美し国で育まれた、伝統業のコラボレーション

  • 写真:齋藤誠一(風景)、加藤佳男(静物)、蛭子真(食物) イラスト:黒木仁史 文:小久保敦郎

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左:1本ずつ糸を組んでいく昔ながらの手組み。伝統工芸士である前沢さんは、伊勢志摩サミットの国際メディアセンターでも手組みの実演を披露した。手組みでしかつくれない組紐もあるという。 右:前沢組紐店での組紐づくりの様子。機械組みは、柄をデータ化した紋紙と糸をセットして組紐を仕上げる。紋紙は手組みでの試作を経てつくられる。

多い年では年間1000万人を超える参拝者で賑わう伊勢神宮をはじめ、熊野古道、伊賀上野城などの名所を擁する三重県。観光資源の魅力に加え、松阪牛や伊勢海老など豊かな食材にも恵まれている。三重が「美(うま)し国」と呼ばれるのは、日本書紀で伊勢国がそう称されたことに由来するが、その言葉は単に海山の幸が豊富という意味にとどまらない。込められているのは、「美しく満ち足りた場所」という、より広い視点。文化が発展する際の重要な土台であり、実際、三重県ではさまざまな伝統・地場産業が県内各地で育まれてきた。

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伊勢神宮内宮の奥、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る正宮。域内は凛とした空気に包まれている。三重を代表する名所であり、“お伊勢さん”として親しまれるこの地は、古くから多くの参拝者が訪れてきた。伊勢神宮の正式名は「神宮」といい、内宮や外宮をはじめとする全125の宮社の総称である。 写真提供:神宮司庁

江戸時代に流行し、人々を虜にした松阪木綿もそのひとつ。天然藍の先染め糸で濃淡をつける粋な縞柄「松坂嶋(まつさかじま)」が人気を博し、人口100万人の江戸で実に年間50万反以上を売り上げたという。松阪に紡織技術が伝えられたのは5世紀頃。いまは明治7年創業の「御絲(みいと)織物」が、唯一の機械織り製造元だ。工場内を見回すと、昭和の頃から使い続ける年代物の織り機が並ぶ。

「新しい機械では綺麗に織れ過ぎて、松阪木綿らしい独特の風合いを再現できないんです」と話すのは、六代目社長の西口裕也さん。細部にまでこだわりつつ、松阪木綿の伝統を受け継いでいる。

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工場内で稼働するのは昭和30年代から使われている織り機が中心。「昔の機械だからこそ、直しながら長年使うことができる」と西口社長。

伊賀では、武具の装飾や和装の帯締めに使われる組紐が古くからつくられてきた。「伊賀くみひも」として国の伝統的工芸品に指定されたのは昭和51年。時代とともに従来の用途での需要は減少したものの、「前沢組紐店」の前沢恵津子さんは「お客様のオーダーに応えながら、新しい製品にトライするのが楽しい」と前を向く。近年は、組紐の技術を活かしたマフラーやポーチを商品化している。柔軟な発想で、伝承の手業を時流に合わせて未来へつなぐ。

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左:松阪木綿は天然の藍染糸を使うのが伝統のひとつ。御絲織物では染料の「すくも」を二次発酵させる専用スペースがあり、藍染糸から自社で手がける。 右:御絲織物の工場で出番を待つ、さまざまな色を纏った糸。縞柄が特徴の松阪木綿を中心に、独自ブランドの「みいと織」として伝統にとらわれない新たな製品づくりにもチャレンジする。 

他にも和紙や木工品、魚介、加工食品に至るまで、県内では優れた伝統工芸品や地場産品がつくられている。それらの魅力に改めてスポットを当てる試みが、「オール三重プロジェクト」だ。これまで選りすぐりの事業者が何度も集い、地域や業種の枠を超えて商品開発に向けて話し合いを重ねてきた。目指したのは新たなマッチングによる化学反応、そして素材のポテンシャルを引き出すコラボレーション。次ページ以降で紹介するのはその一部だ。たとえば前出の御絲織物は、独自ブランド「みいと織」として、白地の生地をワンピース用に作製した。前沢組紐店が手がけたのは、約8㎝の幅で組み上げたリボン状の組紐。数本を透明の糸で縫い合わせると生地のようになり、それをミニトートバッグとしてこれまでにない商品に生まれ変わらせた。

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右:南伊勢町の宿田曽(しゅくたそ)漁港にて。リアス式の入り江が美しい朝の港にイワシやフグ、伊勢海老など多彩な魚介類が水揚げされる。 左:伊勢湾から熊野灘まで南北1000㎞以上におよぶ海岸線を有する三重は、全国的にも水産業が盛んな県のひとつ。生鮮品の流通はもちろん、水産加工品の技術も長い年月をかけて磨き込まれており、干物や燻製など多くの名品を生んでいる。

オール三重プロジェクトには、三重の豊かな食文化を担う事業者も参加している。南伊勢町の「山藤」は、天日干しにした魚の骨をていねいに取り除き、串に刺して焼く画期的な干物で話題の海産加工品製造元だ。また、老舗同士で手を組みコラボ商品を完成させたのが、江戸時代創業の「下津醤油」と大正元年創業のはちみつ専門店「松治郎の舗」。食材については人気料理家のウエキトシヒロらが監修のもと、新たなアレンジメニュー開発も進められた。

今回手がけられたコラボ商品は伊勢市のセレクトショップ「衣 ジェネラルストア」や、神戸市の「じばさんele」、二子玉川の「蔦屋家電」で販売を予定している。新たな魅力を備えた、三重が誇る名品の数々に、大いに注目したい。

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業界を越えて集結した、ユニークで楽しいコラボアイテム

アンドケー(カフェド アン ダニエルズ)× 衣 ジェネラルストア
麻袋トートバッグ、ショコラ、コーヒー豆パック

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コーヒーカンパニー「アンドケー」は、自家焙煎コーヒー豆とコーヒーガトーショコラを「衣 ジェネラルストア」とのコラボによる麻袋トートに入れて発売。コーヒー豆の入る麻袋を再利用したバッグはH20×W24×D16㎝。¥5,500(税込、参考価格)/衣 ジェネラルストア

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これまで廃棄されていた麻袋をバッグの生地に有効活用。綿の裏地をつけ、持ち手のディテールにもこだわることで、軽く丈夫で長く使えるトートバッグに仕上げている。

前沢組紐店×衣 ジェネラルストア
伊賀くみひもミニトートバッグ

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着物の帯締めなどに使われ、“魅せる”と耐久性とを兼ね備えた組紐をバッグにした。財布や携帯など必要最低限の所持品を収納できる、現代的なサイズ感。バッグインバッグとしてもお薦め。各H18×W15㎝。各¥5,500(税込、参考価格)/ともに、衣 ジェネラルストア
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バッグの生地に使われているのは、装飾品としての紐をつくるために生まれた組紐の技術。幾重にも糸を組み込んだ柄は優雅で美しく、伝統的工芸品の新たな可能性を示している。

御絲商事×衣 ジェネラルストア
御絲織物ワンピース

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松阪木綿の製造元が独自ブランドとして手がける「みいと織」で無地の生地を作製。ゆったりしたサイジングのワンピースに仕立てた。普段着の着物に使われる生地を用いているので、カジュアルな着こなしにぴったり。フリーサイズ。¥22,000(税込、参考価格)/衣 ジェネラルストア
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反物用に小幅でしか生産していなかった生地を、洋服に向く広幅で特注。それにより生地の使用効率とデザイン性がアップした。綿のナチュラルな質感が生かされており、肌触りも心地いい。

松治郎の舗×下津醤油
かりんとうはにぃ(70g)

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三重県産の原料にこだわった、かりんとう。三重の伝統野菜「伊勢芋」の皮を生地に配合し、小麦粉や胡麻も三重のものを採用。「松治郎の舗」の蜂蜜と香ばしい醤油の風味がアクセントに。各70ℊ。各¥540(税込、参考価格)/ともに、松治郎の舗(TEL:0598-26-8133)
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江戸時代から受け継がれてきた伊勢芋の皮をはじめ、まさにオール三重の原料を集結してつくられた、かりんとう。カリッとした歯ざわりは実に小気味よく、食べ始めると止まらないおいしさ。

蒼築舎
専用バッグ付き コヘッツイ ハジメ

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「コヘッツイ ハジメ」は左官職人が手作業でつくったポータブルな土製かまど。上下逆にすれば七輪としても使用可能。帆布製の収納バッグとのセットで、アウトドアでも活躍。バッグはH25×W29×D40㎝。1合用セット¥37,400(税込、参考価格)/蒼築舎(TEL:059-332-1444)

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収納バッグの素材はテントにも使われる頑丈な帆布をセレクト。マチの部分の縫い方などテントづくりの技を反映させ、重量があるコヘッツイの収納に十分耐えうるバッグをつくり上げた。

クラフトアルマジロ×もくいち・マルゴ×衣 ジェネラルストア×角屋
チタン製カップ、県産木材プレート、みいと織バッグ

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「クラフトアルマジロ」のチタンカップギア、「もくいち・マルゴ」の天然木材プレート、「角屋」のハム&ソーセージ、そして「みいと織」のバッグをセットで発売。一部店舗では、それぞれの別売りも予定。バッグは、H31×W22×D10㎝。ソロツーリングセット¥22,000(税込、参考価格)/衣 ジェネラルストア
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モータースポーツの街、鈴鹿を拠点とするクラフトアルマジロはレース用オートバイのマフラーをつくるメーカー。入れ子式のチタンカップはマフラーを彷彿とさせるつくりで、その精緻な技術を実感できる。

衣 ジェネラルストア×ユニオン真珠
アクセサリー

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伊勢志摩地域の名産品である真珠をオリジナルのアクセサリーに。ポイントは、正装などで身につけるイメージの強いパールをカジュアルな指輪に仕立てたこと。気軽に使いたくなる価格も魅力的。アコヤベビーパールリング2 (パール2粒)¥5,830(税込、参考価格)、アコヤベビーパールリング5 (パール5粒)¥6,380(税込、参考価格)/衣 ジェネラルストア

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つくるのが難しく、希少性の高いベビーパールを使用できたのは、真珠養殖が盛んな伊勢志摩地域ならでは。バロックパール特有の表情も1粒ごとに異なっていて楽しい。

衣 ジェネラルストア×もくいち・マルゴ
キーホルダー

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良質なひのきのブランドとして知られる伊勢ひのきを使ったキーホルダー。イラストは伊勢うどんや真珠など伊勢志摩エリアの特色を描いたもの。爽やかなひのきの香りも印象的。各¥1,430(税込、参考価格)/衣 ジェネラルストア

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原料の伊勢ひのきは伊勢湾に流れ込む宮川、五十鈴川、櫛田川流域の森から搬出されたものを使用。キャッチーなイラストだけでなく、素材選びも地元産にこだわっている。

もくいち・マルゴ×大豐和紙工業
パーテーション

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コロナ禍で活躍する場が増えたパーテーションを、郷土の銘木と伝統の和紙がコラボして作製。伊勢和紙は各地の寺社で活用されている。H51×W60×D2cm。¥13,000(税込、参考価格)/もくいち・マルゴ(TEL:0598-46-1991)
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伊勢ひのきの美しい木目、そして伊勢和紙の独特な風合いなど、それぞれがもつ素材感をダイレクトに楽しめるつくり。土台は取り外し可能で、必要に合わせて縦横を変えて使うことができる。

蒼築舎×リビタフィッシュ
日本酒の熟成蔵

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貯蔵に向くとされ、古来より酒蔵などにも使われてきた土壁。その性質に着目し、土壁だけで成形した酒瓶ストッカーを考案。日本の住と食がコラボした新たな商品が誕生した。日本酒は別売り。H24×W14×D14cm。¥16,500(税込、参考価格)/蒼築舎(TEL:059-332-1444)
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日本酒の4合瓶を入れた様子。土の温かみがあり、インテリアとして室内に置けば、マイナスイオンの発生や消臭など室内環境を整える効果も期待できる。

藤総製陶所
焙烙(ほうろく)

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四日市萬古焼の製造元が、急須づくりの技を生かして焙烙を作製。素材は耐熱陶磁器。茶葉を煎じる際に状態を確認しやすいよう口を斜めにするなど、使いやすさを意識した細やかな工夫も。¥5,720(税込、参考価格)/藤総製陶所(TEL:059-331-4492)
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持ち手に伊賀くみひもを巻けば、熱さを軽減。ほうじ茶の他、コーヒーの焙煎、炒り豆などさまざまな食品を手軽に焙じることで、香りが一層引き立つ。

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三重が誇る24の事業者たち

オール三重プロジェクトで三重の魅力を発信する24の事業者。それぞれの拠点と代表商品を以下の通り紹介する。

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桑名市
①長島食品 冷凍パイ生地
②アンドケー 九華(くわな)ショコラ

四日市市
③藤総製陶所 焙烙(ほうろく)
④蒼築舎 コヘッツイ ハジメ
⑤日印食品開発 レトルトカレー

菰野町
⑥角屋 ロースハム

鈴鹿市
⑦加藤清芳園 伊勢茶
⑧クラフトアルマジロ チタンカップ

津市
⑨下津醤油 丸大豆醤油
⑩おぼろタオル オールインワンタオル

伊賀市
⑪前沢組紐店 伊賀くみひも

松阪市
⑫辻製油 フレーバーオイル
⑬松治郎の舗 国産はちみつ 蜜匠
⑭もくいち・マルゴ 伊勢の木の積み木

伊勢市
⑮エーライン びっくりえびふらい
⑯御絲商事 松阪もめん
⑰衣 ジェネラルストア 松阪木綿トートバック
⑱二軒茶屋餅角屋本店 イセカド・ペールエール
㉑伊勢製餡所 おいしい つぶあん
㉒ユニオン真珠 真珠
㉔大豐和紙工業 伊勢和紙

鳥羽市
⑲リビタフィッシュ 牡蠣の和風アヒージョ
⑳海童工房 魚寅 牡蠣の燻製

南伊勢町
㉓山藤 骨なし串ひもの

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豊かな食を味わえる、特別なフェアを開催!

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松阪牛はシンプルなグリルに、伊勢海老は味噌や柚子胡椒のソースで和風味に。クエン酸たっぷりの柑橘セミノールサワーを合わせて。写真はイメージ。

オール三重プロジェクトには、県内の豊かな食材を扱う事業者も多数参加する。そしてその魅力をいっそう引き出すべく、全13品のアレンジメニューが考案された。

監修したのは人気料理家のウエキトシヒロと、各地で郷土料理店を展開する企業「ワールド・ワン」。同社はこのほど期間限定で「三重の食フェア(仮)」を開催し、考案したメニューを提供予定。登場するのは松阪牛や伊勢海老など三重が誇る豪華食材を用いた料理の他、郷土料理のてこね寿司など。詳細はPen Onlineの記事やワールド・ワンのサイトをチェック。

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インスタグラムで23万人以上のフォロワーをもつ料理研究家のウエキトシヒロが、三重の食材をおいしくアレンジ。

衣 GENERALSTORE
販売期間:1月22日〜2月15日
住所:三重県伊勢市本町6-4シャレオサエキ1F 
http://www.kholomo.com


じばさんele 神戸国際会館SOL店
販売期間:2月10日〜2月13日
住所:神戸市中央区御幸通8-1-6神戸国際会館SOL B2階  
http://www.lantiki.com/ele


二子玉川 蔦屋家電 2F E-room
販売期間:2月7日〜2月13日
住所:東京都世田谷区玉川1丁目14番1号 二子玉川ライズ S.C. テラスマーケット
https://store.tsite.jp/futakotamagawa



三重の食フェア(仮)
開催期間:2月20日以降開催予定
開催場所:神戸市内を中心としたワールド・ワンの複数店舗
www.world-one-group.co.jp
※開催日時・内容などは変更となる場合があります。事前に確認をお薦めします。

問い合わせ先/衣 ジェネラルストア 
TEL:0596-22-1128 
www.kholomo.com

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