PORIN(Awesome City Club)インタビュー|音楽とファッションの密接な関係を取り戻す【創造の挑戦者たち#63】

  • 写真:野村佐紀子
  • 文:新谷洋子
  • スタイリング:池田未来 (in the pink)
  • ヘア&メイク:クジメグミ (LUCK HAIR)
Share:
2014年にAwesome City Clubに加入し、atagiとモリシーの3人で活動中。18年には自らディレクターを務めるアパレル・ブランドyarden(ヤーデン)をスタート。MONDO GROSSOやGLAYなど他のアーティストの作品でゲスト・ボーカルを務める機会も増えている。

レコーディングでしばしば長い時間を過ごすというスタジオに現れた、Awesome City ClubのPORIN。髪の色はトレードマークだったブルーからブロンドへ変わり、新しい年を迎え、ニュー・アルバム『Get Set』の発表を前に気持ちを新たにしていることを印象づける。

「新作にはめちゃくちゃプレッシャーを感じています。去年よりいい年にしたいし、“『勿忘』の人”ではなく、Awesome City Clubとして認識されなければと思っているので」

PORINとatagi、モリシーの3人から成るバンドにとって、その「去年」は飛躍の1年だった。デビューから6年を経てシングル『勿忘』が大ヒット。年末は第72回NHK紅白歌合戦への初出場で華々しく締め括った。

「ここ数年間は、バンドをどう存続させていくのかという問題もあったし、コロナ禍でライブもできなくなった。とにかく苦しかった時期で、『勿忘』には本当に救われました。恋愛の歌だけど、“春の風を待つあの花のように”と、自分たちについて歌っていたようでもあるんです。私たちもずっと待っていた春の風と巡り合えたので(笑)。アーティストとしてやっと認められた気がして、自信がつきましたね」

そう語るPORINが創作や表現することに関心を抱いたのは、造園業を営む父、音楽やファッションを愛する母をもつ、彼女の家庭環境と無関係ではなさそうだ。

「実家に和風の庭があって、季節によって移り変わる風景を間近で見てきたので、“変化するもの”が好きだったのかな。自由になんでもさせてもらえる環境で、文化に触れる機会も多くて、気づいたら音楽をやっていました」

音楽への入り口は、母が聴いていた日本のフォーク。その後2000年代のバンド・ブームを受けてギター教室に通い、大学時代は被服学科で学ぶかたわら路上で歌って経験を積んだ。「路上演奏が盛んな時代で、そこに希望がある気がしたんです。おかげでメンタルが強くなりました(笑)」。そして14年にAwesome City Clubに参加。atagiとともにシンガーを務めるほか、一部作詞も手がけ、その存在感はバンドにゆるぎないアイデンティティを与えている。

②202201190468_3.jpg

---fadeinPager---

“ファッション”という、自分を表現できる場所

しかし目下の彼女が「いちばん純度が高い形」で自分を表現している舞台は、別の場所にある。4年前にスタートしたファッション・ブランドのyardenだ。ブランド名は「庭」を指すふたつの英単語にちなみ、シーズンごとに特定の植物をモチーフにしてコレクションを展開しているという。

「“Awesome City ClubのPORIN”にはバンドのフィルターがかかる。でもyardenは、幼少期から庭で見てきた、刹那的な美しさのようなものをもっと掘り下げたくて始めたので、原点回帰にもなる場所なんです。いまは私自身が好きで着ている服の延長というテーマでやっていますが、ファッションは変わっていい。テーマにとらわれずに柔軟でいたいし、音楽でもファッションでも、変化を恐れないという姿勢は共通していると思います」

また、元来密接な関係にあったファッションと音楽が、最近は分断されていると指摘する彼女は、「私がファッション・アイコンになれたらいい」と意欲を見せる。

「音楽を聴けば必ず、ファッションともつながるはず。なのにそういう文化がすたれて、ファッションが好きなミュージシャンが少なくなった気がするんです。だから人前に出る時はいつも、ファッションで“攻める”ことを意識します。もちろんやり過ぎても自己満足になるだけなので、バランスが大切。すべてのことは、センスでしかないなと痛感させられます」

そのセンスを磨き、クリエイティブであるために心掛けていることとして、PORINは「人と会うこと」を筆頭に挙げた。

「いろんな人の思想に触れることで、新しい発想が生まれることが多々あります。特に、異なるジャンルのクリエイターから影響を受けているかもしれません。現場感も大事にしています。みんななにを着ているのか? なにを聴いているのか? いつもそういうことに敏感でいたいですね」

③202201190133_2.jpg
ニット、パンツ、シューズ/すべてステラ マッカートニー(ステラ マッカートニー カスタマーセンター TEL:03-4579-6139) リング/すべてジョージ ジェンセン(ジョージ ジェンセン ジャパン TEL:0120-637-146)

---fadeinPager---

WORKS

④acc_GetSet_cover_通常.jpg

4thアルバム『Get Set』

前作『Grower』から13カ月、早くも完成した4枚目のフル・アルバム。PORINによると「1曲1曲の強度を上げること」をテーマに掲げて制作され、多様なジャンルを網羅する一作。全10曲収録予定、3月9日発売。

⑤ya-04.jpg

アパレルブランド「yarden」

自らメンズの服も愛用するPORINが、ユニセックスなサイズ感を意識してデザインするブランド。2022年春夏コレクションではエアープランツをモチーフに、「着方によっていろんな表情が見える」服作りを試みた。

⑥.jpg

全国ツアー「Awesome Talks One Man Show 2022」

4月2日の愛知Zepp Nagoya公演を皮切りに全国6都市をまわる、約2年ぶりの全国ツアー。現在の3人体制では初となる。4/3大阪、4/10東京、4/15北海道、4/17宮城、5/1福岡の計6公演を予定している。

※この記事はPen 2022年4月号より再編集した記事です。