建築家も市民もみんなが当事者、過程も設計も「開かれた工場」に

  • ポートレイト:齋藤誠一 文:久保寺潤子

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施設は北海道砂川市に2022年春竣工予定だ。

北海道砂川市発の化粧品ブランドSHIROが率いる「みんなのすながわプロジェクト」では、工場併設の市民が集える施設を計画中。その設計を務める建築家に話を聞いた。

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エントランスを抜けてすぐの中央ホールのイメージ図。

Q1
設計をするにあたって、どんな点を心がけましたか?

SHIROは「地域の人が本当に使える場所」を一緒に考えられる建築家を求めていました。建物だけでなく街づくり全体を考えるべきだと感じ、市民ワークショップにも参加。みんなが当事者となって計画が変化する、他にはないプロジェクトです。

Q2
初めて訪れたときの砂川という街の印象は?

真っ直ぐ伸びる一本道や季節ごとに表情が変わる遊水池。こんなに緩やかで広大な場所があるんだと驚きました。ピンネシリの山々を背に、人々が幸せに過ごす風景こそが美しいと実感できるよう、シンプルな建築にしたいです。

Q3
工場と付帯施設からなる建築のコンセプトを教えてください。

初めてSHIROの工場を見学したとき、その熱気に圧倒されました。機械化に頼らず手作業に込められたものづくりの尊い姿勢が感動を呼ぶはず。砂川にすでにある、働く人たちの豊かな日常を、多くの人へ開くことに価値があると感じています。

Q4
「開かれた工場」にするために、どのような計画を思い描いていますか?

工場見学の計画は最初からありましたが、途中で見学通路をなくし、ガラス越しに製造工程すべてが見える設計へと大幅に変更しました。ショップやカフェへ続くホール全体に向けて工場が開かれ、市民の日常と融合するイメージです。

Q5
市民ワークショップに参加して、 わかったことを教えてください。

最初は子どもがメインのコンセプトでしたが、大人も居場所を求めていることがわかり、コンセプト自体を変更しました。家具も工夫して多様性のある居場所を設計しています。ジェンダーフリートイレの意見も取り入れました。

Q6
砂川の人々に、この建築をどのように使ってほしいですか?

みんなで作り込める場所にしたいですね。林業従事者の皆さんと一緒に近隣の山から間伐材を調達して外壁に使い、市民と一緒に丸太ベンチを作ったり。みんなで種から育てた在来種を植樹してその木をまた使うという循環も考えています。

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アリイイリエアーキテクツ●建築事務所シーラカンスアンドアソシエイツ出身の有井淳生(左)と入江可子(右)が2015年に独立。代表作に盛岡市のナガサワコーヒー、ヘラルボニーギャラリーなど。建築をつくるのではなく健やかな空気をつくる、をモットーとする。www.ariiirie.com

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『みんなのすながわプロジェクトby SHIRO』

https://shiro-sunagawa.jp