芦沢啓治が手がけた、緑を眺めながら寛げる「ブルーボトルコーヒー 渋谷カフェ」【ウワサの建築】

  • 文:佐藤季代

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ブルーボトルコーヒー 渋谷カフェ。2021年4月竣工。●東京都渋谷区神南1-7-3 渋谷区立北谷公園内。photo: Ben Richards

2015年の上陸以降、日本でもサードウェーブコーヒーを牽引してきたアメリカ西海岸発の「ブルーボトルコーヒー」。これまでスキーマ建築計画をはじめとする気鋭の建築家を起用してきたが、今年4月には芦沢啓治が内装を手がけた渋谷カフェが北谷公園内にオープン。芦沢のデザインによるオリジナル家具が屋内外に置かれ、緑を眺めながら寛ぐことができる。

芦沢は05年に事務所を設立し、建築に軸足を置きつつ家具やプロダクトのデザインも行ってきた。建築家、プロダクトデザイナーとしての活動には、大学卒業後に修業を積んだ設計事務所と家具製作会社での経験が活かされている。

多彩な活動を続ける芦沢だが、一貫して心がけているのが「正直なデザイン」だ。先述のブルーボトルコーヒーでも協働したカリモク家具や、東日本大震災を機に立ち上げた石巻工房など、長年携わっている事例にもその志向は表れている。昨年には、ともにショールーム機能を備えた「カリモク コモンズ トウキョウ」と「石巻ホームベース」を手がけ、芦沢がつくり出す建築・内装と家具とを同時に体験できる場としても注目されている。いずれも、木の素材感や特性を活かしたシンプルでタイムレスなデザインが特徴となっている。

近年ではデンマークの設計事務所、ノーム・アーキテクツとの共同でインテリアプロジェクトを進めるなど活動の幅を広げる。奇をてらうことのない誠実なデザインが、時代の共感を呼んでいる。

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ブルーボトルコーヒーでは国内初となる公園内に併設された渋谷カフェは、みなとみらい店の設計も手がけた芦沢啓治が内装を、日建設計が外装を担当。photo: Ben Richards

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店内に置かれたカリモクケーススタディの椅子やバースツール、石巻工房によるテラスのベンチなど、家具の多くを芦沢がデザイン。木材やタイルといった自然素材を用いたインテリアが、公園内の緑と調和して寛ぎの空間を創出する。photo: Ben Richards

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芦沢啓治が携わってきた代表的な建築

【木材へのこだわり】
建築、インテリア、プロダクトデザインなど、領域をまたぐ芦沢の設計活動で共通するのは、木材へのこだわり。「正直なデザイン」をモットーに家具製作で培った素材への知見を活かし、店舗から邸宅まで、流行に左右されない空間をつくり上げている。

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ドットコム スペース トーキョー。2019年竣工。●東京都渋谷区神宮前1-19-19 エリンデール神宮前B1。photo: Takumi Ota

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ブルーボトルコーヒー みなとみらいカフェ。2020年竣工。●神奈川県横浜市西区みなとみらい3-5-1 MARK IS みなとみらい GL階。photo: Tomooki Kengaku

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House in Saiko。2017年竣工。●山梨県(以下非公開)。photo: Daici Ano

【カリモク家具】
ノーム・アーキテクツとコラボした「リアージュ砧テラス」の住宅リノベーションを機に、カリモク家具が2019年に立ち上げたコレクション、カリモクケーススタディに参画。ギャラリーやオフィス機能を備えたショールームのリノベーションも担当した。

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カリモク コモンズ トウキョウ。2020年竣工。●東京都港区西麻布2-22-5。photo: Daici Ano

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リアージュ砧テラス。2019年竣工。●東京都(以下非公開)。photo: Jonas Bjerre-Poulsen

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カリモクケーススタディ

【石巻工房】
震災直後に市民向け工房としてスタートした石巻工房では、入手しやすい地元産の木材を用いて簡素な設備でもDIYできる家具を制作。設計を手がけた「石巻ホームベース」はショールームの他、カフェや宿泊所も併設。石巻の新たな交流の場となっている。

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石巻スツール。photo: Masaki Ogawa

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石巻ホームベース。2020年竣工。●宮城県石巻市渡波栄田91。photo: Masaki Ogawa

※住所非公開の物件については、一般住宅につき見学不可となります。

芦沢啓治(Keiji Ashizawa)

1973年、東京都生まれ。96年、横浜国立大学建築学科卒業。architecture WORKSHOP、super robotを経て、2005年に芦沢啓治建築設計事務所を設立。11年に始めた石巻工房は14年に家具ブランドとして法人化。グッドデザイン賞審査委員も務める。

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