冒険心をくすぐる、男の傑作ロングライフアウター5選

  • セレクト・文:高橋一史

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美しき機能性アウター、シーラップのピーコート。

男のワードローブのなかでアウトドアフィールドとリンクする服は、日常に冒険心を運ぶ手放せない宝物だ。そこにはファッションを超えた広大な世界が広がっている。いまやニューノーマルが生活の基盤になり、都会からの脱出に憧れる時代。ハードユースの服に袖を通したい気分が高まっている。アイテムを新しく入手するなら、ロングライフとモダンさを兼ね備えたものを選ぼう。ここに厳選した各国5ブランドのアウターは、その条件を満たすもの。大人しか似合わない本物の風格を、我が物にして着こなしたい。

ロングライフアウター① バブアーの歴史が注ぎ込まれたプレミアムジャケット

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バブアーのラインアップで最上位に位置づけられる、「ゴールド スタンダード」ラインのジャケット。フィッシングウエアのディテールを持つ。¥126,500(税込)

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内側を広げた姿も絵になる、持つ喜びを得られるこだわりの仕上がり。

英国王室御用達ブランドであるバブアーのカントリーウエアは、ショップやファッションブランドのコラボモデルも増えていまや膨大な種類がある。選べる自由度が増した反面、どれに決めればいいか迷うことも多いだろう。そんな人に“この一着”としてご注目いただきたいのが、上写真2点の「フィッション ワックス」だ。バブアーのアーカイブから着想された2020年秋冬からはじまったプレミアムコレクション、「ゴールド スタンダード」のジャケットである。

Dリング、レザーパッチ、パイピングなどの細部に凝り、通常品とは一線を隠す貫禄の仕上がり。襟裏にはフードも搭載され、必要なときに雨風を防ぐ。素材はポピュラーなモデルの「ビデイル」より約30%軽量な4オンスのワックスドコットン。現代的な服のあり方に基づく機能が満載だ。モダンなのにどのバブアーより歴史の深みを感じさせる、いつまでも手元に置いておきたい最上位の一着である。

バブアー

www.japan.barbour.com

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ロングライフアウター② 着る者に気高さを与える、シーラップのロングピーコート

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着丈が長くアレンジされ、ビジネスウエアにもしやすい定番ウールピーコート「ジェノバ」。¥165,000(税込)/シーラップ(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店 TEL:03-5772-5501)

ピーコートはかつて各国海軍のユニフォームだった。風の向きで左右の留め方を変えられるフロント、立てると耳を覆い寒さをしのぎ、遠くの音を聞こえやすくする大きな襟といったディテールは実用に基づくもの。さらに軍のユニフォームは、着用者の士気を高めるためにスタイリッシュな見た目でなければならない。ピーコートは着るだけで見栄えする、完成されたデザインなのだ。

掲載するシーラップは創業1935年のイタリアの老舗。海で働く男たちのワークウエアから製造をはじめ、現在は世界のラグジュアリーブランドがアウターの製造を依頼する一流ファクトリーである。自社ブランドのシーラップにおいて、彼らが得意とするアイテムがピーコート。身幅は脇下で絞られ、肩周りは逞しく大きく、前振りの袖は手首までスリムなラインを描く。いまどきのルーズな服とは真逆の優雅なシルエットがイタリアの美学だ。インナーにタートルネックセーターを着る70年代的なスタイルも、フォーマルシーンでの品格ある着方もできるタイムレスな服である。

シーラップ

www.sealup.net

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ロングライフアウター③ 新しいマッキントッシュ像が見える、モッズ風コート

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マッキントッシュの新機軸を物語る、モッズコートをモチーフにした「グラニッシュ(GRANISH)」。¥165,000(税込)

布を覆うように手作業で天然ゴムを塗り、そこに布を貼り付ける3層構造で水の侵入を防ぐレインコート、マッキントッシュ。スーツの上に着るビジネスウエアのイメージが強いが、タフな男が似合うワークウエアでもある。そのアクティブな側面を打ち出すべく、今季秋冬からラインアップの方向性がミリタリー系にシフト。タイロッケンコート、ダッフルコート、ピーコート、カーゴパンツといった歴史的なミリタリーウエアがマッキントッシュ流に解釈され、ファン層を広げるデザインになった。

そのなかで今回厳選したのは、アメリカ軍の「M-51」(通称モッズパーカ)から着想されたクールな一着。傘いらずのフードがつくマッキントッシュは珍しい。その3枚接ぎフードをはじめ本体も立体的なパターンで仕立てられ、細身でも着やすくなっている。シルバーに輝くスナップボタンやリベットが伝統のゴム引き生地にモダンな表情をプラス。汚れも気にせずヘタるまで着倒したいコートだ。

マッキントッシュ

www.mackintosh.com

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ロングライフアウター④ ゴアテックス搭載で、もはや敵なしの最強水沢ダウン

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水沢ダウン史上初めてゴアテックスを搭載した2021年秋冬新モデルの「ゴアテックス アンビット」¥154,000(税込)

工場がある岩手県奥州市(旧地名:水沢)の「水沢ダウン」の名で知られるデサント オルテラインのダウンジャケットは、日本品質を世界に知らしめる傑作。冬季オリンピックのスキー選手団のために防水性の高いダウンジャケットを開発したことがシリーズの出発点である。水が染み込まないダウンジャケットを革新的な技術で実現させ、温度調整できる抜群の保温性能や各所のギミックも惜しげもなく投入。街着にしやすいシンプルなカラーリングも人気を集める理由だ。

すでに最高峰の機能を誇る水沢ダウンから、このたび初めて防水素材の雄「ゴアテックス」を搭載したモデルが登場した。ゴア社の生地のうち2層構造の軽量タイプの30dリップストップナイロンである。もちろんゴアテックスに頼らなくても、水沢ダウンは文句なしにハイスペック。それでも定番防水生地とミックスされればさらに安心感が増す。男心をザワつかせる魅惑の逸品である。

デサント オルテライン

https://allterrain.descente.com

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ロングライフアウター⑤ アメリカの歴史に根ざす、フィルソンの「マッキーノクルーザー」

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古着好きのファッションデザイナーがよく元ネタにする「マッキーノクルーザー」のオリジナル現行品。¥57,200(税込)

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赤黒チェック以外にもこのグリーン、ネイビー、グレーなどが展開されている。選ぶ色でイメージががらりと変わるのもこのジャケットの魅力のひとつ。

アメリカのゴールドラッシュ時代に遡るフィルソンを象徴する定番が、「マッキーノクルーザー」と命名されたハンティングジャケットだ。派手な赤黒のバッファローチェックは、森林の中で狩猟仲間に人間だと気づかせるため。背中にあるビッグポケットは、狩った小動物を入れる役割。パッチポケット部分が二重構造になり、身体の熱を逃さずとても暖かいのも特徴だ。

裏地なしの固く分厚いバージンウールで仕立てられたこの服を着ると、毛布にくるまれた気分になる。キャンプウエアに最適なだけでなく、家周辺で過ごす現在の都市生活にもジャストフィットする。日本で流行したのはアウトドアウエアを街で着る70年代のヘビーデューティブームの頃。その後あまり表舞台に姿を表さないが、いまこそ良さが見直されるべき銘品だ。

フィルソン

https://filson.jp

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
ご相談はkazushi.kazushi.info@gmail.comへ。

高橋一史

ファッションレポーター/フォトグラファー

明治大学&文化服装学院卒業。文化出版局に新卒入社し、「MRハイファッション」「装苑」の編集者に。退社後はフリーランス。文章書き、写真撮影、スタイリングを行い、ファッション的なモノコトを発信中。
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