9つの人気腕時計ブランドから、新定番をセレクト! 変わりゆく時代の頼れる相棒に

  • 写真:宇田川 淳
  • 文:笠木恵司

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流行に左右されない定番モデルは、ブランドの世界観を象徴し、変わらぬ魅力を発している。一方で、時代の変化に対応した“ラグジュアリースポーツ”と呼べるコレクションも増加中だ。新時代の相棒となるのは、どんな腕時計だろうか?

AUDEMARS PIGUET(オーデマ ピゲ)/コード 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ

新時代を拓く、ダイナミックなケース構造

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「11.59」には新しい1日まであと1分という高揚感と期待が込められている。円形のベゼルと裏蓋で八角形のミドルケースを挟み込んだ構造で、中空のラグを極薄のベゼルに溶接。新作はミドルケースにブラックセラミックを採用しバイカラー仕様に。自動巻き、18KPG×セラミックケース、ケース径41mm、パワーリザーブ約70時間、シースルーバック、テキスタイル加工のラバーストラップ、30m防水。¥5,335,000/オーデマ ピゲ ジャパン TEL:03-6830-0000

スイス・ジュウ渓谷で創業した複雑時計の名門、オーデマ ピゲの定番といえば、1972年発表の「ロイヤル オーク」と93年の「ロイヤル オーク オフショア」だ。とりわけ前者はいまをときめくラグジュアリースポーツの先駆けとされる。それから約四半世紀を経た2019年に「コード11.59 バイ オーデマ ピゲ」が発表された。正面の顔つきは正統派でも、中空のラグが造形する大胆なサイドビューに圧倒される。ムーブメントも3種類を新規開発。まさに11.59、1分後に到来する新時代の定番になるべく開発されたコレクションだ。

<定番モデルはコチラ>
ロイヤル オーク オートマティック

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ケースとブレスを一体型にした、“ラグスポ”の原点ともいわれる逸品。厚さ10.4㎜で、場面を問わずシームレスに日常使いできる。自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径41mm、パワーリザーブ約70時間、シースルーバック、50m防水。¥2,805,000/オーデマ ピゲ ジャパン

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HERMÈS(エルメス)/エルメスH08

新素材も採用した、スポーティなクッション型

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丸みを帯びたクッション型ケースが、面取りされたベゼルを経て真円のダイヤルに収斂される。「08」は、この形状と無と無限を意味する。ダイヤルのタイポグラフィも新しくデザインした。DLC加工を施したチタンケースで、傷がつきにくい。自動巻き、チタンケース(DLC加工)、ケースサイズ39×39mm、パワーリザーブ約50時間、10気圧防水。右:ファブリックストラップ。左:ラバーストラップ。各¥724,900/ともにエルメスジャポン TEL:03-3569-3300

エルメスは1920年頃から時計を手がけており、78年にはスイスのビエンヌに専門工房を設立。人気の定番を次々に生み出してきた。近年では2015年発表の薄型「スリム ドゥ エルメス」。ところが2021年に、これまでの殻を破るような新コンセプトの「エルメスH08(エイチ・オーエイト)」が登場した。ソフトなシルエットのクッション型ケースは、オンビジネスからオフタイムまで一貫して愛用できる普段使いが前提。ケース素材も軽量のチタンに加えて、超軽量で強度の高い炭素系新素材のグラフェンもラインアップしている。

<定番モデルはコチラ>
スリム ドゥ エルメス

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厚さ2.6mmの自動巻きムーブメント「H1950」を搭載した薄型モデル。ステンシルで型抜きしたようなタイポグラフィが手元に個性を添える。自動巻き、チタンケース、ケース径39.5mm、パワーリザーブ約42時間、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥902,000/エルメスジャポン
© Calitho

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HARRY WINSTON(ハリー・ウィンストン)/HW エメラルド・オートマティック 33mm

優美な煌めきを放つ、出色のエメラルドカット

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縦方向に伸びた八角形のフォルムが上品でエレガント、それでいて力強さも感じさせる。ベゼルに施されたファセットが華やかに光を反射し、ダイヤルのブルーのグラデーションとあいまって、ジュエリーのような存在感を放つ。自動巻き、18KWGケース、ケースサイズ39.3×33.3mm、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥2,530,000/ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーション TEL:0120-346-376

“キング・オブ・ダイヤモンド”と称されるハイジュエラーのハリー・ウィンストンが機械式時計に参入したのは1989年。バイレトログラードの永久カレンダーなどを備えたハイエンドモデルが目立つが、シンプルでエレガントな丸形の「HW ミッドナイト」がベーシックなコレクション。創始者ハリー・ウィンストンが最も愛したダイヤモンドのかたち、エメラルドカットをケースで再現した角形「HW エメラルド」は、2019年に待望のメンズがデビュー。ホワイトゴールドケースに施されたファセットが手元を格調高く飾る。

<定番モデルはコチラ>
HW ミッドナイト・オートマティック 42mm

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縦方向に伸びた八角形のフォルムが上品でエレガント、それでいて力強さも感じさせる。ベゼルに施されたファセットが華やかに光を反射し、ダイヤルのブルーのグラデーションとあいまって、ジュエリーのような存在感を放つ。自動巻き、18KWGケース、ケースサイズ39.3×33.3mm、パワーリザーブ約72時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥2,530,000/ハリー・ウィンストン クライアントインフォメーションTEL:0120-346-376

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A. LANGE & SÖHNE(A.ランゲ&ゾーネ)/オデュッセウス

ドイツの名門が切り拓く、“ラグスポ”の新境地

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歴史と伝統に誇りをもちながらも、立ち止まることを許さないA.ランゲ&ゾーネの新境地が「オデュッセウス」だ。ケース素材や防水性能などスポーツモデルの要素を導入。ただし、ダイヤルは左右対称で、端正な造形を継承した。自動巻き、ケース径40.5mm、パワーリザーブ約50時間、シースルーバック、12気圧防水。右:18KWGケース、ラバーストラップ。¥5,159,000 左:SSケース&ブレスレット。¥3,663,000/ともにA.ランゲ&ゾーネ TEL:0120-23-1845

A.ランゲ&ゾーネは1845年に創業したドイツの名門。第二次世界大戦後に東ドイツの国営企業に接収されたが、東西ドイツが統合した1990年末に奇跡的に再興。「ランゲ1」をはじめとする5コレクションを擁してきたが、2019年に「オデュッセウス」が6番目の仲間入りを果たす。標準モデルのケースに初めてステンレス・スチールを採用した他、新開発のムーブメントも毎秒8振動のハイビート。“スポーツ”とは言い切れないまでも、優美で精緻な“ラグジュアリースポーティ”と呼びたくなる斬新なモデルに仕上がっている。

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ランゲ1

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再興後の1994年に第1号のコレクションとして発表。時分針のオフセンター配置や大型分割式日付表示などが、後の時計業界に大きな影響を与えた。手巻き、18KPG、ケース径38.5mm、パワーリザーブ約72時間、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥4,477,000/A.ランゲ&ゾーネ

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PARMIGIANI FLEURIER(パルミジャーニ·フルリエ)/トンダ PF クロノグラフ

創業25周年を祝し、“黄金比”をアップデート

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オーバルの中にアレンジされた「PF」が新しいロゴ。ダイヤル全面に施されたバーリーコーン(麦の穂)と呼ばれる繊細な彫り模様も本コレクションに共通。針やラグのカーブ、ケースのプロポーションなどのデザインに黄金比を生み出すフィボナッチ数列が用いられている。毎秒10振動のハイビート。自動巻き、18KRGケース、ケース径42mm、パワーリザーブ約65時間、シースルーバック、100m防水。¥7,964,000/パルミジャーニ・フルリエ TEL:03-5413-5745

歴史的な古時計の修復で「神の手」と称賛された天才時計師、ミシェル・パルミジャーニが自らのブランドを立ち上げたのは1996年。複雑なベゼル構造の「トリック」をはじめ、独特の美学と高度な時計技術を駆使した多彩なコレクションを発表してきた。今年は記念すべき創業25周年を迎えたことから、ロゴも含めたアップグレードに着手。ブレスレットと連なる一体型ケースの丸形モデルを「トンダ PF」コレクションとしてデザインを一新。象徴的なムーブメントを搭載し、薄型2針からスプリットセコンドクロノグラフまで展開する。

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トリック クロノメーター

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「トリック」は円環の意で、ベゼルの装飾は古代ギリシャ建築の円環状の柱礎をイメージした。ギョーシェも端麗。自動巻き、18KRGケース、ケース径40.8mm、パワーリザーブ約55時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、30m防水。¥2,640,000/パルミジャーニ・フルリエ

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CHOPARD(ショパール)/アルパイン イーグル ケイデンス 8HF

堅牢なスポーツモデルを、流麗な文字盤で彩る

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ケースとブレスレットが一体化した手首に馴染みやすい構造に加えて、ベゼルは気密性の高いビス固定。業界初の輝きに優れた特殊ステンレス・スチールも話題に。この新作はチタンで軽量化しただけでなく、シリコンパーツを導入した高振動ムーブメントを搭載。自動巻き、チタンケース&ブレスレット、ケース径41mm、パワーリザーブ約60時間、シースルーバック、100m防水、世界限定250本。¥2,398,000/ショパール ジャパン プレス TEL :03-5524-8922

ショパールは1996年にマイクロローターを搭載した先進的なロングパワーの自動巻きムーブメントを自社開発。創業者ルイ-ユリス・ショパールの頭文字から「L.U.C」と命名された。以来、ジュエラーの枠を超えた本格マニュファクチュールとして目覚ましく発展。ドレスウォッチから超複雑時計まで幅広くラインアップするだけでなく、イタリアのクラシックカーレース「ミッレ ミリア」に協賛。記念モデルを製作してきた。2019年には次世代の定番となる高級スポーツコレクションを発表。それがこの「アルパイン イーグル」だ。

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L.U.C XPS

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環境や社会に配慮したエシカルゴールドを採用したドレスウォッチ。ダイヤルのサンレイ仕上げも美しい。自動巻き、18KWGケース、ケース径40mm、パワーリザーブ約65時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、30m防水。¥2,079,000/ショパール ジャパン プレス

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BELL & ROSS(ベル&ロス)/BR 05 クロノ ブラック スティール

都市を生きる大人に、洗練された空の計器を

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スクエアとラウンドとを組み合わせた幾何学的なフォルムを、なめらかな曲面で仕上げた「BR 05」のクロノグラフ・バージョン。9時位置の30分積算計と3時位置のスモールセコンドもベゼルと同形状。金属の質感を強調するサテンと鏡面のポリッシュで磨き分けており、武骨さの中に艶やかな煌めきを纏う。自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケースサイズ42×42mm、シースルーバック、100m防水。¥803,000/ベル&ロス 銀座ブティック TEL:03-6264-3989

ベル&ロスは1994年にフランス・パリで創業。航空機の計器盤を切り取ってそのまま腕時計にしたようなBRコレクションが爆発的な人気となり、世界的にブレイクした。ブランドのフラッグシップモデルに成長したことで、バリエーションも加速度的に拡大。大空だけでなく海洋にも進出して、ブロンズやセラミックケースなど多彩なダイバーズモデルを追加。やがて2019年には地上に降り立ち、大都会で活躍する人のための「時を刻む機械」として、ベゼルの四隅を流麗な曲面でデザインした「BR 05」が登場することになる。

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BR 03-92 ブラック スティール

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角形ケースに丸形ダイヤルという新機軸を世に広めた定番モデル。ケースの四隅をビス留めした武骨な意匠に、航空計器を思わせる黒×白のコントラストが映える。自動巻き、SSケース、ケースサイズ42×42mm、ラバーストラップ、100m防水。¥407,000/ベル&ロス 銀座ブティック

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LONGINES(ロンジン)/ロンジン スピリット

往年のパイロットウォッチを、モダンに再解釈

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伝説的な冒険家や飛行士がロンジンの腕時計に命を預けてきた。そうした歴史とパイオニア精神を現代的に甦らせた新コレクション。手袋のままでも操作できる大型リューズなど往年の意匠を残しつつ、シリコン製ヒゲゼンマイを導入した最新ムーブメントを搭載。この新作ではケースに軽量で頑強なチタンを採用。自動巻き、チタンケース、ケース径40mm、パワーリザーブ約72時間、ナイロンストラップ、10気圧防水。¥347,600/ロンジン TEL:03-6254-7350

1832年に創業したロンジンは、大西洋単独無着陸横断飛行で知られるリンドバーグが考案した航空時計「アワーアングルウォッチ」など、歴史に残る傑作を数多く輩出してきた。自社に充実したミュージアムをもつほど膨大なアーカイブがあるため、「マスターコレクション」などの人気定番に加えて、過去の話題作を現代的にリファインすることが少なくない。2020年に発表された「スピリット」も、往年のパイロットウォッチのエッセンスを再構成。ノスタルジックな復刻ではなく、モダンなヴィンテージテイストに仕上がっている。

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ロンジン マスターコレクション

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伝統を受け継ぐロンジンを代表するコレクション。このモデルはクロノグラフにムーンフェイズとトリプルカレンダー、24時間計を搭載。自動巻き、SSケース、ケース径40mm、パワーリザーブ約66時間、シースルーバック、アリゲーターストラップ、3気圧防水。¥419,100/ロンジン

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TUDOR(チューダー)/チューダー ロイヤル

次代を象徴する、クラシックとスポーツの融合

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チューダーが「スポーツシック」と称する、2020年発表のエレガントなスポーツモデル。細かな刻みを等間隔に施したベゼルが特徴的で、フルスペルの曜日表示に心を惹かれる人も多いだろう。ケースと一体型の5連ブレスレットが高い装着感を生み出す。自動巻き、SSケース&ブレスレット、パワーリザーブ約38時間、100m防水。右:ケース径41mm。¥262,900 左:ケース径38mm。¥257,400/ともに日本ロレックス / チューダー TEL:0120-929-570

チューダーは、ロレックスの創業者であるハンス・ウイルスドルフが1926年に立ち上げたファミリーブランド。2015年にロングパワーリザーブで耐磁性に優れた高精度ムーブメントを自社開発。18年に日本に正規上陸した直後から大きな話題となった。中心的なコレクションは「ブラックベイ」。チューダーのダイバーズモデルがもつ60年の歴史を結集。最新のムーブメントも搭載していることから、「ネオヴィンテージ」とも称される。このスポーツマインドをクラシックと融合した「チューダー ロイヤル」が第二の定番になりつつある。

<定番モデルはコチラ>
ブラックベイ

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チューダーを代表するダイバーズウォッチ。スノーフレークと呼ばれる時針やドーム型ダイヤル、大型リューズは1950〜60年代のモデルから着想。自動巻き、SSケース&ブレスレット、ケース径41mm、パワーリザーブ約70時間、200m防水。¥431,200/日本ロレックス / チューダー

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※この記事はPen 2021年12月号「腕時計、この一本と生きる」特集より再編集した記事です。