アートディレクター/プロデューサー/テクニカルディレクター 遠藤 豊

国内外でさまざまな文化的イベントの演出を手がけるテクニカルディレクター、遠藤豊。2021年7月から東京ミッドタウン・ホールで開催された「北斎づくし」展では、14年にパリのグラン・パレで行われた北斎展でもタッグを組んだ建築家の田根剛、映像クリエイターの阿部伸吾とともに、来場者を驚かせる新しい体験を再び生み出した。照明、音、映像とテクニカルな部分のデザインおよびエンジニアリングを遠藤が一貫して担うことで、『北斎漫画』の世界に生き生きとした動きを与えている。他にも、20年には東京・恵比寿と代々木上原で、数年後には取り壊される予定の民家を改修したオルタナディブスペース「などや」を立ち上げ、ギャラリーやプライベートキッチン、レジデンスへと転用する取り組みをスタートさせている。
『北斎づくし』会場

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空間デザイナー 吉添裕人
空間デザイナーとしてキャリアをスタートした吉添裕人。2019年、単独参加したミラノ・サローネの若手エリア「サローネ・サテリテ」にて発表したプロトタイプが、数々のデザイナーとコラボレーションしているポータブル照明ブランドのアンビエンテックの目に留まり、2年の開発期間を経て21年9月に発売された。火という自然現象を再解釈して現代の光に捉え直した「hymn(ヒム)」は、本物の火を思わせるゆらぎが特徴的だ。振り子と一体となり、磁力によって動くレンズの先端に光が灯って不規則にゆらぎ、光そのものを炎のように見せている。消灯する時は一瞬、光が強く瞬いてから消えるという細かな設計も驚きだ。取り外し可能なガラス製シェードと持ち手の形状には、伝統的な燭台へのリスペクトを感じさせる。
「hymn」

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建築家 川島範久
「人間にも地球にもよい循環」を生み出す『GOOD CYCLE BUILDING』の第一弾を手がけた建築家の川島範久。総合建設会社・淺沼組名古屋支店の築30年というビルを、循環型素材を積極的に用いてサステイナブルにリニューアルするプロジェクトだ。既存躯体を活用し、自然の光や風を取り込めるような改変を行うとともに、できる限り土や木などの自然素材を使用する工夫が重ねられている。持続可能な森林管理のもとに育つ吉野杉を最大限転用できるよう図ったり、通常であれば廃棄物となる建設残土を壁土の材料に用いるなどして、デザイン性の高い内外装や家具にアップサイクルしてみせた。その考え方には、時とともに変化する自然環境と共存するという、建築が理想とするあり方が描き出されている。
『GOOD CYCLE BUILDING 001 淺沼組名古屋支店改修プロジェクト』

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建築家 武田清明

2018年に隈研吾事務所設計室長を経て独立した若手建築家、武田清明。19年に発表した住宅「6つの小さな離れの家」をはじめ、自然と建築の「新しい関係性」を模索し、自然から得られる合理性によって、人間にとっての本質的な快適さを取り戻す建築を発表している。21年6月に竣工した練馬区の鶴岡邸は、建物自体が土地そのもののように植物が育つ環境となっているのが特徴だ。床・天井スラブに土を入れ地層のように深くするため、天井をヴォールト形状にした。「環境のための建築」を目指すことで、結果的に「人間が心地よい空間」となる建物は、完成した時から既に建築が自然へと還ってゆく未来を想像させる。近年、地球環境に配慮した建築が増えるなか、昆虫をはじめ人間以外の生物との共存まで視野に入れた挑戦的な試みを、個人邸で実現し続けている。
鶴岡邸
