッチ性があり体型もカバーできるから、着る世代もフリーです。また、SDGsに基づく素材を使い、透明性のあるサプライチェーンを通じた取引も重要視しています」

CFCLの服はリモートワークにも対応する。「目指すのは、家で快適に過ごせて、そのまま人に会える品格も持ち合わせる服。リラックスしていて洗練された雰囲気もあり、かつ洗濯機で洗えるイージーケアな服でもあります」

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デジタル×フィジカルで、新たなショーの形を探る

世界的ブランドのデザイナーだった高橋のファッション業界での知名度は高く、CFCLは当初から大きな注目を集めた。それでもおごることなく、モノづくりにもショーにも新人のようなスタンスで臨む。今年の2月末から3月あたまにパリコレに初参加。続く3月の東京ファッションウィーク期間中には、表参道ヒルズで挑戦的なプレゼンテーションを行った。

「コロナ禍で新作発表の方法が、スマホで見られるデジタル(映像)か、会場に来てもらうフィジカル(リアルなショー)かの選択を迫られていたなかで、東京で行ったのがその両面からのアプローチ。会場に7×5mのスクリーンを3枚並べ、人間のモデルではなくマネキンを20体置き、14個のスピーカーからサラウンド音を流しました。デジタルをフィジカルな体験として持ち帰ってもらう試みです。映像は、雪山で撮ったものとスタジオで撮ったものをミックスしました」

プレゼンテーションはメディアや業界関係者に限らず、学生などの一般向けにも開放した。

「ファッション業界でもSNSで個人の発信力が高まり、メゾンブランドがショーにインフルエンサーを呼びフロントロー(最前列の特等席)に座らせる時代。我々も購入者に直接届くプレゼンテーションを行いました。(一般の方を招待したのは)ブランドの新作発表を、新鮮な気持ちで見ていただきたかったという狙いもある」

市場と他社の動向を見定め、ほかと被らない方向を目指す高橋。彼がデザインの評価に加え、ビジネス面でも大きく成功した暁には、個性の乏しい服が大量生産され、余剰在庫にあえぐ日本のアパレル産業に大きな影響を及ぼすかもしれない。

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WORKS

CFCL VOL. 4 コレクション

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CFCLとは、「Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)」の略。「Knit-ware」(ware=器)をコンセプトにコレクションを発表している。写真は立ち上げから4シーズン目となる22-23年秋冬のデザイン。

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蓮井幹生ポートレート・プロジェクト

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写真家の蓮井幹生とともに、CFCLのペルソナとなる人物たちを大判フィルムで撮影したポートレイトプロジェクトを進行中。衣服そのものを改めて見つめ直すプロジェクトとして立ち上げられた。

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ライフサイクルアセスメントの実施

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シーズン毎に、製造・流通から消費者が着用・洗濯し廃棄されるまでの環境負荷を測る、ライフサイクルアセスメントを実施し、その結果を発表している。写真は、定番アイテムの温室効果ガス排出量を表したもの。

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※この記事はPen 2022年7月号より再編集した記事です。