パドラーズコーヒー・松島大介が偏愛する、憧れの存在が手がけたオリジナルの椅子

  • 写真:竹之内祐幸
  • 編集&文:山田泰巨

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椅子を愛する、パドラーズコーヒー代表の松島大介さん。偏愛する一脚について、その想いを語ってもらった。

オリジナルチェア/マイク・エーブルソン

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青く塗装されたカウンターの腰板、眼鏡型の天井照明など、エーブルソン夫妻のこだわりが随所に。

コーヒーと空間を楽しみに日々、多くの人で賑わう「パドラーズコーヒー」の2号店「LOU(ルー)」が中野にオープンした。ここはオーナーのひとり、松島大介さんの実家をリノベーションしたものだ。自らも空間づくりに携わる松島さんは今回、かねてから尊敬するプロダクトブランド、ポスタルコのマイク・エーブルソンとエーブルソン友理に店内のデザインを依頼した。松島さんが腰掛けているハイスツールや椅子もまた、彼らがデザインしたものだ。

「僕は1を2にするタイプですが、マイクさんと友理さんは0を1にできる人。見たことのない空間をつくり上げてくれると考えていました」

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店のイメージソースであり、店名の由来となったソウルシンガー、ルー・コートニーの『アイム・イン・ニード・オブ・ラヴ』。

彼らがデザインした空間は細部までオリジナルを貫く。オーク材の椅子は木の温もりを感じさせ、背と座の中央に向けてパターンを彫り込むなど細工も細かい。中心に向かって傾斜する座面は座った時の収まりもよい。ステンレス素地の円錐フレームをふたつ重ねた脚部は接合部分を木製リングでカバー。さまざまな構造物に学びを得ながらデザインを起こすエーブルソン夫妻が生み出したかたちは、唯一無二の特別な椅子となった。木工職人の小石宗右、金物職人の河合広大が制作を請け負っている。

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円錐をふたつ重ねたユニークな椅子。背もたれはダイヤ、三角、円に抜かれ、手がかりとなる。

「テーブルやカウンターの天板にも3㎜の銅板を使っています。コストを抑えるためにもう少し薄くできないかと相談もしましたが、やはり厚みでまったく肌触りが違う。カウンターを青く塗ると聞いた時も驚きましたが、出来上がるとすべてに納得し、そのどれもが最高なんです」

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2階のゲストルームに置かれる椅子はヴィンテージの椅子をもとに制作。ヨーロッパに憧れる、武骨なままのアメリカのデザインが好きだという。

すべてがオリジナル。その思いは催しやワークショップ開催時のみ営業する上階のイベントルームにも貫かれる。仲間が集う遊び場のような空間を目指し、松島さんが友人たちとつくり上げた。細部まで宿る彼らの思いは、街角のカフェとして人々の心に根付き始めている。

松島大介

1985年、東京都生まれ。中学卒業後に渡米、ポートランドで学生時代を過ごす。2013年に共同代表の加藤健宏とともに「パドラーズコーヒー」を設立。15年に現在の場所に旗艦店を開店。家具雑貨店「ブルペン」にも携わる。

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※この記事はPen 2022年4月号「名作椅子に恋して」特集より再編集した記事です。