<日本×台湾 クリエイター未来予報>VOL.3 新田幸生 ✕ 馬場未織

  • 文:近藤弥生子

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10/30東京会場KITTEでおこなわれた、オープニング特別ダンス公演『浮花/フローティング・フラワーズ』。

日本と台湾。各ジャンルに精通するクリエイターそれぞれが考えるクリエイティブのいまと、未来のクリエイティブを予想する短期連載<日本×台湾クリエイター未来予報>。

第三回のゲストは「台湾ナウ」のプロデューサーであり、演劇とダンスの舞台制作、日台の国際交流を深めるプロジェクトを数多く手がける、日本生まれ台湾育ちの新田幸生と、2007年から「平日東京・週末南房総」という二拠点生活を家族で実践する建築ライター、NPO法人南房総リパブリック理事長の馬場未織。

アウトドアや多拠点居住といった「暮」をテーマに、クリエイションの今と未来について語ってもらった。

<暮/アウトドア・多拠点居住>の未来予報

台湾と日本は山や自然が多く、元々キャンプなどのアウトドアが人気であった が、年間費を払えば、両国にあるアウトドア温泉リゾートを利用できるファミリ ーワーケーションが日本のリモートワーカー達に人気に。第二の故郷として多拠点居住を開始する人たちも増えている。

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台湾で支持される「漫活(スローライフ)」ブームは、これからも続くはず。インターネットではなく、大自然に答えを探しに行くべきだとみんなが気付き始めています。
――新田幸生

ちょうど昨日は仕事で台湾東部の池上で開催された「池上秋収稲穂芸術節」に行ってきました。池上の大自然の中でコンテンポラリーダンスを舞うという最高の舞台でした。現地で暮らす「先住民(※)」の中学生たちが集まって「みなさんようこそ池上へ」と歓迎してくれた時には、思わず涙が出そうになりました。

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「池上秋収稲穂芸術節」の様子。提供:台灣好基金會 撮影:劉振祥

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メッセージ性の強い楽曲が人気の台湾バンド「生祥樂隊(Sheng Xiang & Band)」。台湾ナウのバーチャルコンサートホールでは、コミュニティ菜園をテーマにした楽曲も披露。トラックの荷台に乗り込み、汚染された都市から農村部へと向かうシーンが登場する。

台湾ではもう10年以上前から「漫活(スローライフ)」がブームです。日本と台湾の共通点に“スピードの速さ”があると思いますが、これから10年後にはますます時間をかけて作られたもの、たどり着くまでの過程こそが貴重であるという価値観が形成されていくと思います。今は分からないことをすぐインターネットで調べるけど、「それだけが正しい答えではない、大自然に答えを探しに行こう」とみんなが気付き始めているんじゃないかな。この流れはこれから先もずっと続くでしょうね。

※台湾原住民族
台湾では「先住民」という言葉が「すでに滅びた」というニュアンスをもって使われるため、元来その地域で暮らしてきたという意味で「原住民族」と呼ぶことを政府が定めている。ここでは日本語表現を優先して先住民と記載した。

自分が求めるのは海的、あるいは山的なものなのか。どういったコミュニティに身体を置くと心地良いかといった、暮らしに根ざしたところを深堀していくような未来があるのではないでしょうか。
――馬場未織

私も2007年から二拠点居住を始めた後にNPOの運営を通して様々な方々と関わってきましたが、平日にハードなデスクワークをしている方が、週末にこそ自然の中で体を動かす野良仕事をしたりと、パラレルなライフスタイルを送る方が増えていて、とても心強いです。コンピュータ社会で生きていると、“大地に接して暮らす”という人間の根源的な欲求に突き動かされていくような気がしますね。だからこの流れが失速したり、無くなったりすることはないと思います。

山で暮らすとメンタルも山とともにあろう、根を張ろうとしていきますし、海暮らしをしている方は骨格がしっかりして、オーラも開かれています。自分が求めるのは海的なのか、あるいは山的なものなのか。どういったコミュニティに身体を置くと心地良く感じるかといった、暮らしに根ざしたところを深堀していくような未来があるのではないでしょうか。

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里山では野良仕事に奮闘。

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新しく知り合った現地の方の写真を、自分からは撮りません。「お帰りなさい」「一緒に写真撮ろう」って言われたら、「やった!」と思います。相手の心の中に、自分を保存したいというモチベーションができたのかなと。
――新田幸生

私は日本の東京で生まれて、家族の都合で12歳から台湾に移住して、大学では短期留学で半年間ニューヨークに住んでいました。父はチリ、母はアジアとアメリカを行き来していて、二人いる弟は日本とアメリカにそれぞれいるという感じで、家族全員で会えるのは年に一度だけなんですね。小さい頃から多拠点居住をしてきたので、これが自分にとってはしっくりくるライフスタイルです。今は日本と台湾を行き来しながら国際共同制作のプロジェクトを行うことが多いです。

多拠点居住で心がけているのは、知り合ったばかりの人たちの写真を自分からは撮らないということですね。そこで写真を撮ろうとすると、関係性が薄くなる気がするんですよ。何回行っても、生活の様子を撮ったりせずに、テキストや絵を描くことで記録を残しています。それで相手から「お帰りなさい」「一緒に写真撮ろう」って言われたら、「やった!」と思います。相手の心の中に、自分を保存したいというモチベーションができたのかなと。

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日本人の劇作家・演出家の柴 幸男氏とともに手がけた演劇『我的星球』。台湾の現役高校生をキャストに迎え台南で公演が行われた。

人は生きる場所が自由で、それは権利だと思うけれど、それを行使できる人って実は少ない。能動的に「ここに住みたい」と思えることは大事です。だから、暮らす場所は一途じゃなくてもいいんじゃないかって。
――馬場未織

新田さんとシンクロしますね。私も「いつでも帰ってきていい」と言われると、涙が出るほど嬉しくなります。人は生きる場所が自由で、それは権利だと思うけれど、それを行使できている人ってじつは少ないんですよね。能動的にここに住みたいと思えることはすごく大事です。だから、暮らす場所は一途じゃなくてもいいんじゃないかって。

もちろん多拠点居住は、居住先の土地を使わせてもらっていることに違いないけれど、その土地をリスペクトする気持ちを忘れずにいれば、地元の方々へもそれが伝わって、心を開いてくれる時が来るんです。

そして、自分の存在を通じて2つの地域間が繋がっていくと、それがどちらの地域の人たちにも良い変化や刺激がもたらされるのではないかと思って、人間関係はつとめてオープンにしています。個人を中心とした姉妹都市づくりをやっている感覚があります。

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南房総では築120年の古民家で暮らす。

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アートは、それぞれの人が持つ日常の風景を作品へとトランスフォームできる鍵。自分たちの言葉や文化を知り、知ってもらうきっかけになれる。
――新田幸生

台湾では数年前から、歌や絵画などのアートにおいて、先住民や客家といった様々なルーツを持つアーティストが注目されています。彼らの活躍のおかげで、社会が中国語よりずっと前から台湾で使われてきた台湾語(閩南語)や先住民の言葉に誇りを持てるようになりました。

人は往々にして自分たちの文化の良さが分からなくなっていくものですが、アートはそれぞれの人が持つ日常の風景を作品へとトランスフォームできる鍵だと思います。ダンスを見て「どうしてそんな身体能力があるんだろう?」と思う人がいるように、自分たちの文化を知り、他の人からも知りたいと思ってもらえるきっかけになれますよね。

私自身は台湾語がパーフェクトではないので、コミュニケーションが取れないことに落ち込んだこともあったんですけど、ある時台南で出会ったおばさんから、片言の日本語で「君のことを知りたい人は、たっぷり時間をかけて話を聞くよ」と言われたんです。お互いを知りたいという気持ちがあれば、言語の壁は超えていけると信じています。

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先住民族プユマ族南王部落の出身、南王姊妹花(ナンワン・シスターズ)。プユマの山々や南王部落を象徴する聖なる丘などがデジタルに再現された「台湾NOW」のバーチャルコンサートホールで、その美しい歌声を聴くことができる。
バーチャルコンサートホールでは、台湾の先住民族にルーツのある昊恩(ハオウン)、南王姊妹花(ナンワン・シスターズ)、生祥楽隊(Sheng Xiang & Band)の3組が、台湾民謡や先住民族、客(ハッカ)の音楽作品を披露。

里山で暮らしていると、自然は皆にあまねく美しいものを見せてくれる場所だと思う。アートやデザインの根源は自然なのかなと。自分はそれを満たしていくはじめの一歩にいる。
――馬場未織

里山暮らしを始めたのは、子どもが虫や魚が好きだったというきっかけのほかに、もう一つ、人の頭の中でつくったものを評価したりされたりするデザインの世界と距離を置きたいという気持ちもありました。里山で暮らしていると、自然は皆にあまねく美しいものを見せてくれる場所だと感じます。そして里山の皆さんも、その美しさをきちんと感受しているんですよ。草刈りでも野ゆりだけ残してあったりね。私は美しいものに会いたいから里山に通っているというのもありますね。

それに、年を重ねることを肯定している方たちに出会えたり、自然や歴史について常に新しい発見があるから、「生き続けるっていいな」と実感することができます。
アートやデザインの根源は自然であり、自分はそれを満たしていくはじめの一歩にいるように思います。

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トウキョウサンショウウオの卵。

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新田幸生/日本生まれ台湾育ちのプロデューサー。国立台北芸術大学アートマネジメント大学院修了。フリーのプロデューサーとしてパフォーミングアートの分野で活躍するほか、ジャンルや国境を越えた制作に取り組む。近年は、アジア各地のコンサートや大型イベント、授賞式で演出、クリエーティブディレクター、アドバイザーとしても活躍。日々、ジャンル横断的な表現を追求するとともに、複数の日台文化交流プロジェクトを動かし、さまざまな手法で世界への発信を試みる。時には文章表現や翻訳、ダンスを通して、自分のペースで東京と台北を行き来している。2021年10月から台北CLOUD GATE THEATERのシアターマネジャーに就任。「Taiwan NOW」ではプロデューサーを務めた。

https://www.instagram.com/yukionitta/

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馬場未織/建築ライター、NPO法人南房総リパブリック理事長、関東学院大学非常勤講師。1973年東京都生まれ。日本女子大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2007年より「平日東京/週末南房総」という二拠点生活を家族で実践。2012年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市職員らとNPO法人南房総リパブリックを設立。里山学校、空き家・空き公共施設活用事業、食の二地域交流事業、農業ボランティア事業などを手がける。著書に『週末は田舎暮らし」、『建築女子が聞く住まいの金融と税制』など。Penオフィシャルコラムニスト

https://mb-republic.com/index.html

Taiwan NOW(台湾ナウ)

メイン会場:東京都千代田区丸の内2丁目7−2 KITTE
他、バーチャル会場(オンライン)/ 台湾・高雄(12月25日予定)
会期:10月30日〜11月14日
https://www.taiwannow.org/

Taiwan Nowの公式SNSで日本と台湾の{あるかもしれない}未来の予報を発信中
Instagram @taiwan_now_pr

Twitter @taiwan_now_pr


※開催日時・内容などは変更となる場合があります。事前の確認をお薦めします。

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<日本×台湾 クリエイター未来予報>VOL.3 新田幸生 ✕ 馬場未織

  • 文:近藤弥生子

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