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落語家・柳家喬太郎が「ウルトラマン落語」を創作するに至った理由とは? ウルトラマンに夢中になった幼い頃の思い出

  • 写真:大河内 禎 
  • 文:高野智宏
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「変身ポーズはあんまりやってないかな(笑)」と、師匠はカメラに向かって大サービス。

子どもの頃にウルトラマンと怪獣に出合って受けた衝撃が忘れられない――。そんなファンの声を代表して落語家として活躍する柳家喬太郎さんにその想いを語ってもらった。

落語とウルトラマン、どちらのファンでも笑わせるのが噺家です

「ウルトラマン落語」をご存知だろうか。これは現代の落語人気を牽引するひとり、柳家喬太郎師匠がウルトラマンを題材とした、創作および古典落語の改作の総称だ。

「創作落語は自分の中にあるものをネタとしてつくり上げる。そのひとつが、子どもの時分に夢中になって観たウルトラマンなのです」

夢中になった理由には、師匠が育った環境にも起因するようだ。

「私が育ったのは東京・世田谷区砧の旧大蔵団地。近隣には円谷プロや東宝などがあり、また、特撮番組で使われている建物を見ながら通学したりと、撮影の現場が身近な環境でしたね」

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ウルトラマンカラーの着物でポーズ。セブンカラーの着物も所有。

子どもの頃の想いを抱き続け、落語まで創作するにいたった師匠にとって、ウルトラマンや怪獣のどこが魅力的だったのだろうか。

「時代背景を反映した、セブンのストーリーに考えさせられるなど、後付けでは言える。でも、子どもの頃はそんなこと考えずに、ウルトラマンと怪獣の戦いに純粋に興奮していた。だからいまも『シン・ウルトラマン』の予告を観れば、『ウルトラマンだ!』『うわぁネロンガだ!』って悶えるわけです。好きな理由なんて愚問ですよ!」

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2016年の「ウルトラマンの日 in杉並公会堂」で披露された、古典話「抜け雀」の改作「抜けガヴァドン」や弟弟子の柳家喬之助による「ふたりのウルトラ」などを収録したDVD。『ウルトラマン落語』¥3,300(日本コロムビア)

また喬太郎師匠は、ウルトラファンありきと思われがちな、ウルトラマン落語への偏見に釘を刺す。

「題材はウルトラマンであれ落語。普段の高座でも演ります。元ネタを知っていればより楽しめるけど、知らないお客様にも笑っていただくのが私らの仕事。それができる噺家でありたいです」

柳家喬太郎

落語家。1963年、東京都生まれ。大学卒業後、大手書店に勤めるも落語家への夢を捨てきれず、1年半で退職し柳家さん喬へ入門。2000年、12人抜きで真打ちに昇進。新作落語の他、師匠譲りの古典噺も得意とする。06年の芸術選奨文部科学大臣新人賞など受賞多数。

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※この記事はPen 2022年6月号「ウルトラマンを見よ」特集より再編集した記事です。

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